エピジェネティクス入門 三毛猫の模様はどう決まるのか (岩波科学ライブラリー 101)
- 岩波書店 (2005年5月12日発売)
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感想 : 15件
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Amazon.co.jp ・本 (128ページ) / ISBN・EAN: 9784000074414
みんなの感想まとめ
エピジェネティクスの基礎をわかりやすく解説した本書は、遺伝子がどのように発現し、環境によってどのように影響を受けるのかを探求しています。読者は、遺伝子情報自体は変わらないものの、その発現の仕方が変化す...
感想・レビュー・書評
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エピジェネティクス
DNA配列の変化以外のメカニズムによって引き起こされる遺伝子活性の変化を対象とする研究です。
佐々木 裕之
(ささき ひろゆき、1956年9月17日 - )は、日本の遺伝学者、分子生物学者、医学者。九州大学名誉教授、九州大学特別主幹教授。専門はエピジェネティクス(遺伝子制御の長期記憶)。2015年紫綬褒章受章。日本におけるエピジェネティクス研究の草分けで、ゲノム刷り込み(ゲノムインプリンティング)現象をモデルとして、エピジェネティクスの機構の解明に貢献した。九大退職後、遺伝研究の集大成としてクラウドファンディングを募り、長年気になっていた三毛猫の毛の色の謎解きを行っていたが[1][2]、2025年に仕組みを解明した[3]。特定領域研究・領域代表者、CREST・研究代表者、特別推進研究・研究代表者、日本医療研究開発機構CREST/PRIME・研究開発総括、日本エピジェネティクス研究会・代表幹事、日本分子生物学会・副理事長、日本学術会議・連携会員・正会員、国際ヒトエピゲノムコンソーシアム・運営委員、情報・システム研究機構・経営協議会委員などを歴任。
ヒトゲノムの完全解読からちょうど一年経った二〇〇四年四月、東京農業大学の河野友宏教授らは、父親のいない単為発生マウスの作成に成功したと発表しました。単為発生とは、卵子が精子による受精を経ることなく個体を作ることをいい、ずっと哺乳類では不可能だと考えられてきたことです。河野教授らは二匹の雌マウスから採取した卵子に人工的な操作を加えることで、二つの母親由来ゲノムを持つ単為発生マウスを得ることに成功したのです。この研究は新聞やテレビによって、雄いらずのマウスとして報道されました。ちなみにこの雌マウスは「かぐや」と名づけられ、無事に成長して子どもを出産したそうです(図15)。 じつは、生物の世界で単為発生はそう珍しいことではありません。昆虫をはじめ、魚類、は虫類、そして鳥類でも、受精していない卵子から正常な個体が得られることが知られています。単為発生というのは、短期的に見れば簡単に子孫を作るよい方法のように思われますが、長期的に見れば母親と同じクローンを大量生産することになりますから、さまざまな環境に適応できるように遺伝的な多様性を保つことができる有性生殖より不利です。ですから、これらの生物もふつうは受精による生殖を行うのですが、特別な系統に属するものや、特殊な状況下(たとえば、交尾の相手が見つかりにくいなど)では単為発生によって子孫を残すのです。
エピジェネティクスがさまざまな生命現象と深く関わるということは、その仕組みに異常があると病気が起こる可能性を示しています。そして、そのとおり、近年になってエピジェネティックな病気がいろいろ見つかりました。そのうちのいくつかを紹介しましょう。 新規型DNAメチル化酵素遺伝子の一つ、DNMT3Bに突然変異が起こると、ICF症候群という稀な遺伝性の病気になります。ICFとは免疫不全(およびそれに伴う感染症)、セントロメア(動原体、染色体の一部で、細胞分裂に際して染色体の分配に関わる部分)の不安定性、特徴的な顔つきという三つの主症状の頭文字をとって名づけられたものです。この新規型DNAメチル化酵素遺伝子は20番染色体上にあり、この病気は常染色体劣性遺伝を呈します。患者のDNAを調べてみると、染色体のセントロメア近傍にある、サテライトDNAと呼ばれる繰り返し配列のメチル化が消失していました。正常な状態では、この部分は高度にメチル化されています。
