迷路 上 (ワイド版岩波文庫 276)

  • 岩波書店 (2006年11月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (650ページ) / ISBN・EAN: 9784000072762

感想・レビュー・書評

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  • なかなか進まない。

  • 昭和文学の傑作、研ぎ澄まされた言葉の凛冽に快感が押し寄せる。

    「迷路」野上弥生子は戦争文学の傑作といわれますが、主人公ははたして菅野省三だったのでしょうか。

    その長い物語の幕切れは

    「とみはなにもいう暇がなかった。ふたりはやがて身に浴びる、同時に日本じゅうで浴びる爆弾の火をまえにして、はじめてわずかにまことの夫、妻として生きようとしていた。」

    昭和十九年の暮れ、能狂いの江島宗通と内縁の妻とみの会話でおわります。

    この戦争は負ける、日本という国は滅びる、日本という国はなくなる、と予感したとき日本民族のあかしとして「能」を後世に残そう。そう本気で考えていたのが宗通であり小説の作者弥生子さんであり夫の野上豊一郎さんであったのでしょう。

    作者は昭和11年から書き始め昭和31年に筆をおいた、と回顧されています。「迷路」はある意味で実話であり、よき夫婦のこころの軌跡であるのです。

    「『卒塔婆小町』をして古往今来どこの国、百歳の女をあれほど美しい女主人公にした国があるかい。耳にしたこともなければ、読んだこともない。」

    江島宗通はギリシャ悲劇を念頭において能楽師万三郎に向かってこう言い切ります。
    「能」は世界に比類のない芸術である、といっているのです。

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著者プロフィール

野上 弥生子(のがみ・やえこ):1885年、大分県生まれ。明治女学校卒。夏目漱石の紹介で「縁」を「ホトトギス」に発表して以来、明治・大正・昭和という三時代を通じ80年余りの作家活動をおこなう。写実主義に根差す作風で女性たちが直面する生きづらさを見つめ、家父長制の物語に抗うとともに、戦争に向かう時代のなかでも体制におもねることなく反戦思想を訴え続けた。1957年『迷路』で読売文学賞、64年『秀吉と利休』で女流文学賞、86年『森』で日本文学大賞、71年には文化勲章などさまざまな賞を受賞。他の著書に『欧米の旅』『山姥』『海神丸』などがある。文芸雑誌「青鞜」を発行していた青鞜社のメンバーでもあった。1985年逝去。

「2025年 『真知子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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