「論理的思考」の文化的基盤 4つの思考表現スタイル

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 岩波書店 (2023年9月28日発売)
4.33
  • (25)
  • (11)
  • (4)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 914
感想 : 35
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (314ページ) / ISBN・EAN: 9784000026093

作品紹介・あらすじ

普遍的であるはずの「論理」と「合理性」。それは文化によって大きく異なり「価値観」とつながる。「文化の多様性」という言葉に逃げ込まず、それぞれ4つの原理を代表する日本・アメリカ・フランス・イランの思考表現スタイルから4タイプの論理と合理性を明らかにする。ポスト近代を生き抜く知恵となる比較文化論の集大成。

みんなの感想まとめ

論理と合理性の多様性を探求する本書は、文化によって異なる思考スタイルを明らかにし、読者に新たな視点を提供します。アメリカ、フランス、日本、イランの教育文化を比較し、それぞれの国が持つ論理的思考の特徴を...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 面白かった!

    文化によって、思考の型が異なり、書く型が異なり、「論理的」と言われるものが異なり、「価値のあると言われる能力」も異なる。

    アメリカ、フランス、イラン、日本の教育方法、特に作文・小論文の型と歴史教育に焦点をあてて、そこから求められる「論理的」について考えていく。

    そもそも、作文や小論文が国によって違うなんて思ってもいなかった。どこの国も「感想文」を書かされているものだと思ってた。。

    この本ではアメリカ→フランス→イラン→日本の順に紹介されていく。他の国の話を読んだ後での日本の話は本当に驚きだった。

    自分が当たり前と思って受けていた教育を、他の国と比較しながら客観的に解説されると、なんだか誰かの掌の上で踊らされていたような、そんな気分になった。
    特に、国語の授業でよくあった、それぞれの意見をだす→クラスのみんなとの話し合いで、とはいえ先生の誘導のもと→1つのそれっぽい答えにまとめる。は、確かに「周りの空気にあわせる」練習だったんだなって思った。
    とはいえ大学の論文や、社会人になってからは急に「自己主張」を求められるようになるから、え、難し!ってなってたんだなと思ったり。


    ①経済原理(アメリカ)
    効率的に最大限の収益をあげることを目的とする
    効率的な行為を合理的とする
    決まった結論がある
    小論文では始めに結論を述べる
    →1970年代、大量の小論文の採点をするために作られた型
    個人が主張を持ち、明確に伝えられることが評価される


    ②政治原理(フランス)
    フランス革命後、共和制になった歴史から「公共の利益」を考えられる市民の育成を目指した
    小論文の型はディセルタシオン 正ー反ー合 の弁証法
    「自分で考える」とは、「自分がこう思うと」は違う。自分と反対の意見も理解したうえで、より良い解決策を提示すること
    決まった結論はない


    ③法技術原理(イラン)
    決まった結論がある。それは真理、イスラム法
    目的も手段も所与の物のとして、客観的に提示される
    小論文の方はエンシャー
    結論部分ではあえて直接的な言い方を避けて、すでに決まっている道徳的なメッセージを読み手に伝える
    小論文の目的は、学習者に思考を整理させる、理論整然と話したり書いたりできるようになること


    ④社会原理(日本)
    目標の達成より、価値に向かう正しい態度や意欲が重視される
    感想文:体験を通じた自己の変容
    他の人の立場から自分の考えを見直すこと、他の立場に立つことを重視する。個人の感じたことを話し合いによって社会的に期待される感想にすり合わせていく教育を通じて、共感を獲得する
    歴史では、「なぜ起こったのか」ではなく、「どのように起こったのか」と手段や背景を重視する教え方がとられる


    ※4つの原理を学ぶことで、各原理を時と場所、相手によって適切に使いこなせるようになると良い

  • 合理性を、形式的/実質的、主観的/客観的の四象限に分けて相対化し、それぞれを代表する各国(アメリカ、フランス、イラン、日本)の教育文化を比較研究した本。とんでもなく面白かった。

    個人的には、ビジネスで必要となる論理思考と、日本の教育にズレがあるのを常々感じていたのだけど、この本でその理由がかなりクリアになった。

    ビジネス上の論理思考は、本書によるとアメリカに代表される「経済原理」の思考で、目的達成に直接結びつく効率的な行為が合理的な行動とされる。アメリカではこの原理に基づいた教育がなされており、エッセイという作文の教育を通じて、その論理思考が叩き込まれるのだという。

    それに対して日本では、目的の達成よりも、目的(価値)に向かう正しい態度や意欲が重視される。(「社会原理」)そのために日本の教育は、他人の心を考えることと、それを自分の心とすり合わせて行くことに主眼を置いている。物語の登場人物の心情を問うたり、感想文を書かせることがその現れだと指摘されていて、興味深かった。

    とはいえ、仕事をする上では、経済原理による論理思考は必須だし、フランスの「政治原理」として紹介される思考では、複数案を超克する論理思考が標準化されていて、これもビジネス上での応用ができる。イランの「法技術原理」は日本とは正反対なので、中々理解し難いが、自身の思考を客観視するには良い題材のように思える。各思考の優劣を論じるのではなく、さまざまな思考を使いこなすことは、総合的に豊かな社会生活につながりそうな希望が持てる。