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私が大学にいるときにはまだよくわかっていなかったと思われるエピジェネティクスの入門書、読了
ゲノムインプリンティングって言葉は聞き覚えがあったので、おそらく授業でやったのではないかな?と思う
父親若しくは母親由来であるという刷り込みが付けられるという話は面白い。
二対のうちどちらかだけ転写される遺伝子もあれば、細胞ごとにランダムに選ばれてどちらか転写される遺伝子もある
それをまた何かが決めているんだろうな
奥深い
単為生殖によるマウスの話も気になった
周りの状況によって留保されているのだとしたら、賢い方法だな
引用
生物は使える道具はなんでも利用して生きています。
しかし、一度その道具に依存したシステムを作って利用を始めると、今度はその道具なしには生きてはゆけなくなってしまう危険性があるのです。(中略)生物はゲノムを操る便利な力を手に入れた瞬間から、その力によって操られる運命をも背負ってしまったのです。
備忘録
X染色体上には生存に必要不可欠な遺伝子がたくさん乗っている(YYじゃ生きられない)
エピジェネティクスはメチル化
クローンは双生児より遠い -
「エピジェネティクス」とは知らない言葉でしたが、これは「エピ」+「ジェネティクス」に分解でき、「エピ」は「後」、「ジェネティクス」は「遺伝学」と言うことだそうです。説明聞いても「?」という感じですね。
生物の形態は遺伝子(DNA)で決まります。それは間違いありませんが、しかし、DNA だけですべて決まるものでもないのです。確かに一卵性双生児であってもそれぞれちょっとずつ違いますよね。DNA をどう使うのか、または、使わないのか、など、DNA 以外で決まる領域もたくさんあるのです。なるほど、、、
サブタイトルに「三毛猫の模様はどう決まるのか」とありますが、これもエピジェネティクスによって決まるとのこと。これは発生初期にランダムに決まり、それがそのまま維持される、と。なるほど。
後半はちょっと専門的になって付いていくのがしんどい感じがしましたが、でもなかなか面白かったです。 -
遺伝子情報自体は変化しないにも関わらず、遺伝子の発現の仕方が変化することをエピジェネティクスという。
本書は、このエピジェネティクスについて初学者用に解説しています。
【こんな人におすすめ】
エピジェネティクスの入門書が読みたい人 -
個性はどこできまるか?
1.遺伝子 ゲノムの多型
2.環境
3.エピジェネティクス:DNAの配列には変化を起こさないで、遺伝子の機能を調整する仕組み≒遺伝子の働きを抑える仕組み
個体の生涯という一世代限りの時間・空間における遺伝現象
アサガオのふいりや、三毛猫の毛並
女性のX染色体の片側の不活性
肝臓の細胞はずっと肝臓の細胞右細胞分裂を経ても安定に伝達される
遺伝
転写、翻訳
転写:遺伝子からメッセンジャーRNAを合成する反応 遺伝子が発現するかどうかを決める
遺伝子の周辺には組織特異的な転写因子、発生段階的な転写因子、環境の変化に対応するための転写因子などを結合する配列が散在している。
細胞の種類を特徴づける遺伝子群のオン・オフをきめるのがこれらの転写遺伝子群
ヒトゲノム 30億の文字が書かれた文章。
それらを効率よく整理するには、使用頻度によって、書類に色別のインデックスをつける。そして、内容、テーマ別に書類をしまう。
書類は
使用中(転写中)
時々使う(転写可能)
使わない(転写抑制)
に分類される。
このような収納と仕分けを行うのがエピゲンティクス
代表的なのは
・DNAのメチル化
・ヒストンの修飾
ヒストンは8量体にDNAが糸のように巻きついている(クロマチン)。
そのクロマチン癌転写可能、転写抑制はヒストンタンパク質の化学的修飾による。
それはヒストンのアセチル化酵素、脱アセチル化酵素により調整されている。
細胞の内在性の時計にしたがって、DNAのメチル化状態と分化能を変えることができる。言い換えると、神経幹細胞は予め細胞系譜の決定について、エピジェネティクスなプログラムを用意している。
