ガンディー 反近代の実験

  • 岩波書店 (1996年1月1日発売)
4.00
  • (1)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 20
感想 : 1
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

本 ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784000048637

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • (2017.03.18読了)(2017.03.06借入)
    Eテレの「100分de名著」でガンディーの『獄中からの手紙』が取り上げられたので、ガンディー関連の本を読んでみることにしました。
    中国の歴史については、日本文化への影響が大きいし、古典もかなり紹介されています。「100分de名著」でも『論語』『老子』『荘子』『孫子』『菜根譚』などが取り上げられています。
    インドについては、仏教関連でブッダのことは、取りあげられるけど、それ以外ではあまりなじみがありません。これを機会に少しずつインドにも深入りしてゆきたいものです。
    この本でも、ムガル帝国時代からのことが少し書いてあります。大航海時代から少しずつインドの植民地化が進んでいったので、インドの独立までの話では、この辺りまで遡らざるを得ないのですね。
    年表を見ると、1526年、ムガル帝国が成立。1600年、イギリス東インド会社設立。とあります。
    ガンディーが生れたのは、1869年です。明治維新の翌年です。
    1888年、弁護士になるため渡英。
    1891年、弁護士の資格を得て帰国。
    1893年、南アフリカへ
    1915年、帰国
    1919年、一斉休業を組織
    1920年、反英非協力運動を提唱
    1930年、「塩の行進」を開始
    1948年、暗殺され死去
    南アフリカには、多くのインド商人が行って商売を行っていますが、白人からの人種差別の対象にもなっています。ガンディーもインド人ですので差別を受けて驚いています。
    ガンディーは、南アフリカでインド人の差別撤廃のために戦い実績をあげます。20年余りを南アフリカのインド人のために費やしたことになります。
    その経験をインドに帰って生かすことになります。南アフリカで付き合ったインド人には、ムスリムが多かったので、ムスリムについての理解も深まったことになります。
    ガンディー自身は、ヒンズー教徒ですが、宗教に対するこだわりはあまりなかったようで、キリスト教についても勉強したようです。
    ガンディーの政治運動のやり方は、独特で、よくわかりません。なぜ反英運動がうまくいったのでしょうか。和解のための断食を何度もやっていますが、なぜうまくいくのか不思議です。完全勝利は目指さず、妥協で満足する、というのも多くの人には受け入れがたいことかもしれません。現実的ということではあるのでしょう。
    もう少し、インドおよび、ガンディーについて読んでみたいと思います。

    【目次】
    刊行にあたって
    第一章 ガンディーの誕生
    第二章 サティヤーグラハの成立―アフリカのガンディー
    第三章 インドの植民地化
    第四章 インド国民会議(派)の成立
    第五章 ヒンドゥ・スワラージ―ガンディーのインド独立構想
    第六章 非協力運動
    第七章 塩の行進
    第八章 一九三〇年代のガンディー
    第九章 第二次世界大戦とガンディー
    あとがき
    年表

    ●菜食主義(19頁)
    人間は動物より上等かもしれない、しかし、上等であることは下等な動物を餌食にしてもよいということでなく、下等な動物を守るべきだ、という意味である。
    人間は生きるために食べるべきであって、楽しむために食べてはならない。
    ●全インド性(37頁)
    ガンディーの場合は、インドの外のアフリカで、さまざまの出身地やさまざまの宗教徒、さらにさまざまの階層をこえてインド人の利益を守ることで、いつのまにか指導者としての全インド性を獲得していったのだった。
    ●国民会議(82頁)
    1885年、ガンディー16歳の年に、インド国民会議第一回大会がボンベイで開かれ、72人が集まった。これが世にいう、国民会議(派)の始まりである。
    ●宗教(108頁)
    すべての宗教は自己の無制限な欲望を抑えるために祖先たちが工夫したひとつの装置なのだ
    ●独立(109頁)
    インドの独立は、単に政治的独立を意味するのではなく、近代文明を徹底的に批判し、過剰な生産や消費を追究しない、自給自足的村落の生活を理想とするものである
    ●自治への鍵(153頁)
    1924年1月
    自治への鍵は、三つの条件を満たすことです。すなわち、紡ぎ車とヒンドゥー・ムスリムの統一と、不可触民制の廃止です。
    ●衛生(156頁)
    ガンディーはインド村落にみられる不衛生、貧困、無気力を、インド農村の三大欠陥だとして攻撃し、とくに農村改良普及員には衛生に細心の注意を払うよう、教育した。

    ☆関連図書(既読)
    「マハトマ・ガンジー」蝋山芳郎著、岩波新書、1950.03.10
    「ガンジー」坂本徳松著、旺文社文庫、1965..
    「ネール」木村毅著、旺文社文庫、1965..
    「インド・パキスタン現代史」蝋山芳郎著、岩波新書、1967.02.20
    「不可触民」山際素男著、知恵の森文庫、2000.10.15
    「アラハバード憤戦記」牧野由紀子著、アイオーエム、2001.05.10
    「ヒンドゥー・ナショナリズム」中島岳志著、中公新書ラクレ、2002.07.25
    「パル判事」中里成章著、岩波新書、2011.02.18
    「ガンディー『獄中からの手紙』」中島岳志著、NHK出版、2017.02.01
    (2017年3月20日・記)
    (amazonより)
    英国の圧倒的な物質文明に翻弄され,差別と暴虐に苦しむ近代インド.南アフリカから帰国したガンディーは,崇高な宗教観に支えられて,暴力と排外的原理主義によらない反英自治運動を推進した.彼がめざしたインド再生の道とは? ムスリム勢力との大同団結を阻んだものは? ネルー首相との岐路はどこにあったのか?

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

長崎暢子(ながさき・のぶこ)
1937年、東京生まれ。東京大学文学部東洋史学科卒業。東京大学東洋文化研究所を経て、東京大学教養学部教授、龍谷大学国際文化学部教授を歴任。現在、東京大学名誉教授、龍谷大学名誉教授。専門、インド近代史、南アジア地域研究。著書に『インド独立――逆光の中のチャンドラ・ボース』(朝日新聞社)、『ガンディー――反近代の実験』『インド――国境を越えるナショナリズム』(岩波書店)などがある。

「2022年 『インド大反乱一八五七年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

長崎暢子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×