    という感じで、とても刺激的な読書体験だった。

    ちなみに、本書はA5判で300ページ近くある。毎日寝る前に数節ずつチマチマ読んで1ヶ月近くかかったが、専門用語は序章に少し出てくるだけで、全体としては読みやすかった。値段も約5,000円とお高いのだが、その価値は十分にあった。

  • 素晴らしい書籍でした。学術系の書籍は難解であることも多い中、非常にわかりやすくかつ平易に記述され、また論拠も納得できる内容でした。
    企業の組織運営する際でも、日常のコミュニケーションの中でも、思考の違いを理解し、多様な考えを受け入れていくために大いに活用できると感じます。

  • 「論理的思考」は人流共通の絶対的な思考の方法である。それは本当だろうか?この様な絶対的な価値観であると確信しているものを実は相対的なものに過ぎないと軽々しく書き換えてくれる。現代社会において必須になっている論理的な思考を極めて理知的な区分によって4つに区分し、われわれの価値観をひっくり返す名著。

  • 感想
    文化が違えば論理も違う。国のような大きなレベルだけでない。人が集まって集団になる。集まりの数だけ論理がある。だから土足で踏み込めない。

  • 前に読んだエマニュエル・トッド「世界の多様性」に引き続き、世界には本当にいろんな国があるもんだなぁという本。
    この本はYouTubeの「ゆる言語学ラジオ」で知りました。

    「結論から先に言いなさい」と教えられてきましたが、これはある限られた国で採用された表現形式であって世界共通というわけではないらしい。
    論理というのは普遍的な推論方法ではなく、文化や社会の枠組みのなかで形づくられるものであるというのが本書の主張です。

    そして、著者はこの文化的な枠組みを理解する鍵として「教育の在り方」に着目します。
    子供たちへの教育原理はその国が重んじる価値観そのものと言えます。

    本書ではこの教育原理を大きく4つの型に分類して議論を進めます。

  • 250611
    Xとゆる言語学ラジオで見て購入。
    論理的な思考の道筋がそれぞれの文化圏で違うという見方は新鮮だった。改めて、自分は日本の文化圏の考え方が染み付いているなと思うと同時に、贔屓というか、日本の時系列で語るやり方が好きなのだと感じた。枝葉末節を落としたくないというか、出来るだけ多くの情報を取り込んでから、それを内包した答えを出したいというか。

  • 過度に具体例に当てはめてしまう危険性を孕みつつ、ここまで素晴らしい抽象化と類型を分かりやすく文章にしてくれてありがとうございますという気持ちです。
    思考スタイルが違う、しかしそれは文化的に規定されている可能性があるという視座はコミュニケーションギャップを個人が克己する一つのきっかけになり得ると思いました

  • めちゃくちゃ面白かった。いままでに読んだ社会学、人文学系の本の内容がいろいろと蘇り、コネクティングザドッツの連続だった。学術書なので普通に難しかったが最近新書も出たらしいので周りにはそちらを薦めたい

  • 一気読み。期待に違わず面白かった。高度なことをしてるのに読みやすくて、言語化の能力にも感嘆する。問いの立て方も研究方法への落とし方も実現する腕力も描かれる結果の面白さ壮大さも、全て本当に凄い。憧れなんて言えないくらいに尊敬。

  • 【書誌情報】
    『「論理的思考」の文化的基盤――4つの思考表現スタイル』
    著者 渡邉雅子
    ジャンル 単行本 > 社会
    刊行日 2023/09/26
    ISBN 9784000026093
    Cコード 3036
    体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 320頁
    定価 4,950円

    普遍的であるはずの「論理」と「合理性」。それは文化によって大きく異なり「価値観」とつながる。「文化の多様性」という言葉に逃げ込まず、それぞれ4つの原理を代表する日本・アメリカ・フランス・イランの思考表現スタイルから4タイプの論理と合理性を明らかにする。ポスト近代を生き抜く知恵となる比較文化論の集大成。
    https://www.iwanami.co.jp/book/b631492.html

    【目次】
    序章 論理と合理性、能力の文化的基盤
      1 小論文に見る文化の衝突
      2 思考表現スタイル──文化に根ざした論理と推論の型
      3 学校の役割──主流文化の伝達
      4 四つの領域と四つの教育原理
      5 本書の構成
      6 開かれたローカルな世界を生きるために

    ◆第一部 教育文化のモデルの構築
    第1章 〈論理〉と〈合理性〉の起源と類型──教育のメタ機能
      1 文化の位置づけ──個人と制度、社会、文化のつながり
      2 論理と推論の社会的起源──デュルケムの知識社会学と集合的認知
      3 集団間の衝突はなぜ起きるのか──ウェーバーの合理性と合理的行為の理念型
      4 ルーマンの社会システム理論における〈論理〉と〈合理性〉──ポスト近代の視点
     
