夏目漱石をよむ (岩波ブックレット NO. 325 クラシックスと現代)

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  • Amazon.co.jp ・本 (55ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000032650

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  • 英語研究を国家から命じられた夏目は帝国という普遍性の中で形成されながらも、異質な特殊性を内包するに至った二つの文学観を対比させながら、その間に文学それ自体を見出そうとした。しかも個別自分の単独的な趣味の判断を唯一の基準にして。
    20世紀という状況をその中に生きる人は、決して超越することはできない。個人がその状況を超越しうると信じ得たのが、19世紀的な個人主義とロマン主義であったとすれば、漱石の個人は状況のただ中で、それを批判し続けることを選びとるのである。
    科学による文学の批判、文学による科学の批判を実践した文学論の発想は小説においては、より総合された認識として提示されている。
    漱石の小説は最初から最後まで、それぞれの小説において特異な切り口から、私的所有と貨幣を媒介とした交換をめぐるすべての問題系を問い続けている、もちろんその問いに対する明確な答えが与えられているわけではない。投げ出された問いは、読者自身が担い続けるしかない。

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著者プロフィール

1953年生まれ。東京大学名誉教授。日本近代文学専攻。『漱石を読みなおす』『漱石論』『天皇の玉音放送』『小森陽一、ニホン語に出会う』『文体としての物語』『構造としての語り』など。

「2022年 『なぜ漱石は終わらないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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