不思議な数eの物語

著者 :
制作 : 伊理 由美 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 33
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000059435

感想・レビュー・書評

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  • 半分以上が、がっつり数学の解説でほとんど教科書です。しかも大学でしか習わないような内容もあり、理解できない部分も多かったです。しかし興味深いエピソードもありました。例えば微積分の先取権争いをしたニュートンとライプニッツの晩年は対照的だったそうです。ニュートンは偉大な科学者として国葬まで行われましたが、ライプニッツのお葬式は彼の秘書しか参列しないという寂しいものだったそうです。2人の死後も先取権争いはニュートンを支持するイギリスとライプニッツを支持するヨーロッパ大陸に分かれて議論が続きました。イギリスではニュートンが使った・を使った微分の表記を使い続け、ヨーロッパでは現在でも使われているd/dxなどのライプニッツが使った微分記号を使いました。使いやすさではライプニッツの記号のほうが優れていたので、以後の100年間でイギリスの数学は停滞し、ヨーロッパの数学は大きく発展したそうです。天才ニュートンを誇りに思うあまりに他者の優位性を認めることができず数学的停滞を招いたイギリス。あるいは晩年は寂しかったが、死後、その遺産が後の数学の大きな発展の礎となったライプニッツ。それぞれが国家・個人のレベルで深い示唆を含むお話でした。また、純粋に数学の内容でも興味深いものがありました。無理数は分数では表せない数というのは学校で習いました。しかし分数は分母を大きくしていけば無限に細かく分割できるのになぜ無理数を表現できないのでしょう。たしかにそんなことは考えてもみませんでしたが、そう言われればそうです。こんなことを2000年以上前のギリシャの人々が考えていたというのも驚くべきことです。全体的に難しい本ではありますが、科学の歴史と数学に興味のある人には有意義な本だと思います。

  • こんなに興味深く数学の話をしてくれたら、数学嫌いは少なくなるのでは?反対にその不思議さにはまりそうな人も増えそう。
    しかし、多少の困難、我慢は必要かも。

  • 本書の内容に入る前にeの特色について少しだけ補足説明をする。
    eとは、
     d(e**x)/dx == e**x   (**は階乗を表す。例えば3**2=9)
    が成り立ち、
     ∫1/x dx = log x (logは自然対数。y = log xとすると、e**y = x)
    が成り立ち、
     lim(1+1/n)**n = e
    となる。定性的には、数学における2番目に重要な無理数(一番目はπ)である。ここまで書くとお分かりだろうが、eの解説を微分積分や極限、収束の概念なしで済ませることは不可能である。しかし、これらの概念を本に注入してしまうと、その時点でその本の販売数はたかが知れてしまう。多くの著者は、ここで妥協し適当に誤魔化した数学でそれを乗り越えるのであるが、本書著者は違う。まともに微分積分、無限数列、極限などの数式を本書のいたるところに散りばめ、その体たるや、まるで純粋数学の本のようである。このような方法でニュートン、ライプニッツ、ベルヌーイ、オイラーなど綺羅星のごとき一流数学者の思考の変遷をeを中心にして描きつつ、最終的には、
    e**iπ + 1 = 0  (数学で最も重要な数5つをすべて含む。0、1、e、π)
    という数学でもっとも有名な式の解説にまで踏み込む。実に面白い。面白すぎるといってよい。
     残念なことではあるが、数学を専攻したことのない人にとっては100%の理解は難しい。ただし微分積分まで理解した人(理数系の人)なら90%の理解は可能だと思う。

  •  自然対数の底eは、円周率πと同様に超越数で、数学のみならず物理学の世界でも重要な定数であるが、πに比べると発見されてからの歴史は浅く、その意味や歴史について詳しく書かれた本は少ない。本書は、その空白を埋める目的で書かれたという。

     数学でeを習ったのは多分、高校2年か3年だったと思う。関数 y=e^x はxで微分した導関数が自分自身に等しくなることを教わった時の光景はなんとなく覚えているが、それを導く過程についてはすっかり忘れてしまった。

     最近はすっかり数学が苦手になっているため、『オイラーの贈物』という本を読もうとした時は途中で挫折してしまった。数式を扱わない生活が十年も続けばそりゃ忘れるというものですが、まがりなりにも理系なのですから、たまには思い出したいものだ。

     本書はニュートンやオイラーを含む数学者たちの伝記的な部分と、数学の解説部分がほどよく混合されている。素人向けの読み物としてよくできていると思う。次はもう少しレベルの高い本もちゃんと読めるよう、感覚を取り戻したい。

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