被曝治療83日間の記録―東海村臨界事故

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000058728

作品紹介・あらすじ

あの事故に遭った現場作業員の身に、一体どのようなことが起きていたのか。治療にあたった医師、看護婦たちの証言、カルテ、看護日誌から、その凄絶な「生」の姿が浮かび上がる。大きな反響を呼んだNHKスペシャルの単行本化。放送されなかった取材資料、インタビューをも使い、さらに厚みを増した記録として再び世に問う。ひとつの命のゆくえに肉迫する渾身のルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

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  • これだけの重大事故で、これだけ悲惨な亡くなり方をした被害者が二人もいたにもかかわらず、「原子力の安全神話のもとに命の視点がないがしろにされている」という論理から「命の視点に立った、何かあった時のための医療体制を確立させる」という結論へ導かれていることに、時代の違いを感じる。
    本来なら、放射能というものがいかに人間の能力を越えた怖ろしいものであるかを実感し、ここまで医療面でも倫理面でも深刻な実例を目の当たりにしたならば、そもそも原子力というものに頼ろうとすること自体が問題視されるべきだろう。
    この事故が、管理しているJCOの体制の甘さが招いた結果であるからだったことを差し引いても、いかに私たちの頭の中に原子力の安全と推進の神話が刷り込まれていたのかがうかがえるというものだ。

    世界でも前例のない大量被ばく患者を前に、持てる知識と技術の全てを注ぎつくした医療関係の方々にはただただ頭が下がる。と同時に、被ばく事故云々とは別に、医療倫理というものを深く深く考えさせられた。
    また、医師や看護師という医療に携わる人々の、医療そのものに対する意識、普通の人間としての感情、倫理という面での問題など、本当に難しく答えのないぎりぎりのところで仕事をしているその尊さと難しさを思わずにはいられなかった。

    8シーベルト以上の放射能を浴びた人間の致死率は100%なのだそうだ。
    今かなりの難しい病気でも、これほど簡単に致死率が100%と言われるものはないのではないか。それほど進んだ医療をもってしても、放射能とはかようにも怖ろしい、人間の能力をはるかに超えた脅威の怪物なのだ。

    あっという間に読めてしまったが、涙なしには読めない。
    是非、いま原子力発電を推し進めようとしている全ての人に読んでもらいたい。
    原子力をコントロールするなど、人間の幻想でしかないのだ。

  • 放射線被曝、人災であるとともに、医療のあり方について問われる場面だと思いました。壮絶

  • 読んでおいて、知っておいて良かった。

  • 東海村臨界事故で被爆した3人のうち、もっとも高線量の被爆をした1人の治療記録である。一言でいえば壮絶だった。20シーベルトという、1年で浴びる放射線の許容量の2万倍という放射線を一瞬で浴びた体は、日が経つとともに凄惨な姿に変貌していく。骨髄が破壊されたため、血液が作り出せない。皮膚は剥がれ落ち、肉がむき出しになり、失われた体液の補充とともに、毎日大量の輸血がなされた。それの繰り返しで、現代医学では高線量放射線被爆に関しては全くの無力であることが、本書を読めばわかるであろう。およそ希望の持てる治療法はなく、ほとんど全て対処療法であった。唯一攻めの治療であった、骨髄移植も、最初こそ上手くいったように見えたが、結局は機能しなかった。その原因はよく分っていない。ここまですべきだったのかどうか私は疑問に思う。20シーベルトの放射線を浴びれば、現代医学では助かる見込みは100%ない。毎日苦痛を伴う検査を長時間施して、何か有望な治療をするのならいいけど、されていたのはほとんど延命治療であった。被害者は疲れ果て、変わり果て、最後は人工呼吸器で心臓が動いているだけという状態であった。ただ色々と賛否はあるだろうが、この壮絶な生の記録は、被爆の恐ろしさを知らしめてくれる記録は誰もが読んでおくべきだろうと思った。

  • 壮絶としか言いようがない。被爆した本人もだが、医療者も 
    放射能の怖さを まざまざと見せ付けられた。目に見えないが、体の中ででは 予想を上回る状態を次から次へと 
    放射能の影響で染色体が、バラバラになった写真は 驚愕だった。

    こんなに 怖い原子力を 何故 国は 推進するの?

  • 本書に先立って放送されたNHKドキュメンタリー、これを観た友人に聞いた話が鮮明に残っており以来ずっと気になっていた。昨年起きた福島の事故がきっかけとなり漸く手にする。

    被曝されたお二方と御遺族の無念を思えば胸が塞がれるような気持ちになってくる。そして治療する為に彼らを受け入れたのにも拘らず、全く歯が立たず対処的な処置しか出来なくなっていった医師や看護師、その他大勢の方々の苦悩、葛藤に、専門知識など皆無の私も心から頭を垂れる。

    この記録を読む限り、原子力をコントロール可能な代物とする結論は到底得られない。

  • 原発の現実。福島第一原発事故収束作業でどれだけの犠牲が隠蔽されているだろうか。そう思わせる。

  • ひとはこういう死に方をすべきじゃない。原発反対。

  • 1999年9月30日に起きた東海村臨界事故。
    本書は医療の立場から事故の検証をしたNHKスペシャル番組を書籍化したものである。
    日本、いや世界といってもいいだろう、どんな最新の技術や機器をもってしても、その治療をあざ笑うかのように被曝した臓器や組織を次々破壊しつくす中性子線はこの治療にあたった東大病院医療チームを絶望のどん底に突き落とした。
    被曝患者をどうしても救いたい前川医師、しかしそれは同時に被曝患者に生き地獄以上の苦しみを与えることにもなる。助けたい、けれど治療を続けることは果たして正しいことなのか?その狭間で苦悩する医療チーム。
    事故から83日後に大内氏は無残な姿となって力尽きた。そして前川医師が出した答えは「放射線の恐ろしさは人知の及ぶところではない。原子力という人間が制御し利用していると思っているものが、一歩間違うととんでもないことになる。そのとんでもないことに対して一介の医師が何をしてもどうしようもない、とても太刀打ちできない」ということだった。
    こうしてこの事故に関わったすべての者に苦しみを与えた「クリーンで安全」なはずの原子力とはいったい何なのか。本書は問い掛ける。しかし我々はこの重大な問いかけに耳を傾けることはなかった。
    そうしてこの事故から12年。東日本大震災によって起きてしまった福島第一原発事故。
    この東海村臨界事故関係者からの命の、そして原子力への問いかけを無視した代償は大きかったのではないか。

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