風姿花伝(花伝書) (ワイド版岩波文庫 31)

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  • Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000070317

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  • 学生の頃以来の再読。
    自分の欲や慢心に飲み込まれずに、コツコツと日々精進することの大切さが書かれている。
    もちろん能力主義なのだけれど、その能力が花開くためには、努力の積み重ねを怠らぬことは必須。
    あらゆることを手本として邁進する謙虚さと集中力のみならず、観客や場所の空気も重んじ、察知し、自由自在に演ずることができるよう、鍛錬すべし。
    今も昔も変わらない人間の本質のようなものを感じた。

    下に注釈もあり、比較的読み易い古典だけれど、部分的にわかりにくいところがあったので、そういうところは他の現代語訳を参照し、確認した。

  • この本は、室町時代初期の大和猿楽結崎座の猿楽師である世阿弥が著した言うなれば後継者の育成のための心得をまとめたものである。
    文章自体が古文体裁なので理解できなかったが、たまたま某TV局の番組で取り上げられ、この本が生まれた背景も含めて解説があってやっと理解できた。
    この本を読んで思ったのは、この本は芸術のミーム(meme)、遺伝子のようなものだと思った。何をいいたいかというと、一人の力では創りだすことができない、何代にもわたって受け継がれるような芸術の場合、その後継者を育てるためのものである。教本とは違う。この本に書かれたことを実践してはじめて引き継がれ、さらにその芸術は進化していくということだと思う。
    この本のはじめのほうに三重戒、すなわち、好色・博奕・大酒の禁止が説かれている。また、七歳の子供に引き継がせるための要諦が書いてある。前者については、依存症のまさに典型であり、後者については子供を仕事中毒にするための手順が述べられている。私は個人的に芸術的な才能は依存症のそれが原動力になっており、自分の得意分野に集中すること自体が才能なのだと考えている。この本はそれをそのまま体現したものとなっていることがとても興味深いと思った。
    「初心忘るべからず」はこの本に出会うまで全く違う意味で捉えていた。芸術を進化させるためには困難は必ずあるものであり、それに対峙することは当たり前のことだと痛感した。また「慢心」について記しており、常に成長を目指さねばそれは退化と同じことというビジネス書でもよく取り上げられることはこの頃から言われていたのだと驚く。
    そういう意味で恒久性のある汎用性が高い書物だと思った。

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