ふたりの微積分――数学をめぐる文通からぼくが人生について学んだこと

制作 : 南條 郁子 
  • 岩波書店
3.52
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本棚登録 : 160
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000059596

作品紹介・あらすじ

「数学はそんなに多くは教わらなかった。でも今、彼がぼくに何をくれたのかようやくわかってきたように思う」。高校の数学の授業で出会った生徒と教師が30年ものあいだ文通をつづけてきた。人生は浮き沈みを経ながら進んでいくのに、手紙に書くのは微積分の話ばかり。ふたりにとって変わったものと変わらなかったものは。

感想・レビュー・書評

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  • 高校時代の教師ジョフと、卒業後数学者となった著者スティーヴとの文通。数学の問題についてのやりとりが主でありながら、二人の人生が端々に浮かび上がってくる。

    中でも心に残ったのは、以下のくだり。
    家族の強い勧めに折れて医学進学課程を取った学生時代の著者は、多忙のため好きな数学や物理のクラスを取ることができなくなっていく。進路はどうするのかと尋ねる母親に対し、言葉がほとばしり出る。
    「だってずっと前からやりたかったんだ!(中略)今やっとハイゼンベルクの不確定性原理が本当はどういうことなのか、言葉だけじゃなくて、数学で勉強できるところまできたんだ。それなのにスケジュールに入らないばっかりに勉強するチャンスを逃して、医学部に行って、死体を解剖して、それからじゃもう遅いんだよ!」
    母親はこう答える。
    「こう言ったらどうなの。今、ここで。『ぼくは数学と物理が好きなんだ。量子力学をとりたい。医者にはならない。でも最高の数学教師になるためなら何でもする』って」
    そうして母と息子は泣いて、笑って、結局著者は医学を捨てて数学を取る。この場面は自分自身の経験とも重なるところがあり、何回も読み返した。スティーヴは後悔はしなかった。私は、どうかな。

    その後もジョフとスティーヴの手紙のやりとりは断続的に続いていく。それぞれの人生には肉親の死、結婚の失敗、キャリアの選択といった様々な転機が訪れる。これらが数学的な概念とのアナロジーで重層的に語られ、不思議な調和を生み出している。

    数学の内容は分からなくてももちろん読めるけれど、理解できるとなお楽しめる。なんといっても、取り上げられている問題がどれもチャーミングなのだ。微積分というひとつのテーマにそって二人の間で交わされる素敵な問題たちと遊ぼう。人生の旅を、数学の旅をしよう。

    • 佐藤史緒さん
      >スティーヴは後悔はしなかった。私は、どうかな。

      後悔しないのが一番ですが、もし後悔したらぜひ医学部へカモンプリーズ。
      >スティーヴは後悔はしなかった。私は、どうかな。

      後悔しないのが一番ですが、もし後悔したらぜひ医学部へカモンプリーズ。
      2013/02/05
    • ratsさん
      もしものときは、前向きに検討させていただきます(笑)
      が、その前に、後悔しないよう最善を尽くす所存であります!

      実のところ、物理工学の中に...
      もしものときは、前向きに検討させていただきます(笑)
      が、その前に、後悔しないよう最善を尽くす所存であります!

      実のところ、物理工学の中にも医学物理という一分野があります。思わぬところで医学との接点があるものですね。
      2013/02/13
  • “科学の本を読んで,初めて涙が溢れた”と作家の瀬名秀明さんも推薦される一冊。生徒と先生の、数学を通した30年間の友情物語。

  • 数学好きなら是非。そこに人生の悲哀までブレンドされているなんてたまりません。高校数学+大学教養程度の数学が必要と思われますが、難解な部分はありませんでした。久しぶりに数学的好奇心を羽ばたかせることができました。

  • 本書の著者、スティーヴン・ストロガッツ氏は高校卒業後も高校時代の数学教師と文通を続けてきました。

    「数学のことをメインにし、個人的なことは余り触れないと言うルールがある」との著者の思い込みに釣られるかのように、時に途絶えがちに、それどころか返事すらもしない時も含みながらも30年間も続いてきた数学中心の文通。

