モラル・トライブズ 下 共存の道徳哲学へ

  • 岩波書店 (2015年8月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784000063227

感想・レビュー・書評

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  • 上巻の話だが、本書のテーマである部族主義では身近な仲間に対して利他的に振る舞うことは出来ても、それが自衛のための本能や構造的なものならば、世界市民化や平和は難しいのではと感じた。話は更に深掘りされていく。

    近くで溺れかけている子と、遠くの貧しい子。人は、顔の見える被害者にまっさきに反応しがちだ。合理的無関心とも言えるし、そもそも我々は、遠くの世界に対してはその存在すら確信を持てない。詐欺に遭わないよう、簡単には利他を振り撒かない。そんな所にも、部族主義的な身贔屓の感情が関係しているような気がする。

    ー 西洋道徳哲学には三つの大きな学派が存在する。功利主義/帰結主義(べンサム=ミル流)、義務論(カント流)、そして徳倫理学(アリストテレス流)だ。この三つの学派は、本質的には、マニュアルモードが、自分と一緒に組み込まれているオートモードの意味を理解する三通りの方法だ。私たちは、マニュアルモード思考を使って、オートモードを明示的に記述できる(アリストテレス)。マニュアルモード思考を使ってオートモードを正当化できる(カント)。そして、マニュアルモード思考を使ってオートモードの限界を超越できる(ペンサムとミル)。

    ー 私は、マニュアルモード思考は、道徳生活できわめて重要な役割を、すなわち、何度もくり返すように、第二の道徳の羅針盤の役目を果たしていると信じている。ハイトはそうではない。彼の有名な論文「情動的な犬と合理的な尻尾」というタイトルが巧みに表現しているように、論理的思考は、道徳生活においてささやかな役割しか果たしていないと考えている。

    ー 部族には、それぞれ固有の協力の条件がある。互いにどんな義務を負うのか、立派な人は脅威にどう対応するかについて異なる考えと感情をもっている。異なる「固有名詞」、ローカルな道徳的権威に献身を捧げる。そしてそもそもの設計により、彼ら)より(私たち)をひいきする。自分たちは公正にふるまっていると考えているときでさえ、(私たち)にもっともしっくりくるタイプの公正さを無意識に好んでいる。このようにして、私たちは、「常識的道徳の悲劇」に直面する。何が正しく、何が間違っているのかについて一致できない道徳部族だ。

    議論を避け、省エネのために権威はある。オートモードで発現する倫理観。情動的な犬と合理的な尻尾、という言葉が頭に残る。我々の発動する本能や感情、それに合わせて後から合理性を装い尻尾のように辻褄を合わせるのだ。結局、効率の良い範囲が仲間内プラス概念的な共有範囲という事だろう。ネットでも会議でも、意見が食い違うだけで「敵と味方」に分かれがちだ。暗黙に服従する序列化のオートモードの範囲が世界規模に広がる時、対立が支配に変わり秩序が形成される。気に食わないが、そんな方法がデフォルトなのかも知れない。

    つまり支配された後に平和がやってくる。それまでは対立が続くという事だ。

  • 功利主義を紹介する本だということが前編で分かったため、あまり興味が持てず、流し読みしました。
    昔、佐高信という左寄りの批評家がいて、私はあまり好きではないのですが、彼の言葉で好きなのがあります。
    「良い人の欠点は、周りも良い人だと思ってしまうこと。悪い奴はいるんです。すごく悪い奴がいるんです」
    この本を読んで思ったことは
    「賢い人の欠点は、周りも賢い人だと思ってしまうこと。賢くない人のほうが圧倒的に多い」
    功利主義の言う全体の利益を考えて行動するなどということは認知能力の高い人だけができる芸当。
    多くの人は劣等感を抱えて生きており、自分の理解できない概念には心を閉ざしてしまうのが現実のような気がします。

  • 学生購入希望で購入した図書(2022年度)
    【所在】図・3F開架
    【請求記号】150||GR||2
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/463092

  • 哲学

  • 【書誌情報】
    原題:Moral Tribes: Emotion, Reason, and the Gap between Us and Them (2013)
    著者:Joshua Greene.
    訳者:竹田 円(たけだ まどか)
    解説:阿部 修士(あべ・のぶひと)
    出版社:岩波書店
    定価:本体2,800円+税
    刊行日:2015/08/27
    ISBN:9784000063210 
    判型:四六 上製 カバー
    頁数:332
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b261155.html

    【メモ】
    ・「解説」が公開されている。
    http://synodos.jp/society/15282

    【簡易目次 上】
    序章 常識的道徳の悲劇

    第一部 道徳の問題
     第1章 コモンズの悲劇
     第2章 道徳マシン
     第3章 あらたな牧草地の不和

    第二部 速い道徳,遅い道徳
     第4章 トロッコ学
     第5章 効率性,柔軟性,二重過程脳

    第三部 共通通貨
     第6章 すばらしいアイデア
     第7章 共通通貨を求めて
     第8章 共通通貨の発見

    原注/索引

    【下巻】
    第四部 道徳の断罪
     第9章 警戒心を呼び覚ます行為
     第10章 正義と公正

    第五部 道徳の解決
     第11章 深遠な実用主義
     第12章 オートフォーカスの道徳を超えて

    著者より/謝辞/解説(阿部修士)
    書誌/原注/索引

  • ジョン・ロールズの功利主義批判への反論は上巻で警告されていたほどにはややこしいとは感じられず、実験結果や他分野の成果を織り交ぜながら軽やかに練られて行く文章を読むのはむしろ心地良かった。この下巻ではまず直感的・情緒的判断に関わる脳の「オートモード」の近視眼性が明らかにされ、道徳同士の対立の際には論理的・合理的判断を担う「マニュアルモード」を動員し、どの「部族」も共感できる「共通通貨」を模索せよとする「深遠な実用主義」が最終的に提示される。肝心の共通通貨については「幸福の経験」とされるのみで具体的な検討に欠けるきらいがあるのが残念だが、個人的には異なる部族間で共有される普遍的な概念として「科学」が有力候補として挙げられている点に深く共感。道徳を「科学」に還元しようとする試みとして楽しく読めた。

  • 出版社による紹介:
    http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/006321+/top.html

    立ち読みもできます:
    (上巻:立ち読みは目次と序章)
    http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/9/0063210.html
    (下巻:立ち読みは目次と解説)
    http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/7/0063220.html

    シノドスで紹介されました(阿部修士さんの解説の転載):
    http://synodos.jp/society/15282

    shorebirdさんによる書評:
    http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20151005#1443998491

    斎藤哲也さん@幻冬舎plusによる紹介:
    http://www.gentosha.jp/articles/-/4410

    公明新聞2015.11.2の書評(評者は小川仁志さん)

    瀬名秀明さんによる書評(「週刊朝日」2015年11月20号):
    http://book.asahi.com/reviews/column/2015111900001.html
    59/

    吉川浩満さんによる書評(「KOKKO 第11号」2016年7月 http://clnmn.hatenablog.com/entry/2016/07/05/191523

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著者プロフィール

たけだ・まどか
翻訳家。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。スラヴ文学専攻。訳書に、ジョシュア・グリーン『モラル・トライブズ──共存の道徳哲学へ』(岩波書店)、マリア・レッサ『偽情報と独裁者──SNS時代の危機に立ち向かう』(河出書房新社)、イアン・ジョンソン『中国の反体制活動家たち──閃光の抵抗運動史』(河出書房新社)ほか。

「2025年 『ロシアの鎖を断ち切るために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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