金日成と金正日―革命神話と主体思想 (現代アジアの肖像 6)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000048613

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  •  韓国に幻滅した反動で「二度と韓国には足を踏み入れない」と反韓になり、そっちの方の出版社の常連になってしまった古田博司が岩波書店から依頼されて元原稿から訳したという今では考えられない本。
     徐大粛自身が書いた「金日成」と違って、南労党が起こそうとしたという事になっている「クーデター計画」の評価が逆になって北朝鮮の「主張」そのままになっている。岩波書店のような北朝鮮べったりな版元から依頼されて筆を曲げたのか。この本自体、二代目が北朝鮮をいい意味で変えると期待していたかのような筆致を感じてしまうので、著者は朴正煕と初代が評価したという「朝鮮共産主義運動史」の才気を捨ててしまったのか?、と思えてしまう。
     邦訳者の古田博司が再三、徐大粛から聞いたという話を書いているのは、この本を訳した時に聞いたと訳者あとがきで書いたものの後半部のようだ。今の「非韓三原則」なるものを前面に出して知識を切り売り(友人の宮脇淳子が「朝鮮時代にハングル文学は存在していたが流布されなかった」と平気で書いているところを見ると、古田博司も儒学はともかく「春香伝」や「沈清伝」といったハングル文学の存在を知らないのか?と疑ってしまう)しているところを見ると、もう岩波書店から仕事の依頼は来ないだろう。

  •  96年刊、著者は韓国(朝鮮)系の米国の研究者。訳者古田が評する、等距離で南北を見る、また胸に祖国に対する熱い思いがある、という著者の姿勢は本書から感じられる。すなわち、両指導者を神格化も最初から敵視もせず、また朝鮮人の自主性とその限界に目を向けている。
     個別事象の評価は概ね通説どおりではないか。金日成については、パルチザン闘争(たはだし中国共産党の抗日運動の一環である東北抗日聯軍)、ソ連軍に選ばれた指導者として帰国、朝鮮戦争、ソ連・延安・国内各派の排除、中ソ紛争とソ朝・中朝対立を経て60年代末までに自主路線と主体思想。パルチザン派の排除と個人独裁の完成。著者は総括として、北朝鮮人民に民族的自負心・自主性を与え、政治的安定感の継続性を保障したことをプラス面として、また民族分断を固定したこと、資本主義国家との外交を広げず経済発展しなかったこと、そして個人崇拝で自由が制限され、北朝鮮は人民のための国ではなかった点をマイナス面として評価する。
     金正日については、刊行時期のためその指導者としての評価には至っていない。後継者となる過程では、単に息子だからではなく、芸術面で党事業に貢献した努力を父から認められたためと著者はみている。後継者の課題として著者は、集団的指導への政治改編、主体思想の変更、経済問題解決、外交革新、軍の規模や国内的役割の縮小、法に基づく指導者の地位と指導、を挙げているものの、現在読むと何とも皮肉だ。
     なお、幼少期に死亡した金日成の次男シューラの朝鮮名が「金平一」となっているのは何かの勘違いか。

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