    これに対する著者の妻の「へぇ、男のやることだわね。」との言葉を切っ掛けに、今までの30年を見つめなおし執筆されたのが本書です。

    大学入学早々に大学数学の難解さに直面した著者の不安を始めとし、その後の職業人生や結婚、そして離婚、愛する人の死等、30年間に及ぶそれぞれの人生に触れつつ、当時の手紙の内容を紹介していくと言うスタイルを採用しています。

    本書に紹介されている手紙では数学的な意見のやり取りが活発に行われており、大学1年程度の数学素養がなければこれをきちんと理解するのはちょっと手間かも知れません。

    しかし、訳者の後書きで紹介されている俳優、アラン・アルダの「これは本当に並々ならぬ本だ。言葉の本当の意味でね。だって、数学と感情がこんなふうに混じり合うなんてこと、並の本では起こらないよ。」「(数学部分は)意味不明なフランス語かギリシア語と思えばよい」との言葉にあるように、数式を見れば頭痛がしてくるという方でも、内容は理解出来ずともこれを通して2人の心を感じることが出来るのではないでしょうか。


    著者は他に、"同期"をテーマにしたポピュラーサイエンス「SYNC」の著者でもあり、文筆の腕の確かさは折り紙つきです。

    本書でもそれは遺憾なく発揮されており、自らの、そしてかつての恩師、今の友人のそれぞれの過去に思いを馳せる、しっとりとした落ち着きのある本となっています。


    数学部分に挑戦をするのも良し。
    著者の回想に慰めを感じ、満たされるのも良し。

    読者自身の最も必要とされるものが手に入る一冊ではないかと思います。

    心を満たしたい方にお勧めです。

  • 高校の師弟関係にあるジョフ(ジョフリー先生)とスティーブの30年近くにわたる手紙のやり取り。それは、数学を愛した人たちの愛すべき交友記である。正に数学の証明のやり取りなのだが、その合間ににじみ出るそれぞれの豊かな人間性。数学が全然わからなくても、その交友関係に、それぞれの人生のドラマに感動します。
    本文中にも出てくる「ご冗談でしょう、ファイマンさん」に似た感動があります。数学の式の部分はわからなくても大丈夫。解らないところは、ヒエログロフか何かと思って読み飛ばしましょう。ただ、これだけ数学を愛し、繋がっているお二人に感動します。

  • ヘレーン・ハンフ「チャリング・クロス街84番地」が好きな人ならきっとこの本も楽しめると思う。
    数学の問題とその解法についての書簡から、あるいは古書の注文とその発送通知から、人は何を見つけるのだろう。
    もしかしたら私たちは時々「人はつながっている」ということを知って安心したいのかもしれない。

    『問:外向的な数学者の見分け方は? 答:君の足元を見ながら話しかけてくる。』というジョーク(44p.)があるほど社交下手であるという二人の数学者(かつ教育者)の文通は、数学の問題についてのやりとりが主で、個人的な話題はほとんど含まれない。
    でも二人が生き生きと熱意をもって共通の関心事項である数学の問題とその証明方法を書いては送りあう姿は微笑ましく、また、紙と鉛筆さえあれば(証明のためコンピュータも電卓もしばしば用いられているけれど)どこでもできる数学というものも楽しいなと思わせてくれる。

    実際の証明に使われる記号や公式はすっかり忘れたものや知らないものだらけなのだけど、学ぶことは面白いことだと思わせてくれて、また、形而下の問題を抱えているときに形而上の問題が気晴らしになることを教えてくれるこの本はいい本だ。

  •  連続性。微積分は根っから単純で楽観主義だから、なにごとも一瞬前とほんの少ししか変わらないと考える。そうして無限に小さな変化がつながり、切れ目ない流れをつくっていくのだと。変化をこのように理解することは凄いことなのだ。なぜなら人生の変化は突発的で、痛みをともなうのがつねだから。ジョフリー先生との文通も、ゆえにあちこち不連続点だらけだ。

  • 趣味をとことんつきつめるとそれは人生そのものに値する。親子ほど年が違って、同じ趣味(仕事?)をもってる2人の人生が重なって、浮き沈みがあって、それと数学との重なりが見事すぎる。

  • 高校の数学教師と教え子の間で30年間にわたってやりとりされた数学な手紙の本.

    いい数学の一般書を見つけた.
    読むときには目で追っただけだから,一部の数式をちゃんとノートに書いて追って読み直したい.
    最後にある「読書案内」と「参考図書」が嬉しい.

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:413.3//St8

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