ドン・キホーテ (前篇3) (ワイド版岩波文庫 331)

  • 岩波書店 (2010年11月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784000073318

みんなの感想まとめ

物語は、愚かさや人間の本性、愛と宗教の葛藤を通じて、深い歴史的背景を描いています。新たなキャラクターの登場や、著者自身の捕虜時代のエピソードが織り交ぜられ、単なる物語を超えた教訓と皮肉が満載です。ドン...

感想・レビュー・書評

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  • ここではまた新たな人物が登場してきたけれど、セルバンテス本人のアルジェでの捕虜時代のはなしにもなったりと、この物語がスペインでは誰もが読み知っている教本として扱われているのはなるほど、おもしろおかしく(ときに苦しく)歴史(あるいは説教)を学ぶための物語でもあったからなのかな、とおもう。ひとのどうしようのない愚かさも。家族の愛と絆よりも、ときにひとは宗教を尊ぶ、ということも。
    ドラマチックな逸話ですっかり忘れていたドン・キホーテの再登場にうんざりしてしまったじぶんに笑ってしまうし、なんだかとてもやるせない。事実は小説よりも奇なりのこれまた先駆けみたい。書を捨てよ町へ出よう ってのも。これ、現代の社会問題への寓話にもおもえてきちゃう。すごい。なんて、だからそうじゃないんだってば、って皮肉で嗤われそうだけれど。
    あとがきのセルバンテスの生涯もとても興味深い。物語の旨みがよりいっそう濃く美味しくなってゆくようなここち。
    ときどきあらわれるだれかの創った(というていの)詩も、とても率直で美しい。風と光を孕んだカーテンみたいにさらさらぴかぴかコミカルに、たゆたう。そうして満たされて想う、はかなき夢のおわりをみにゆこう、と。



    「まあ、要するに、嫉妬が幅をきかしてるところじゃ美徳はいきられねえし、しみったれと寛大さは並びたたねえってことですよ。」

    「人はその本性が寛容であろうとも、貧しくてはその美徳を、つまり雅量を他人に対して示すことができぬし、また感謝の念も、ただ心の中で思っておるだけのものであれば、それは実践のない信仰と同じで死物に過ぎぬからでござる。」

    「ああ 人の望みのはかなきことよ!
    そは安らかな憩いを約束すれど
    いずれは影と煙と夢に消える!」

  • 火縄銃が登場する。本巻の刊行は1605年なので、日本では関ヶ原の頃か。そう考えると、ドン・キホーテの時代のイメージが幾分具体的になった気がする。

    さて、この第3巻でも、サイドストーリー的な物語が挿入される。世界史に名高いレパントの海戦後、虜囚となった男の、脱出の冒険譚が語られる。この《捕虜》の男はコンスタンティノープルで囚われ、その後アルジェに移送される。キリスト教への改宗を望む美しい娘ソライダが手引きし、船で地中海に逃れる。これだけで映画化出来そうな面白さである。結構な分量だが読ませる。( 第39章(81p)から第42章(185p)まで100p近くある。)

    一方、小説と出版かくあるべし論が突如始まる箇所もある(ロシア文学でありがちな、登場人物が長広舌をふるう形式での展開)。聖職者の男がドン・キホーテに向かって持論を説くのだ。
    曰く、国家は小説の出版に際し検閲すべきである。とりわけ騎士道物語はときに史実に反し、地理的条件や空間を跳躍し、1人で数万の大軍を蹴散らす…。などなど荒唐無稽にもほどがある。読者大衆に悪影響をもたらす害悪ありだ。国家が出版内容を検閲するべきだ、と論じるのだ。
    などなど、あれやこれやが詰め込まれ、かつそんな多彩な要素が自由に展開してゆく。それがドン・キホーテなのであった。

    「名優ぞろいの一座」という語が出てくる(259p)。ドン・キホーテの一行には、道中や旅籠で次々に新たな人物が加わる。それら人物がまた個性的で驚きの物語を背負って道行きしているツワモノ揃い。たいそうにぎやかな、ポカスカ殴り合ったりのスラップスティックコメディーな場面もしばしばである。

    さて、ふと思う。
    ドン・キホーテは、中世的なロマン主義の体現者のように思われた。一方、旅の道中でドン・キホーテに出会う司祭や判事は、彼の幻想をクールに客観視したり、あるいは狂人の面倒を見るのだ、と村に連れ帰ろうとする。かような対応を見ていると、判事や司祭はいわば「近代的な」あるいは「理念的な」思考の体現者のように感じる。17世紀初頭なので、近代というには早すぎるのだが、ドン・キホーテに向き合うとき、クールで論理的な思考が出来る周囲の者たちは、相対的に近代的に思われるのだった。
    常に騎士道物語の世界と共に生きるドン・キホーテは、中世的なロマンの象徴のようだ。しかも、作者セルバンテスは、そうした旧き、中世的なものを否定したり排斥せんとするのでなく、どこか暖かく描いている様子もある。愚かだが愛すべき部分もあるロマンとしての騎士道精神に対し、哀惜の念を持って含めて筆をとっているように感じた。

    いろいろな要素が次々に放り込まれ、展開を想像できない。後編(続編)は、これまた大きく様変わりする、という噂もある。如何なる収束を迎えるのか、楽しみである。

    ※(たしか)道中で出会った判事は、メキシコに赴任するところだった。この頃同地はスペイン領で「 ヌエバ・エスパーニャ」と呼ばれていたらしい。ペルーに向かう旅の途中だという者もいた。こうした世界史的な時代背景もまた興味深い。
    この小説、ドン・キホーテがスペイン国内を征く内国的な物語世界という読前イメージだった。だが、地中海周辺世界や南米植民地など、当時の“現代史”(世界史)の息遣いや風がフッと吹き込んできて、魅力的である。ローカルのみで完結していない。このこと意外であった。

  • 関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40136099

  • この巻面白かった!文学論は入ってるし、ドン・キホーテが巻き起こす騒動はアクションとし見れるし、バラエティーに富んでる!
    ドン・キホーテが回りに「バカ野郎!」って言われても、ぶれないのがやっぱり良いなぁ・・・!

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