不平等の再検討: 潜在能力と自由

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000028783

感想・レビュー・書評

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  • 2009年度S大EHゼミテキストのひとつ。自由、福祉、格差、などなどを都度定義を繰り返しながら、あるべきものを理詰めで描く。J.ロールズとのやりとりなども書き込まれる。経済学や開発経済の分野のことは、必ずしもわかりやすいわけじゃないけれども、こうして一つ一つ、確認を繰り返すのは大事だと思う。センはジェンダーについての配慮がきめ細かく、そういう意味では、今以上に読まれて欲しいなと思う。

  • 法理学ゼミで読み込んだ。平等ってそもそも何?ってとこから平等を求める意義や本質に迫る。
     センの概念は大いに納得できるものがあり、これから社会を動かしていく上で活用できる部分は多いだろう。主に貧困対策に重点がありそうだが、私は職業選択の部分でも使えそうだと感じた。センは勇気が打ち砕かれていることが潜在能力がないことだと考えているから、例えば江戸時代のえた・ひにんなんかはそうだろうけど士農工商は当てはまるのか、現代では私の知り合いでは坊さんの家に生まれたら坊さんになるとか京都の旅館に生まれたら女将さんになるとかそういうのは勇気は打ち砕かれてないけど潜在能力は人より制限されていると思う。そういった観点で違和感のある部分は正していかなければならないのだろう。
     

  • セン教授の唱える潜在能力について興味が湧いたので、いろいろあるうちの本書からスタート。「幸福であることは重要な機能の一つ」だけど「でもそれが人生を送るためのすべてだと見なすことはできない」というのが印象的に残りました。

  • テーマは、タイトルの通り、平等と潜在能力。
    平等を、結果の平等ではなく潜在能力の平等としてとらえましょう、というのが主題。

    もう少し細かく言うなら、
    「①人間の多様性、②平等を判断する際に重要になる領域の複数性」がキー。
    また、それゆえに、「なぜ平等が重要か」「何の平等なのか」と常に問い、それに応じた方法を用いることが重要。

    非常に明確に書かれているなー、という感じ。
    一瞬、「?」と思っても、その後に大抵例などを挙げていてくれるため、一般人にもわかりやすい仕様です。

  •  ノーベル経済学賞のセンの著作。ロールズの正義論の発展系のような感じ。
     平等を判断する時、用いられるものは①効用(パレート最適。つまり他の誰かの効用水準をさげることなしには誰の効用水準もあげることはできない。)②基本財(主に所得などよく生きるための手段)などがある。
     しかし、これらでは限界があるとセンは主張する。
    ①はその効用が環境に適応する可能性を無視している点が問題。②は多様であることを無視している点で問題。以上の理由があるからである。
     そこで「潜在能力(capability)」を提案する。
     これは効用ではなく機能(人々の行動や状態。栄養状態良好で生活できることから自尊心をもち生活できることまでの幅広い概念)に注目する。この機能の集合を見る事によって、①や②で明らかにされなかった不平等を明らかにすることができる。
     画期的なアイデアだが、それによって世の中がどうなっていくのかという具体的なビジョンは書かれてなかった。故にイメージがつかみにくく読みにくかった。それは今後の研究者の努力次第というところだろうか。


    追記※訳者の言葉に『潜在能力を見ることで人々が達成できる生き方の幅を知ることができる。公共政策や開発政策の目標は人間の自由であり、主体的に選択できる「生き方の幅(潜在能力)を広げることである」』とあった。これがその具体的なビジョンなのだろうか。 

  • かなり抽象的。
    な主張したかと思ったら、人間は多様だからそれに対応しなきゃならないと言いだす。

  • センの潜在能力アプローチは、教育や、生涯学習を、もっともっとずっと、実質的で世界標準の基準に照らして、深く広く意義あるものへ変えていく力を持っている。
    ただ国内の子どもの問題や、国際学力テストの基準がどうこう、では全く汲みつくせない教育の意義と必要性と重要性を、このアプローチから組み立てることができるはずだ。誰かやっているはずなんだけど、どうしてこうも聴こえてこないのか?

  • ゼミ課題図書。
    ‘アマルティア・セン’な一冊でした。
    当然なんだけど、どこか平等ということは一方は不平等。
    そもそも自由とはなにか、潜在能力、何のための平等なのかをあらゆる角度から考察した本。

  • アマルテァアさんの言うような世界が実現できれば、もっといい世界になるのになぁと思いました。

著者プロフィール

1933年、インドのベンガル州シャンティニケタンに生まれる。カルカッタのプレジデンシー・カレッジからケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジに進み、1959年に経済学博士号を取得。デリー・スクール・オブ・エコノミクス、オックスフォード大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、ハーバード大学などで教鞭をとり、1998年から2004年にかけて、トリニティ・カレッジの学寮長を務める。1998年には、厚生経済学と社会的選択の理論への多大な貢献によってノーベル経済学賞を受賞。2004年以降、ハーバード大学教授。主な邦訳書に、『福祉の経済学』(岩波書店、1988年)、『貧困と飢饉』(岩波書店、2000年)、『不平等の経済学』(東洋経済新報社、2000年)、『議論好きなインド人』(明石書店、2008年)、『正義のアイデア』(明石書店、2011年)、『アイデンティティと暴力』(勁草書房、2011年)などがある。

「2015年 『開発なき成長の限界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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