ボンヘッファーを読む: 反ナチ抵抗者の生涯と思想 (岩波セミナーブックス 51)

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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000042215

作品紹介・あらすじ

神学者ボンヘッファーは、反ナチ抵抗運動のメンバーとしてヒトラー暗殺計画に加わり、第二次大戦末期、強制収容所で殉教の死をとげる。三九歳だった。恵まれた境遇をなげうって、あえて死に通ずる道を選んだのはなぜか。その生涯と神学思想はキリスト教会史上だけでなく、人間精神の証人として現代に生きる人びとの心を打つ。

感想・レビュー・書評

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  • 教会で借りて読みました。神学論や歴史的背景の詳細に明るくないため、2-3行読んでは戻って読み返し考える……という読み方をしていたためにすごく時間がかかってしまった。ボンヘッファーという人について何も知らなかったけど、厳しい時代の状況の中で、こんな生き方をした人がいたのかと知ることができました。
    腹落ちするレベルで理解できたかと言ったら難しいですが、「自殺をしてはいけない」理由についてはその考え方が非常にしっくり来て印象的だった。

  • ドイツ教会闘争の指導者マルティン・ニーメラーでさえもが、疑似宗教的な熱狂を呼んでいるナチの危険性に当初は気づいていなかった。その一方で若い日のボンヘッファーは批判的な眼差しで見ていたとはすばらしいことである。また、ボンヘッファーが日本の天皇制の危険性を書いているが、ナチ・ドイツの批判の含意を示唆する暗号だった!日本がドイツをモデルにして絶対君主制を築いていったようにドイツ第3帝国(ゲッペルス)もまた日本のヤスクニを羨んでいたのは興味深い話だった。ボンヘッファーが苦難の果てにヒトラー暗殺もやむを得ないと考え罪を引き受けようとしていたことは改めて凄い覚悟だと感じた。彼が1939年にラインホルド・ニーバー宛てにドイツへの帰国を決断した理由を書いている手紙が残っているようで、貴重な記録だと思う。
    そして「愚かさ」が「悪意」よりもいっそう危険な敵であるとの主張はこのナチの時代だからこそ、真に迫ってくる言葉だと興味深く感じる。まさにこの「愚かさ」が集団心理の作用で破壊的行動に結びついていったのだから。そして「成人した世界はいっそう無神的だが、恐らくそれゆえに成人していない世界よりも、神に近い」「<宗教>とは、いわば現実性と<この世>への関わりを失ったキリスト教の倒錯形態である」という逆説的な説明も非常に納得できるのである。

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著者プロフィール

1928年高知県生まれ。東京大学法学部卒業。東北大学名誉教授。主な著書は『西ドイツの精神構造』(学士院賞)、『政治と宗教倫理』『ナチ・ドイツの精神構造』『現代日本の民主主義』(吉野作造賞)、『非武装国民抵抗の思想』『キリスト教と笑い』、『ナチ・ドイツと言語』『聖書の信仰』全7巻、『国家と宗教』『カール・バルト』『ボンヘッファー』(以上、岩波書店)、『宮田光雄思想史論集』全8巻(創文社)、『十字架とハーケンクロイツ』『権威と服従』『《放蕩息子》の精神史』(新教出版社)ほか多数。

「2022年 『良き力に不思議に守られて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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