モラル・トライブズ 上 共存の道徳哲学へ

  • 岩波書店 (2015年8月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784000063210

みんなの感想まとめ

道徳の多様性とその背景を探求する本書は、功利主義を通じて「部族主義」的な考え方の違いを明らかにし、読者に新たな視点を提供します。著者は、異なる部族の道徳観が争いの原因であることを「常識的道徳の悲劇」と...

感想・レビュー・書評

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  • 合理的には生きられない。生活できる以上にお金を稼ぎ、そのために命を削り、身体に悪い飽食と心に悪い娯楽を味わいながら、せめてもと、他者に優越を感じるための寄付やマウントで生きながらえた気分に刹那浸り、仮初の友に見送られながら一生を終える。権威にも負けず、金銭的支配にも負けず。その目指すゴールの無意味さに気付き、調和を意識した者からドロップアウトして、そこそこの人生を送る。そこそこの人生には、それなりの余暇と余裕があり、そうしてはじめて他者と分け合う事を学ぶのだ。

    チスイコウモリは、餌に巡り合えなかった仲間に餌を分け与える。人間にも、この「仲間」意識があるから純粋な利己的人間にはならずに分け合う事ができる。さてそこで本題だが、仲間とは何か。我々は身贔屓を許し、その境界線を引いて、内集団バイアスや部族主義をいかんなく発揮する。この線からあちらで生まれた声の大きなチームは敵ですよ、漬物を辛くする地域の人は味方ではないですよ、みたいに。

    価値観をリセットして、素朴に周りを見渡すとする。その時、私があなたを美味しそうな食糧や奴隷の候補として見ないのは何故だろう。日本人であるという思い込みが、自然と助け合うべき潜在意識を私に根付かせているからであり、同じ人間だという意識があり、奴隷制はお互いに禁止しようという道徳や法律があるからだ。

    本書によると、人間の赤ちゃんは生後半年頃には他者の行為について価値判断を行なっており、協力的な兆候を示すものに手を伸ばし、その反対のものを避けるらしい。近くにいる敵意のないものは味方。味方は助け合う。相互に生きやすくする社会性動物としての本能である。

    しかし、この領域展開には限界がある。あらゆる協力集団は部外者による搾取から自分たちを守らなくてはならない。早めに「私たち」に属し、「私たち」を「彼ら」から見分ける能力と、「私たち」をひいきする行為が必要だ。

    乳児は外国語なまりのない話者の方を信頼し、母語を話す人からおもちゃを受け取りたがる。五歳児は、外国語なまりのない子と仲良くなりたがる。外国語の習得には、ある年齢以降の習得者には、決して母国語のようには扱わせない脳年齢的限界があり、自他を見分けるのだ。

    上巻は徐々に功利主義の話へ。最大幸福を求める範囲は、その集団の限界範囲まで。そんなセコい哲学で世界平和など実現できるのだろうか。
    下巻に期待。

  • 今まで読んだ道徳論の中でももっともしっくりきたものの一つ。埃をかぶった考え方と言う印象を受ける功利主義を使って、「部族主義」的な考え方の違いをどのようにまとめていけるのか、その可能性を感じさせる書。知的にとても感化された。

  • 情動に関する、もう少し詳細な脳神経学的な研究分析が紹介されているとよいと思った。
    「気分が悲しくなる」→「所有物を売る傾向が高まる」
    みたいな話がもっと知りたい。

    DLPFC vs 偏桃体+VMPFC

  • 学生購入希望で購入した図書(2022年度)
    【所在】図・3F開架
    【請求記号】150||GR||1
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/463091

  • それぞれの部族にはそれぞれの道徳上の常識がある。部族どうしが争うのは、異なる道徳的観点から捉えるから。著者は、これを常識的道徳の悲劇と呼ぶ。

    アメリカ南部の初期の移民は、牧畜を経済の柱とするイギリスの辺境からやってきた人々だった。彼らの財である家畜は簡単に持ち運べるため、一歩も引かない気概とそれを周囲に知らしめることが必要。牧畜民は短期であること、短期であることを世間に知られることが戦略的に有利だった。現在の南部の人々は、牧畜民ではなくても、名誉に対する伝統的な観念を重視する文化で育っている。南部は北部より、口論や喧嘩が関係する殺人率が高い。アメリカ南部に浸透する名誉の文化は、自助自立と個人の自主性を重視する。