DNAの塩基配列には変化を与えないで、化学就職という形で遺伝子に印をつけ、それをDNA複製と細胞分裂を経て次の細胞に伝えていく。
<哺乳類の単為発生>
哺乳類では難しいが、ネズミで成功「かぐや」と名付けられる
哺乳類の場合、精子、卵子が作られる過程で、それぞれのゲノムに雄型、雌型の徴付けが行われる。これはゲノム刷り込みと呼ばれている。(略)受精後の発生途中の細胞の中でもオス由来化、雌由来化を酷使、その記憶に従って働くか休むかを決める。
単為発生では、オス由来の遺伝子がないので、死んでしまう。
女性の卵巣で卵子が自然に単為発生を始める→奇形腫
精子由来のゲノムだけしか持たない受精卵が発生を始める(雄核発生)→胞状奇胎
哺乳類はなぜ、単為発生を妨げる刷り込みを発達させたのでしょうか。
理由は不明だが、単為はっせが可能な生物はすべて卵生であることから、刷り込みは胎盤の発生か、胎盤を通した母体からの栄養供給と関係しているのではないか、との説がある。
<遺伝的に同一なのに特徴に違いがみられる>
一卵性双生児のちがい
環境もだが、エピジェネティクスも可能性が高い
遺伝的に同一なのに特徴に違いがみられるのは、クローンも同様
三毛猫のクローンができたが、ドナーとは異なる毛色だった。
しかも、核移植のクローン生物の誕生率は5%以下。大部分のクローン胚で、エピジェネティクスのリプログラミングがうまくいかないせい、との説がある。発生直後に死亡するものも多く、それらで異常なDNAのメチル化が見つかることを報告している。
<ES細胞>
ES細胞も人工的な操作のあいだにエピジェネティクスな異常が起きていないか、目的とした細胞に分化しているかをモニターするのに、DNAメチル化をはじめとするエピジェネティクスな操作が必要になる可能性がある。
<獲得形質>
ルイセンコ 小麦の研究をもとに、獲得形質は遺伝的に固定できると唱える
植物では正しい。
獲得形質はエピゲネティクスが担う。
動物では難しいがまったくない訳ではない。それも食事の影響も受けつつ、エピゲネティクスが担う。
エピジェネティクスは膨大な情報を使いこなすための、巧みな情報整理技術
制限酵素が細菌自身のDNAを切断すると困るので、自己配列には目印をつけて切断を防ぐようになった。この目印がDNAメチル化。つまり、外敵撃破と自己防御の仕組みがセットになっている。これが哺乳類まで受け継がれている。
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実は父系で伝わる形質は少ない気がする。猫のがらについては、他の本を当たってみたい。
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エピジェネティクスというのは、ジェネティクスつまり遺伝子が
決まった後に、どう発生が決定されていくかというメカニズムを
解明することである。
遺伝子(ゲノム)はあらゆる細胞で全ての部分が読めるわけじゃなくて細胞の種類によってon,offが決まる。
むしろ、on,offによって細胞の種類が決まるといってもいいんだけど。
本を読んでみておもったのは「エピジェネティクス」と呼ばれるものでも,分子生物学の視点からみると,僕が勝手に思っていた「生後獲得的」のイメージとは随分ちがうな,ということだ.
生命のプロセスをゲノム、つまり分子ベースで見つめている。
そのon,offをつかさどる部分をやはり、分子レベルでみようとしている。そういう狭い領域のダイナミクスで捉えようとしている.
つまりスタンス的にはゲノムをど真ん中にすえる、分子生物学のスタンス。
分子生物学の視点から,もう少し,後天的なプロセスを捉えようとしている,,そんなかんじだった. -
勉強になりました。
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遺伝子が働くかどうかを調整する機能としてのエピジェネティクス。機能がおかしくなると病気にもなるし逆に治療にも使える。
遺伝子の世界はまだまだ奥が深い。 -
新しい進化の考え方でもあるエピジェネティクスについて、実例を挙げながら解説した入門書。
研究者らしい淡々とした、文章に好感が持てる。
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