    第2章 教育文化のモデル
      1 教育原理の四類型──教育の目的と手段
      2 調査対象と方法

    ◆第二部 四つの教育原理と四カ国の思考表現スタイル
    第3章 経済原理──アメリカ
      1 エッセイの論理と思考法
      2 エッセイの歴史的起源と発展
      3 エッセイの教育──型による目的論的思考法の教育
      4 個性とイノベーション──作文教育のもう一つの側面
      5 歴史教育に見る合理性と合理的行為──逆向き因果律と時空間の把握
      6 アメリカの能力観──効率性・戦略性・目的論的思考と階層化された能力
      7 アメリカにおける能力観の変遷──伝統的教育からの分化
      8 小括──アメリカの思考表現スタイル
     
    第4章 政治原理──フランス
      1 ディセルタシオンの論理と思考法
      2 政治原理に照らしたディセルタシオンの特徴
      3 ディセルタシオンを目指した言葉と思考の教育──教育のグランド・デザイン
      4 歴史教育に見る合理性と合理的行為──俯瞰の視点と共通の価値の追求
      5 フランスの能力観──教養を背景にした言語技術と価値観
      6 小括──フランスの思考表現スタイル

    第5章 法技術原理──イラン
      1 イランの学校作文「エンシャー」の論理と思考法
      2 イランの作文教育──ことわざと詩の役割
      3 歴史教育に見る合理性と合理的行為──循環する時間と不変の因果による類推
      4 イランの能力観
      5 小括──イランの思考表現スタイル
     
    第6章 社会原理──日本
      1 感想文の歴史的背景と社会的機能
      2 感想文の論理と思考法
      3 感想文の特徴と機能──多様な価値の受容と共通感覚の育成
      4 日本における論証文──意見文と小論文
      5 日本の書く教育の全体像──主観から間主観へ
      6 歴史教育に見る合理性と合理的行為──変化する状況と縁起の思考
      7 日本の能力観
      8 小括──日本の思考表現スタイル
     
    ◆第三部 教育文化の四元モデルから見えるもの
    第7章 四つの納得の構造──論理と合理性、能力の体系的な比較
      1 四つの原理と四つの納得の構造──論理性を超えて
      2 論理/非論理、納得/不服を分けるもの
      3 四つの時間構造・因果律と推論の型
      4 合理性を超えて──推論の型と意味ある行為・価値ある行為
     
    終章 教育文化の四元モデルから見る日本の立ち位置
      1 調査から得られた知見
      2 理論的、方法論的、実証的貢献
      3 思考表現スタイル──論理/非論理、合理/非合理、優劣を分けるもの
      4 日本の立ち位置──ポスト近代の世界で

    あとがき
    資料
    引用・参考文献

  • 面白かった。
    まず「欧米」と一口に語りがちであるけれど、少なくともベースとしている考え方の観点では明らかに異なる思考方法を持っているのがよくわかる。

    加えて「正反合」がフランスのディセルタシオンという弁証法から来ていることや、弱い反論から始めていくその手続きの型なども初めて目にして学びがあった。

    小学校はその国の普遍的文化を子供たちに教える場なのだということを踏まえると、大人になっても途中から別の国の文化にスイッチしていこうとする試みの難しさは言語だけの話ではないのだという点もよく理解できてよかった。

    日本について言えば、読書感想文が目指しているところについて当時知りたかったところ。あとは、なんとなく日本の文化については調査内容が、そんなものか〜と他の点に比べるとあまり目を瞠る部分がなかったような。

    とは言え、全体を通して面白い書籍だった。合理性は文化によって異なる、ね。

  • とても面白かった。アメリカの簡潔、短絡的な目的志向と経済合理性。イランの宗教的決定論。フランスの弁証法的発展とルソー的な社会善。日本の利他性、共感重視と状況によって決まる縁起思想。どれも納得感があった。確かに日本の作文は個人の感想を述べつつ共感や協調が評価軸な気がした。どう論を立てて、何を持って合理的とするかは文化によってこうも違う。これからそういう視点を持って日々ニュースとかに触れたい。

  • 学術書、ということになるのかな。新書でも紹介されている内容だが、さらに詳細に説明され、体系化されている。決定版ということだろうか。まとまり感がすごい。
    スタイルの差異を自覚したうえでウェイトソフトなり、強弱コントロールしていきたいですね。

  • 比較文化研究の真骨頂。

  • え、こんなに明快に書いちゃっていいの?と思ったぐらい、論理性がX軸とY軸によってきれいに4つにタイプ分けされていて、見事だった。

    論理性については一つの考え方しかないと思っていたけれど、

    論理的にもいろいろあるんだなーと。

    そう考えると、すべては論理的ともいえるのかな。

    新しい視点で論理性について学べました。

  • 日本の感想文、レポート、論理
    この本を読んでモヤモヤ解消
    アメリカとの違い
    フランス
    イラン
    イスラム
    ペルシャ

  • 図書館学生アルバイトおすすめ図書

    【請求記号】 372||WA
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/473066

  • アメリカやフランスは何となく想像つくけれど、イランは完全に初見だったので興味深かった。
    各国でこれらの思考方法に子供の頃から馴染んできたら、大人になってビジネスをするときも全く違ったアプローチになると強く思わされた

全24件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

渡邉雅子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×