外国語として出会う日本語 (もっと知りたい! 日本語(第II期))

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 59
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000068390

作品紹介・あらすじ

日本語学習者の疑問や誤りを手がかりに、日本人の頭の中にある「ことばのルール」をあぶり出す。私たちが日々、あやつっている複雑なルールの数々。

感想・レビュー・書評

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  • 「先生、どうですか」「銀行は9時で開きます」「カレーも作れます」「今日はネコ暑いですね」

    日本語教室の場で出てきた「誤り」「違和感」のある文と、それがなぜ発話されたのか、そこに隠された日本語と日本文化のの特徴は何なのか、いくつかの例文をあげて解説している。読みやすい。

    母語話者なら言語直感を持っていて無意識に刷り込まれている日本語も、学習者は明らかな間違いから文法誤り、語用的な間違いまでさまざまな発言をする。思わず笑ってしまうけれども、彼らにも学習者なりの文法がある。
    日本語教師は、こういうのを一つ一つなぜ違っているのか、この語をどのような場面で使えるのか考えながら授業をし、対話をしていて奥が深い(私も一時期やっていたのだけれど)。こういう思いもよらない「間違い」は、生きた会話の中でないと出てこないので、日本語学習者のミスを大量に集めた例文集があったら面白いと思いました。そしてそれを見ながらどうして彼は間違えたのか、その言葉は「正しく」はどういう意味を持ってどういう文脈で使っているのか、考えていきたい。

  • 目次:1 はじめに―「母語」ではなく「外国語」として、2 「どうして「食べって」と言わないの」―説明は簡単じゃない、3 「そうですねえー、北京です」―文法は日々作られる、4 「先生、どうですか」―日本語にもお国柄、5 「先生は若いし、……」―ことばの背後に潜む文化や価値観、6 「今日はネコ暑いですね」―「わかりにくさ」を生みだすもの、あとがき

  • 日本語教育学の先生の著書。日本語教育への入門書としても、特に予備知識が無くても読み物として楽しめる。外国人学習者の日本語の誤用の例を題材に、日本語のしくみを語るけど、それにとどまらず文化、価値観の違いまで語る。文法的な間違いがこんなところにまで影響する!と目から鱗。外国語は文法よりもコミュニケーション重視と言われるけど、文法をしっかり学ぶこともとても重要なんだって、再認識させられる一冊。良書です!

  • 母語の言語直観って本当にすごいと思います。

    p.31
    「文法性」と「容認可能性」
    文法性(grammaticality): 形として正しいかどうか。
    容認可能性(acceptability): 使い方として適切かどうか。

    p.41
    言いよどみ表現「そうですねえー」は「いま、考えている最中であることを示す」標識である。

    p.66
    人の間違いは、笑っている場合ではないのだ。
    語学は、受動的な営みではなく能動的な営みである。

    p.136
    日本語学習者用の英和辞書というものがあることを初めて知りました。

    p.143
    「メタ言語」「対象言語」を今まで逆に覚えていました。
    メタ言語: ことばを説明するためのことば。何語で説明するかによって変わる部分。
    対象言語: どの言語で説明しても変わらない部分。

    目次---------▼
    一 はじめに――「母語」ではなく「外国語」として
    「母語」ではなく「外国語」として/日本語学習者の質問や誤用を手がかりに

    二 「どうして「食べって」と言わないの」――説明は簡単じゃない
      1 動詞のグループの見分け方
        「くりこる」のテ形/動詞のグループ/テ形を作るルール/テ形を歌う/「活用」から「グループ」を考える/「グループ」から「活用」を考える
      2 「正しい文」と「正しくない文」
        「○」か「×」かを判断する/「×」の文を直す/「×」の理由を説明する/ネイティブだからできること/ネイティブでも簡単にはできないこと
      3 「正しいけど,正しくない文」
        「○」か「×」か「?」か/「○」がつけられない理由/「?」の理由/「文法性」と「容認可能性」

    三 「そうですねえー,北京です」――文法は日々作られる
      1 「そうですねえー,北京です」
        会話授業の面接で/「そうですねえー」/意見を述べるとき,事実を答えるとき/考えているサイン/「「です」があるから丁寧です」
      2 「よろしくお願いします」
        「皆さん,どうぞよろしくお願いします」/「では,よろしくお願いします」/「あと,よろしく」/いつでも,どこでも「よろしく」?
      3 「中国から来ました」
        「どこから来たの?」/教科書の第一課/出身地を言うときは……/「~から来ました」/アメリカから来たのはいつ?/モデル会話の背後にあるもの
      4 自分だけの文法

    四 「先生,どうですか」――日本語にもお国柄
      1 「先生,どうですか」
        大学のキャンパスで/¿Qué tal?
      2 「お金,ありますか」
        「日本人は,よくお金の話をします」/「習慣ですか,あいさつですか」/「他にありますか」/「ハヒフヘホ」は「アイウエオ」/常識が働かなくなる!?/「日本語では直接的な表現は好まれない」/「ハサンと思います」
      3 「一口,飲ませて」
        「そばにいさせてください」/「ククスを食べさせて」/「ちょっとティッシュ使わせて」
      4 「あっさりした和食」
        一つの文でまとめて名乗る/〈制限用法〉と〈非制限用法〉/天ぷらは「あっさりした和食」?/子どもは何人?
      5 母語によっても異なる日本語

    五 「先生は若いし,……」――ことばの背後に潜む文化や価値観
      1 「海外旅行といっても……」
        予想を裏切る/「「……」と言っても」/「広いといっても全員は泊まれません」/「海外旅行といっても……」/「ハワイ」といえば……/何が「ふつう」か
      2 「カレーも作れます!」
        尺度を含意する「も」/「計算」のものさし/「携帯電話」のものさし/「日本の食べ物」のものさし/「料理」のものさし/まずは「ものさし」の共有から
      3 「青山先生は若いし,……」
        「~し」でつなげられるのは?/「若い先生」は好きですか/「狭いアパート」は?
      4 ことばを教える,文化を教える

    六 「今日はネコ暑いですね」――「わかりにくさ」を生みだすもの
      1 「私の国にはこめかみがたくさんあります」
        templeを辞書で調べたら……/英和辞書いろいろ
      2 「今日はネコ暑いですね」
        「虫暑い」/「虫」のムシでなく「蒸し暑い」のムシ/「メタ言語」と「対象言語」/ハルモエナ国にて/「の」は働き者/「メタ言語」でことばの世界が広がる
      3 「母が怒って,ドアを蹴りました」
        「Aて,B.」/「母が怒って」vs.「母に怒られて」/受身文が本領を発揮するとき/文脈が主語の解釈を助ける
      4 「誤用」のコレクション

        あとがき

  • 外国人に日本語を教えているといろいろな発見がある。
    どこが違うの?どうして違うの?何気なく使っている日本語が難しく思える。
    でも、日本語を教えるって楽しい。

    「そうですね〜〜」「〜も」「〜とはいっても」
    て形の歌(辞書形より)
    連体修飾の制限用法、非制限用法
    「ネコ暑い」「イヌ暑い」に思わず大笑い。

  • 日本語学概論という授業でやったなあと思いながら楽しく読めた。

    特に連体修飾の制限用法と非制限用法が授業よりわかりやすかった!(笑)
    ネコ暑いとか、面白い誤用が読めたのも面白かった。

    日本人が日本語を客観的にとらえられるようになって、外国人とわかりあいやすくなるという第3の選択肢に共感。

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