ヴァーチャル日本語 役割語の謎 (もっと知りたい!日本語)

著者 :
  • 岩波書店
3.80
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本棚登録 : 193
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000068277

作品紹介・あらすじ

「そうじゃ、わしが博士じゃ」としゃべる博士や、「ごめん遊ばせ、よろしくってよ」と言うお嬢様に、実際に会ったことがあるだろうか。現実に存在する・しないにかかわらず、いかにもそれらしく感じてしまう言葉づかい、これを役割語と名づけよう。誰がいつ作ったのか、なぜみんなが知っているのか。そもそも一体何のために、こんな日本語があるのだろう。

感想・レビュー・書評

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  • たいへん面白かった。
    普段「〜じゃのう。」、「〜ですこと。」のような「博士語」、「お嬢様語」を話す人はいない、お目にかからない。たぶん、みんなもそうだろう。(いや、現実にそんな言葉遣いをする人に会ったことがある人もいるかもしれないが)

    筆者の論の進め方は明確。
    「役割語」を紹介し、そこから出てくる問題提起を行う。
    「いつから使われるようになったか?」など。
    近世文学や近代文学、あるいは漫画につかわれているセリフ、他さまざまな資料を提示し、綿密に論証していく。
    そして、根拠を提示し、自らの問題提起に対する結論を述べる。

    日本語学について深く知ることもできたし、小論文の組み立て方・・現代文読解の方法にも役立つ本だと思う。

    もちろん、日本語学が一番だが。


    おすすめです。



    「〜アルヨ語」についての論考は、目からウロコ。

  • じゃよ、あるよ、なくってよ、など、日常では聞かないが劇中には出てくる役割語についての解説。
    非常に古い文献まで遡り、何故その役割語が転用されることになったのか、文化成り立ちも含めた考察がされており非常に面白い。

  • 「役割語」の起源、変遷、存在理由が説明される。巻末の「附録」には、「ある特定の言葉づかい…を聞くと特定の人物像…を思い浮かべることができるとき、あるいはある特定の人物像を提示されると、その人物がいかにも使用しそうな言葉づかいを思い浮かべることができるとき、その言葉づかいを『役割語』と呼ぶ。」と定義されている。なるほど、「そうじゃ、わしが知っておる」なら老博士だし、「そうですわよ、わたくしが存じておりますわ」ならお嬢様に決まっている。中国人なら、「そうあるよ、わたしが知ってるあるよ」と言いそうだ。そんな言葉づかいをする老博士やお嬢様や中国人に会ったことがなくても(それどころか、そんな老博士、お嬢様、中国人が実在しなくても)、そう感じられるのはなぜか。そんなこと考えたこともなかったが、言われてみれば不思議な話だ。

  •  この本は、以下のセリフは誰が言ったものかをあてる、こんなテストで始まります。

    1 そうよ、あたしが知ってるわ
    2 そうじゃ、わしが知っておる
    3 そや、わてが知ってるでえ
    4 そうじゃ、拙者が存じておる
    5 そうですわよ、わたくしが存じておりますわ
    6 そうあるよ、私が知ってるあるよ
    7 そうだよ、ぼくが知ってるのさ
    8 んだ、おら知ってるだ

    選択肢 
    ・お武家さま 
    ・(ニセ)中国人 
    ・老博士 
    ・女の子 
    ・田舎者 
    ・男の子 
    ・お嬢様 
    ・関西人

     日本語を母語として生活していれば難しくありませんが、著者が言う通り、考えてみるとこれは不思議なことです。
     実際にこんな風に話している人はほぼいない、それなのに、子供も含め、こうした言葉づかいをみんな当然のものとして了解しているからです。
     著者は、ある特定の言葉づかいを聞くと特定の人物像を思い浮かべることができる、特定の人物像を提示されると、その人物がいかにも使用しそうな言葉づかいを思い浮かべることができる、こうした、現実ではない仮想=ヴァーチャルな言葉づかいを役割語と定義し、「ステレオタイプ」「標準語」をキーワードに、その背景にあるものを読み説いていきます。
     現実にはない博士語、老人語がそれらしく感じられるのはなぜか、鉄腕アトムのお茶の水博士、ポケモンのオーキド博士は「~じゃ」という博士語で話すのに、鉄人28号の敷島博士、Dr.スランプの則巻千兵衛はなぜそうでないのか、「風と共に去りぬ」では、主人公の言葉と黒人侍女の言葉はどのように訳し分けられているか等、興味深い話題が満載です。
     そういえば、歌に当たり前に出てくる「きみ」って、本当は言わないよなとか、「悲しい色やね」って、どんな効果を狙って舞台を大阪にして、関西の言葉で書いたんだろうとか、いろいろ考えたくなる本です。

  • 2015年11月29日に開催されたビブリオバトルinいこまで発表された本です。テーマは「ミステリー」。チャンプ本!

  • ちょっと眠くなる本だけど、日本語の勉強をしてる人、日本語表現について考えてる人はおすすめ。
    役割語に関して詳しく書かれており、自分が普段しゃべっている言葉や、TV等で耳にしている言葉について考えるようになった。なんで博士は「~じゃ」としゃべるのか?本当の博士はそんなしゃべりかたするのか?
    考え出すと止まらなくなってきます。

  • 「博士っぽい言葉」や「アルヨことば」を、「役割語」として捉えるのは面白いと思った。それから、役割語をペルソナとして利用するというのには、とくに納得がいった。たしかに…あたくしにも、お嬢様になりたいと思って、わざとお嬢様ことばを使うことがありましてよ。

  • お茶の水博士を代表とする「博士語」のように、現実世界で喋る人がいないのに日本語を母語とすれば容易に人物像を描ける「役割語」を提案する本。
    小説において、読者が方言話者であっても、自然に感情移入できるのは標準語を話す登場人物であるという指摘が興味深い。方言を話す登場人物はステレオタイプが対応付けられてしまう。なるほど。

  • 船橋図書館

  •  日本語には特定のキャラクターを喚起する特別な言葉づかいがあります。例えば「そうじゃ、わしが知っておる」という表現は老博士を、「そうですわよ、わたくしが存じておりますわ」であればお嬢様を即座に連想するでしょう。こうした「老博士語」「お嬢様語」のことをまとめて「役割語」といいます。役割語は私たち日本語母語話者にとってとても身近な存在で、誰もが慣れ親しんでいるものです。しかし、少し考えると、役割語はとても不思議な言葉づかいであることがわかります。まず、そもそも先にあげたような言葉づかいをする人は、現実の世界にはほとんどいません。私たちが役割語を見かけるのは漫画や小説と言った仮想の世界の中に限られます。ではなぜ役割語は現実にはありえそうもないにもかかわらず、特定のキャラクターと結び付いていかにもそれらしく感じられるのでしょうか(p.12)?
     また、漫画や小説で「老博士語」や「お嬢様語」を使って話すキャラクターは多くの場合、脇役扱いされます。一方、主人公は通常、いわゆる「標準語」を使って話します。なぜ、「老博士語」「お嬢様語」を話すキャラクターは脇役なのでしょうか(p.33)?
     本書はこうした役割語にまつわる疑問を、私たちにとってなじみ深い漫画や物語等から収集したデータを基に、言語学の観点から丁寧に解き明かしてくれます。
    (ラーニング・アドバイザー/人社 IKARASHI)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1455106

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