癒しと和解への旅―犯罪被害者と死刑囚の家族たち

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000027915

感想・レビュー・書評

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  • 読んでまた深く考えさせられました。日本でも凄惨な事件が後を絶たず、その度に被害者の家族の心痛と加害者(犯人)への強い憤りを感じます。ですが、言葉は悪いですが、所詮他人事でしかないのだと本書を読んで思いました。「死んだ者の代わりに意見を言うことは誰にもできないだろう。そして死んだ者が抱いた夢やビジョンを解すことは誰にもできない。」とあるように、真実は被害者と加害者にしか分からないと思うからです。もし、自分の家族が誰かに殺されたなら、また自分の家族が誰かを殺してしまったら……。どちらの場合もとてもとても苦しむでしょう。自分が死んでしまいたいぐらいに。
    この本には、事件の被害者の家族と死刑囚の家族との交流と死刑廃止運動へともに取り組む姿が書かれています。
    被害者家族の「犯人を殺してやりたい」というほどの憎しみとかけがえのない家族を喪って癒えない悲しみと、読むほどに胸が痛くなります。同じくらい、罪は罪として受け止めながらも、家族を死刑で喪うことへの悲しみに耐えなければならない死刑囚の家族にも共感します。
    果たして死刑は本当に解決になるのか。それが正しいことなのか。答えを出すのは難しいことだと思いました。 

  • 『ライファーズ』から、10年前の『アミティ 「脱暴力」への挑戦』、そして13年前のこの本へとさかのぼって読む。

    殺人事件の被害者遺族と死刑囚の家族が、ともに旅をし、語り合い、体験を共有する、そんな「ジャーニー・オブ・ホープ」がアメリカで始まった。この本は、旅の始まりから、旅に参加したそれぞれの体験と思い、心の葛藤を追う。この旅をとおして、参加者はおのおの、どのように希望を見いだそうとしているのか。

    ▼「被害者遺族の気持ちを考えると、死刑は必要だ」とは、一般によく言われることだが、日本社会では、家族を殺された被害者遺族が「死刑制度をやめよう」と社会に訴えることは想像しがたい。遺族側が「加害者に対して死刑は望まない」という意見を表明するだけで、「それでも、殺された被害者を愛していたといえるのか」と、マスコミや世間から非難を浴びせられてしまう風潮が社会にはある。
     それでは、加害者側である死刑囚の家族はどうだろう。死刑制度に反対するどころか、家族に死刑囚がいると世間に知られることだけで、日常生活ができなくなる。ましてや、被害者遺族と死刑囚の家族がともに行動するなど、今の日本では考えられないのではないか。
     (略)
     1995年、日本では死刑の執行が定期的におこなわれ始め、執行があったからといって以前のように報道が加熱することもなくなり、執行することがあたりまえの光景になりつつあった。…メディアによって、犯人は更正不可能な凶悪人物として描かれ、被害者遺族は全員が犯人に死刑を望んでいるかのようなイメージが、つくりあげられていった。その結果、「殺人犯人は死刑で当然」という声が高まり、急速に「死刑存置」のムードを社会全般に広めていった。
     このまま流されていっていいのだろうか。(pp.3-4)

    「ジャーニー・オブ・ホープ」の参加者は、過去をみつめ、どんなにつらい体験であってもなかったことにはせず、他の参加者とそれをわかちあおうとしていた。旅の途上で、そうしたスピーチに感動し、感想を伝えた坂上さんに、こんな言葉が返された。

    「そこにいてくれてありがとう。それから、あなたの気持ちを知らせてくれてありがとう」(p.202)

    そこにいて話を聞き、気持ちを知らせることくらい誰だってできるだろう、けれど、日本の社会には、被害者や遺族みずからが語り出したくなるような開かれた場があるだろうか、語りを受けとめようとする姿勢があるだろうかと、坂上さんは問いかける。被害者や遺族を黙らせてしまっているのは「私たち」ではないのかと、問いかける。

    エピローグの最後に、被害者遺族のひとり、ジョージの言葉が引かれている。

    ▼「つらいことも、嫌なことも、いっぺんでふき飛ばしちゃえる『魔法の杖』があればいいと思ったことはないかい? でも、現実にはそんなものありゃしないよね。死刑はすべての問題を一気に解決しちゃうように見えるかもしれないけど、そんなの嘘だ。死刑は『魔法の杖』じゃないんだ。
     僕たち被害者遺族が抱えている問題は、まわりの人々から支えられながら、一つひとつ、丁寧に、時間をかけて、乗り越えていくものなんだ。大変だけど、希望を再び手に入れるためには、それしかない。今まで僕の歩んできた道から、そう確信してるんだ」(p.293)

    3年前のWeフォーラムで分科会に来ていただいた原田正治さんのお話をまとめたのは、『We』163号だった。原田さんは、弟さんを保険金殺人で亡くしている。当初は「極刑以外ない」、加害者を早く死刑にしてほしいと考えていた原田さんだったが、しだいに、日本の死刑制度は実は遺族のことを考えていないのではと疑問をもつようになり、弟さんを殺して死刑判決を受けた長谷川さんと交流を始めた。「赦せないからこそ、会いに行く」とまとめた、その原田さんのお話を、『ライファーズ』を読んで、久しぶりに読みなおす。

    原田さんは、死刑制度はなくなったほうがいいという思いをもち、被害者と加害者の対話、面会を求めて「ocean 被害者と加害者との出会いを考える会」で活動している。

    償いとは何なのか、死刑という罰は何を解決するのかと、「ジャーニー・オブ・ホープ」を読んで、また考える。

    (11/11了)

  • 死刑とか犯罪被害者とか、他人事だと思っていてはいけないのだと感じました。食べるため以外に殺すのは人間だけですね。まったくどちらが獣なのかわかりません。やはり、裁けるのは神様しかいません。

  • 暗い重い辛い…でも読んで良かったと思える本です。

  • 自分の大事な人がなぜ殺されたのかを知りたい。
    許したくはない、だけど憎むのも疲れる。
    そんな被害者の心情を、安易に「わかる」なんて言えない。
    言ってほしくない。

    死刑にするだけじゃ足りない。
    苦しめれば癒えるってもんじゃない。
    どうすれば本当に「被害者のため」になるのか。
    これはそのひとつの答えなんだろう。

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