一般教養としての物理学入門

著者 : 和田純夫
  • 岩波書店 (2001年6月22日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000050449

作品紹介

現代物理学の究極の到達点である「場の量子論」。これに基づく自然観、すなわち、この世界の"なりたち"、そして"ゆくえ"を、おもに文科系の学生や研究者に理解してもらうためにまとめられたのが本書です。とくに、物理に不可欠な高度な数式を本質的に同等な日本語におきかえて、だれもが考え方の根本を納得できるように工夫しました。ここに書かれていることは、現代を生きぬく人々にとって必須の一般教養である、と読後、感じられることでしょう。

一般教養としての物理学入門の感想・レビュー・書評

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  • 古典(ニュートン)力学から始まって、熱力学、古典電磁気学、相対論、そして量子論までを射程に収める。文科系の学生でも分かるよう、極力難しい数式を使わないで本質に迫っている。内容を完璧に理解することは難しいが、「すべての自然界の現象を説明する究極の理論」を求める道のりの、大まかなイメージぐらいは掴むことはできるだろう。以下本書の概略。

    ・ニュートンは、運動の法則:F=ma(力=質量×加速度)と万有引力の法則:F=GMm/r^2の2つを結び付けて、地上の物体の運動と天体の運動が、同じ法則により説明できることを発見した。
    ・すべて物体は、「(運動エネルギー)ー(位置エネルギー)の運動全体での合計(=積分)」が最小になるように運動する。これを「最小作用の原理」という。
    ・「熱を持つ」ということは、その物体を構成する原子の動きが激しい状態である。運動の前後で「全エネルギー=運動エネルギー+位置エネルギー+熱エネルギー」は保存する。これを「熱力学の第一法則」という。
    ・熱は常に、高温物体から低温物体の方へ移り、必ず物体の温度が同じになるように移動する。これは、エネルギーを持つ粒子の数が十分多いと、統計的に考えて、粒子が物体双方に均等に分配される確率が極めて高いからである。つまり、これを一般化すると、全体として、変化は、分子がよりランダムに分布するように進行する。このことを「熱力学の第二法則」(エントロピー非減少の法則)と呼ぶ。
    ・熱力学の法則から、熱から動力を取り出すには、(1)高温部分と低温部分双方が存在すること、(2)動力を取り出す過程で熱が高温部分から低温部分に移動すること、が必要であるが、これはそのまま現代の火力・地熱発電や原子力発電の仕組みである。(2)の結果として温度差が次第にできにくくなるので、永久機関は実現不可能である(※)
    ・場は「電磁ポテンシャル」を持っており、これを空間座標で微分すると磁場であり、時間で微分すると(ほぼ)電場になる。
    ・古典電磁気学を完成させたマクスウェルの理論によれば、光はそれを観察する地点によらず一定の速度(秒速30万km)になる。このことから、動いている物体の中では時間が√1-(v/c)^2倍だけ遅れる(結果、距離も√1-(v/c)^2倍だけ縮む)という、アインシュタインの「特殊相対論」が導かれる。普通、vはcに比べてはるかに小さい(=v/cはほぼゼロ)ので、時間の遅れや距離の伸び縮みを考慮する必要はない。運動方程式F=maと特殊相対論から、有名なE=mc^2(エネルギー=質量×光速度の2乗)が導かれる。
    ・一般相対論から、物質の存在によって時空が歪むことが示される(アインシュタイン方程式)この「時空の歪み」こそが重力である(*)重力が極端に大きくなって、時間が止まってしまうのがブラックホールである。
    ・量子力学の理論では、電子や原子のようなミクロの粒子は、「粒子」と「波」の両方の性質を持ち、「粒子が各位置にある状態」が無数に共存していることになる。観測した時の頻度分布はシュレーディンガー方程式により求められる。
    ・「強い力」(「核力」とも言う;陽子と中性子をくっつける力)「弱い力」(粒子の種類を変えることのできる力)「重力」「電磁気力」の4つの力を一挙に説明する大統一理論を創ることが、現代物理学の究極の目標である。

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    (※)補足1…「熱」も「仕事」も同じエネルギーだが、「熱」はとにかく分子が動いていればいいのに対して、「仕事」はすべての分子が同じ方向に動いていなければならない。つまり「熱」の方がエントロピーは高いので、「仕事→仕事」または「仕事→熱」の変換はほぼ100%の効率だが、「熱→仕事」は100%よりもはるかに低い効率しか実現できない。火力発電や原子力発電というのは、大きなエネルギーが取り出せるものの、エネルギーの変換効率は非常に悪い(コンバインドサイクルでない発電なら高くて40%台)方法である。
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    (*)補足2…一見我々の生活には何の関係もなさそうな理論だが、例えばGPSには相対論が応用されている。特殊相対論によれば、動いている物体の時間は遅れるので、人工衛星の時計は7μ秒/日、地表の時計より遅れる。一方で、一般相対論によって、人工衛星は(地球からの重力が弱いので)時計が早く進む現象もあわせて起こり、この影響は46μ秒/日である。差引で39μ秒/日、人工衛星の時計は進むことになるが、距離はこれに光速をかけた分だけずれるので、調整をしないと1日で39μ秒×30万km/秒=12kmもずれてしまう。我々がカーナビを使えるのはアインシュタインのおかげである。
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