心を生みだす遺伝子

制作 : Gary Marcus  大隅 典子 
  • 岩波書店 (2005年3月24日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000053891

作品紹介

「心の発達には遺伝子と経験のどちらが重要か」という問いは、そもそもの前提が間違っていた。遺伝子の役目は生まれたときに終わるわけではなく、人間が生涯にわたって経験から学ぶことができるのもまた遺伝子のおかげなのだ。遺伝子が実際にどう働くかをつぶさに見ることで、「生まれと育ち」の真の関係が鮮明に浮かび上がる。

心を生みだす遺伝子の感想・レビュー・書評

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  •  人の心をつくるのに、「遺伝」と「環境」が、どのように関与しているのか……わかりやすく、かつおもしろく学べる、非常によくできた科学啓蒙書。「生まれ」と「育ち」の関係については、たとえばスティーブン・ビンカー『人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か』や、マット・リドレー『やわらかな遺伝子』も面白かったが、1冊だけ読むなら、この『心を生みだす遺伝子』を勧めたい。

     遺伝子を「青写真」や「設計図」とみなす考え方はもう古く、今では料理のレシピのように手順を書いたものとみなす考え方になってきている。しかもそのレシピは固定したものではなく、独立したエージェントのように振る舞う「自己制御レシピ」であるのだという。
     さらに、その手順書は、生物が生まれるときに1回限り使われるものではない。遺伝子は、必要な条件(IF)を決めていて、その条件が整ったとき(THEN)にスイッチをオンにする。ヒトが環境から「学習」できるのは、その刺激によって遺伝子がONになり、ニューロンのつなぎ方を変化させるからである。遺伝子は「経験」と独立して働くわけではなく、一生におけるそれぞれの段階を積極的に調節するために働いている。つまり、「生まれ」か「育ち」かを切り分けることはできないのだ、というのが著者の結論であり、これが非常に説得力に富んだ筆致で説明されている。

     難しいことをかんたんに説明する手際が、この著者はとても上手だ。遺伝子のふるまいや脳の働きについて、コンピュータを引き合いに出しながら説明するところなど、うまいなぁという感じ。さらにあちこちにクスグリが入っていて、飽きずに読ませようという工夫を感じられる。
     この読みやすさには、訳も非常に貢献していると思う(原文にあたったわけじゃないのでたいそうなことは言えないが、同じようなことを説明している類書よりわかりやすくこなれてる印象)。訳者・大隅典子氏の仕事に感謝したい。

     この分野は、近年の科学のいちばんおもしろいトコロだと思うし、これから先はますます誰にとっても重要になるに違いない。そこんところを「楽しく読める」科学啓蒙書としてとてもよくできている本なので、ほんとうに誰にでもお勧めしたい。

    p.s.
     日本語タイトルは『心を生みだす遺伝子』だが、現代は『THE BIRTH OF THE MIND: How a Tiny Number of Genes Creates the Complexities of Human Thought』(心の誕生:いかにしてちっぽけな数の遺伝子が、人間の思考の複雑さを創造するのか)で、本の主旨としては原題のほうがわかりやすい。もすこしニュアンスを残した書名でもよかったかなぁ……。

  • 第1章 どちらが勝るわけでなし
    第2章 学ぶように生まれつく
    第3章 ブレインストーミング
    第4章 アリストテレスの原動力
    第5章 コペルニクスの雪辱
    第6章 心の配線
    第7章 心の遺伝子の進化
    第8章 パラドックスの消失
    第9章 最後のフロンティア
    付録 ゲノム解読のための方法

  • これはなかなか…。
    遺伝子学的な知識が無いと理解が難しい。

    ゲノム解析が進むことで、医学が進歩する。
    例えば抗がん剤でも、人によって効いたり効かなかったりする。
    (そして、効かない場合でも副作用は発生する)
    遺伝子を調べることで効くか効かないかを調べることが出来る。
    それは意味の有ることだと思う。

    あとは、少し気になったことをつらつら。

    赤ん坊は子宮の中にいる時でさえ学習できるのか!
    でも、家庭で試すと別のマイナスの可能性があるからダメらしい。

    妊娠中に薬物やアルコールを摂取してはいけないのは、
    プログラム細胞死がうまく働かない可能性があるからなのか、ふむ。

    --気になった言葉--
    他の哺乳類との決定的な違いの一つは、ヒトが新しい単語を覚える才能に大変恵まれているという点である。(P37)
    体のたいていの部分では絶えず細胞が入れ替わっているのだが、大人の脳におけるニューロンのストックはほとんどまったく固定的である。(P54)
    障害の原因が外傷ではなく遺伝子である場合には、可遡性にはかなりの限界があるような気がする。(P59)

  • 昔、たんぱく質の研究の末端に携わっていたので、大変興味深かった。一般書としては難しいが、専門書とするとユーモアにあふれ読みやすい。

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