死のクレバス: アンデス氷壁の遭難

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000026840

感想・レビュー・書評

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  • 「本の雑誌」山の特集から。いやまあこれは、「壮絶」という以外に言いようがない。アンデス氷壁をアタック中、滑落後宙づりになってザイルを切断された筆者が、超人的な苦闘の末生還するまでの、肉体的精神的な格闘を、息詰まる筆致で描いている。

    とにかく肉体的苦痛のすさまじいこと。片膝の骨折(足があらぬ方向に曲がってしまうほどの)、手指の凍傷、脱水症状、雪盲などなど、著者が悲鳴を上げるたびにこちらも身がすくむ。加えて、意識の混乱、絶望、孤独といった内心の動きが、克明に詳細に描かれていて、ここが本書の大きな特徴だろう。

    著者は英文学と哲学の修士だそうで、これにはなるほどと納得した。この苦しみからもう解放されたい、進もうとするのをやめて、このまま死という休息に身をゆだねたいという誘惑にしばしば駆られながら、それでも体を前に運ぼうとする、その力はどこから来るのか。わかりやすい答えが示されていないことで、かえって考えさせられる。

    すごい本だと思うのだが、あと一歩没入を妨げるのが、山岳用語の説明があまりないので、今著者とパートナーがどういう所にいて何をしているのか、ややわかりにくく、隔靴掻痒感があることだ。山に詳しければもっとリアルに感じられただろうと思う。

  • 足を骨折した状況で「クレバスで宙づりになり、ザイルを切断された作者が、底知れない極限状態の中での自身の精神との葛藤、傷ついた肉体を抱えて生還した状況を克明に描いている。紛れも無いフィクション。ぎりぎりの生死の境の中での自己の葛藤はかなり読み応えがある名著。
    そして作者は生還後、山へと向かっている。

  • 足を骨折し、クレバスに落ちながらも生還した登山家の手記。
    登山用語などわからないことが多く、少し読みづらいところもあるが、後半、ザイルを切断した親友の心の葛藤と、それによってクレバスに落ちた著者の半ば神がかりのような行動が交互に描かれているシーンは読みごたえがある。

  • 『凍』沢木耕太郎著、の中に出てきた本です。気になって、さっそく読みました。壮絶な生還が書かれてます。「NCR賞」「ボードマン・タスカー賞」を受賞。
     

     

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