    宗教的な道徳的価値とローカルな道徳的価値観は密接に結びついており、ローカルな道徳的価値観はほぼ例外なく宗教的価値観である。

  • 哲学

  • 解説:阿部修士(こころの未来研究センター)

    税制、福祉、中絶、死刑、同性婚、環境規制……何が正義か、誰がどんな権利をもつかをめぐって社会は引き裂かれる。人々が自分は正しいと心の底から信じて争うとき、対立を解決する方法はあるのか。今こそ生物学、心理学、哲学、社会科学の知見を統合し、道徳とは何かを根本から理解しよう。そこから人類すべてが共有できる普遍的な道徳哲学が生まれる。(全2冊)(amazon.co.jpより)

  • どうやら我々の脳には「道徳マシン」が備わっており、これにより所属する「部族」内部においては他の構成員と協力し最善の結果を追求するよう配線が組まれていることがわかってきた。しかしこの「道徳マシン」は残念ながら他部族の存在を前提としていないため、「彼ら」との関係においては機能せず摩擦を生んでしまう。何故かくも簡単に「我々」と「彼ら」は引き裂かれてしまうのか?ローカルな「道徳」を超えて、全ての「部族」が尊重し価値判断の根拠とする共通通貨、「メタ道徳」は存在しないのだろうか?あるとすればそれは?

    本書は弱冠41歳でハーバード大教授となった著者が、「道徳」がどのように我々の脳に実装されているのかを、心理学・哲学・脳科学・倫理学等様々な分野を横断しながら論ずるもの。岩波書店らしく取っ付きにくい装丁だが、「功利主義」こそが普遍的な道徳哲学だとする著者の主張が意外に平易な文体で展開されてゆく。前半の脳の道徳判断の「二重過程」の説明辺りまでは、カーネマンの「Think fast & slow」がそのまま出てきたりして「またぞろ行動心理学か?」と思ったりしたが、後半はやや思考実験的な記述が増えるところを見ると、下巻はより哲学や倫理学に軸足を置いた展開になりそうだ。反功利主義に対する、著者曰く「読むのがしんどい」再反論の展開に期待。

  • 出版社による紹介:
    http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/006321+/top.html

    立ち読みもできます:
    (上巻:立ち読みは目次と序章)
    http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/9/0063210.html
    (下巻:立ち読みは目次と解説)
    http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/7/0063220.html

    シノドスで紹介されました(阿部修士さんの解説の転載):
    http://synodos.jp/society/15282

    shorebirdさんによる書評:
    http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20151005#1443998491

    斎藤哲也さん@幻冬舎plusによる紹介:
    http://www.gentosha.jp/articles/-/4410

    公明新聞2015.11.2の書評(評者は小川仁志さん)

    瀬名秀明さんによる書評(「週刊朝日」2015年11月20号):
    http://book.asahi.com/reviews/column/2015111900001.html

    「紀伊國屋じんぶん大賞2016」に入選しました(23位):
    https://prw.kyodonews.jp/opn/release/201601157059/

    吉川浩満さんによる書評(「KOKKO 第11号」2016年7月 http://clnmn.hatenablog.com/entry/2016/07/05/191523

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著者プロフィール

たけだ・まどか
翻訳家。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。スラヴ文学専攻。訳書に、ジョシュア・グリーン『モラル・トライブズ──共存の道徳哲学へ』(岩波書店)、マリア・レッサ『偽情報と独裁者──SNS時代の危機に立ち向かう』(河出書房新社)、イアン・ジョンソン『中国の反体制活動家たち──閃光の抵抗運動史』(河出書房新社)ほか。

「2025年 『ロシアの鎖を断ち切るために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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