国連システムを超えて (21世紀問題群ブックス (19))

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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000044394

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  • カントの『永遠平和のために』に代表される近代的な国際機構の構想には、国家の主権性に基づく国家理性と、国民国家を超えた文明の理念に基づく啓蒙的理性という、「二つの近代」がせめぎあっています。しかし著者は、こうした「二つの近代」の相克のなかで現実化を見ることになった国際連合のうちに「理性の支配」という性格を見いだし、それが国家間の暴力が衝突する事態を避けるために、国際秩序を創設するための、もしくは国際秩序を維持するための「超暴力」を要請することを指摘しています。

    一方で著者は、安全保障理事会が常任理事国間の不一致によって「空虚化」するとともに、総会の役割が大きくなってきていることに注目します。このことは、国際秩序を担ってきた「中心」から「周辺」へという一方向的な関係に、変化が生じつつあることを意味しています。そのうえで、当時のブートロス・ガリ事務総長が「トリックスター」としての役割を演じていたのではないかと述べられ、現代の国連が大国主導による近代的な「理性の支配」が解体され、脱近代的な動向が生じつつあるのではないかという見通しが示されています。さらに著者は、NGOの活動に

    山口昌男の「中心」と「周縁」の議論を下敷きに、現在の国連のあり方と今後の国際社会のゆくえが論じられており、興味深く読みました。ただ、「中心」と「周縁」の図式がどの程度じっさいの国際社会の動向に当てはまるのか、若干疑問が残ります。

  • 昨晩、かなり久しぶり(10年以上)に手にした。名古屋の本棚に持ち込んだ大学時代に読んでいた書籍のうちの一冊。最上敏樹先生は大学時代の指導教授でありゼミでは大変お世話になった。久しぶりにまたお目にかかり言葉を交わしたいと強く感じている。

    読みながら漠然と考えていたこと:
    definition(定義)の示すベクトル
    文明の意志
    ドラマとリアリティの対義性
    (距離を持ち俯瞰することによる超リアリティとしてのドラマツルギー)

    最近、未来社会について語る折によくゆとり型社会と先端技術型社会という二つの視座が用いられるのを耳にするが、その文法において感じる居心地の悪さが何なのかを考えていた。もしかしたらその理由は、その議論において根本となる文明論が欠如している点ではないか(現代の対話の多くは観測データあるいは枠組み議論からスタートしている。追記:Outputを数値に示そうとするためそのようになるのはある種当然なのだがその議論の終結が総合性にどのようにして結びつくだろうか)。構造論の議論の前に必要な問いとは何なのか。現在私たちにつきつけられている問題の本質とは新しい文明を在り方の追求。哲学を置き去りにしてなされる構造論の議論には違和感を禁じ得ない。より正確には、学際的アプローチの欠如への違和感いうことであろうか。「対話」には複層構造が必要であると私は考えている。あるいは私は対話(ダイアログ)をある種のproductionとしてみているのかもしれない。prerequisite(必要[必須・前提]条件)が十分に共有されているのかという点への着目。今ここに記しているのは考察の浅いコメントであるので、時間をかけてこれらの問いと向き合っていきたいと思う。
    (2010年3月23日)

  •  人道的介入の著者としても有名な最上氏が国連システムを分析した著書。国連とは国際社会における一つの中心であり、その国連の中核は安保理にあるとする最上氏は安保理がその誕生史から米ソの対立で集権構造の変化を求められた点を指摘。国連システム自体が集権的構造を意図したにも関わらず、中心なき秩序形成になってしまったと分析する。
     彼は国連のこのようなシステムの問題性を指摘しながらも、国連と言うシステムに置いて集権化を図り、パワーポリティクスを行うことは平和構築にもむしろ障壁になると指摘、中央集権構造のないいわばグローバル・アナーキズムによって国際社会システムは管理されるべきだとする。その中で国連と言う場を生かし、NGOなど市民の力を活用できるシステムを構築すべきだとする。
     現在、最新の研究として注目を浴びているグローバル・ガバナンス的なイニシアティブをとるものがいたとしても、そこに統治やトップダウン式のヒエラルキー構造の存在しないシェアガバナンスの概念を、当時それらが論じられる前に最上氏の考察によって導き出している。彼の考察の中には人間科学的な要素も入っており、なおかつその具体性の欠如から彼の主張するグローバルアナーキズムと現在様々な議論のあるグローバルガバナンスを同定義はできないが、興味深い著作である

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