夏目漱石をよむ (岩波ブックレット NO. 325 クラシックスと現代)
- 岩波書店 (1993年12月20日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (55ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000032650
感想・レビュー・書評
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英語研究を国家から命じられた夏目は帝国という普遍性の中で形成されながらも、異質な特殊性を内包するに至った二つの文学観を対比させながら、その間に文学それ自体を見出そうとした。しかも個別自分の単独的な趣味の判断を唯一の基準にして。
20世紀という状況をその中に生きる人は、決して超越することはできない。個人がその状況を超越しうると信じ得たのが、19世紀的な個人主義とロマン主義であったとすれば、漱石の個人は状況のただ中で、それを批判し続けることを選びとるのである。
科学による文学の批判、文学による科学の批判を実践した文学論の発想は小説においては、より総合された認識として提示されている。
漱石の小説は最初から最後まで、それぞれの小説において特異な切り口から、私的所有と貨幣を媒介とした交換をめぐるすべての問題系を問い続けている、もちろんその問いに対する明確な答えが与えられているわけではない。投げ出された問いは、読者自身が担い続けるしかない。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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