- Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000030175
感想・レビュー・書評
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村井吉敬、甲斐田万智子『誰のための援助?(岩波ブックレット)NO.77』(岩波書店、年代不明)
結構古い本(刊行年月日が書いていないが、80年代後半?)であるが、今なお続く日本の途上国援助に対する問題点を的確に指摘している。
さらに、ブックレットということで40頁程度にまとまっている割に、具体例がたくさん紹介されているので、理解しやすいと思う。
印象に残った点:
NGO、JVCの星野昌子さんの意見で「日本のNGOはまだ自力で何かを行うような力が弱いため、外国のNGOを含むNGOの連合体に資金供与を行うようにする」という提言がなされていた。
→最近は原発に対するデモで若い層が目立つように、少しずつではあるが、若年層の発信力が高まってきているような気がする。しかし、デモに代表される市民社会の発展と日本のNGOが諸外国のNGOと並ぶような実力をつけるということは別物である。その証拠に、ブックレットが刊行されてからもう30年以上たつというのにNGOの力は諸外国と比べて格段の差があるように感じる。むしろ、日本のNGOと諸外国のNGOの実力は広がった気がする。
では、日本の市民社会が発展したにもかかわらず、日本のNGOが対外的な力を持ちえていない理由はなぜだろうか?
答えは、日本の市民社会の発展がここ10年の動きであり、NGOを支援する基盤がまだまだ弱いためであり、NGO側の資本(人的にも金銭的にも)が弱体なままであるためであろう。
まず、この本が刊行されたと思われる80年代後半はバブル経済の最中であったため、日本人は自らの力より多くの金銭や物品を手に入れており、自らの生活に不満を感じることがなかったために市民活動が育たなかった。その流れは2000年ごろまで続いたのではないだろうか。そして、2000年代から自分たちの置かれている状況は明らかに不安定であり、不満を持つのに十分であるという認識が一般の人々まで広がった。そのため、およそ10年かけて市民活動の礎が築かれ、2012年に開花するにいたったのであろう。2000年代、NGOは地道に力をつけ、市民活動の礎を築くのに一定の役割を果たしたのかもしれない。だが、ここ10年で力をつけ始めた市民活動に代表されるように、まだまだ日本人の社会活動は盛んではない。その間にも、市民活動が盛んな諸外国(欧米や、バングラなどの途上国)は日本の成長速度以上の速度で成長を遂げている。ゆえに、日本のNGOと諸外国のNGOの格差は広がるばかりで、諸外国のNGOの実力に追いつくには至っていない。
ということまで考えた。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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