ujikenorioさんの感想
2014年5月11日
伊藤之雄『大正デモクラシー 民衆の登場』岩波ブックレット、読了。日比谷焼き討ち事件から労農の分裂まで。大正デモクラシーの歩みを、国内政治・経済・社会の民主化、差別の克服、中国朝鮮半島に対する侵略政策の克服の試みという観点から概観する一冊。 古い本ながら、大正デモクラシーを差別克服の文脈で理解することは失念していたため有益な単著。逆さまから見れば、大正デモクラシーの試みた、1)国内政治・経済・社会の民主化、2)差別の克服、3)中国朝鮮半島に対する侵略政策の克服の試み、という3点は現在でも価値を失っていないどころかますます重要な視点になると思われる。 その意味では、大正デモクラシーを単純に「あだ花」として切り捨て、戦後民主主義の水脈としての意義を否定することに容易になってはならない。
1952年 福井県に生まれる 1981年 京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学 名古屋大学文学部助教授、京都大学大学院法学研究科教授などを経て 現 在 京都大学名誉教授、博士(文学) 著 書 『大正デモクラシーと政党政治』(山川出版社、1987年) 『立憲国家の確立と伊藤博文』(吉川弘文館、1999年) 『政党政治と天皇』(講談社、2002年、講談社学術文庫、2010年) 『昭和天皇と立憲君主制の崩壊』(名古屋大学出版会、2005年) 『明治天皇』(ミネルヴァ書房、2006年) 『山県有朋』(文春新書、2009年) 『伊藤博文』(講談社、2009年、講談社学術文庫、2015年) 『昭和天皇伝』(文藝春秋、2011年、文春文庫、2014年、司馬遼太郎賞) 『原敬』上・下巻(講談社、2014年) 『元老』(中公新書、2016年) 『「大京都」の誕生』(ミネルヴァ書房、2018年) 『大隈重信』上・下巻(中公新書、2019年) 『最も期待された皇族東久邇宮』(千倉書房、2021年) 『東久邇宮の太平洋戦争と戦後』(ミネルヴァ書房、2021年)他多数 「2023年 『維新の政治と明治天皇』 で使われていた紹介文から引用しています。」