クマムシ?!: 小さな怪物 (岩波科学ライブラリー 122)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000074629

作品紹介・あらすじ

乾燥すると樽型に変身!真空、高温、高圧、放射線にも耐え、レンジでチンしても平気。120年間水なしでも生き続ける生物がいる-?それは体長1mm以下の微小な生物・クマムシ。不死身伝説の真偽、18世紀からの研究の歴史、試行錯誤で飼育する笑いと苦労の物語など、生物研究のオモシロさ満載。身近なクマムシの観察方法や、ファン必見の図版も多数掲載。

感想・レビュー・書評

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  • ぼぉくぅはぁ くぅまぁむぅしぃ だぁよぉ。みぃんなぁ よぉろぉしぃくぅねぇぇぇ(*45回転のレコードを33回転で再生するイメージでどうぞ)

    ↑レコードのたとえが若い人に通じるのかどうかさっぱりわからないのですが(^^;)。

    生きものシリーズです。
    例によってちょっと変わった生きものです。
    といっても、実は身近にたくさんいるそうなのですが。

    その名はクマムシ。緩歩動物(かんぽどうぶつ)門に属します。
    足は8本。体長1mm未満。名は体を表すの言葉通り、ゆっくりゆっくり動きます。熊を思わせる、愛嬌のある形態です。
    この生きものが注目されたのは、乾燥条件下で「樽」型となり、この樽が真空・高温・高圧・放射線・電子レンジ処理の後でも、「蘇生」することからです。
    ちょっとした変わり者で、緩歩動物門にはこのクマムシの仲間しかいません。ちなみにヒトは脊索動物門、この中には、無脊椎動物のホヤ等も、そして魚類・鳥類・爬虫類・哺乳類などすべて引っくるめた脊椎動物も入ってきます。比較してみると、クマムシが大変「変わっている」ことがイメージできるかと思います。

    本書では、樽型(クリプトビオシス)に関することを含めて、あまり世間に知られていないクマムシの生態を紹介しています。
    寿命は平均して数十日程度。一部で取り沙汰されたほど、樽型でも「不死身」というほどではないようです。
    脱皮動物で、産卵時は脱皮と産卵が一緒になる点が興味深い。脱皮しながら卵を産みますので、一時期、殻の中に母と卵が同居する形になります。
    もう1つ興味深かったのは、クマムシの「移動」。屋上など、地上から離れたところにコケが生えていることがありますが、こんなところにもクマムシがいるのだとか。コケは胞子で飛んでくるのでしょうが、クマムシは「樽」で飛んでくるのか!? 空を行き交うクマムシの「樽」。なかなか楽しい光景です。

    全遺伝子を解明するクマムシ・ゲノム・プロジェクトが始動する動きもあるそうです。主に樽型(クリプトビオシス)の機構を探ることが目的とされているようですが、脱皮生物に共通している部分はどこかの解明につながる可能性もあるそうで、個人的には後者の方がおもしろそうだなと思います。

    興味深いながらもまだまだわからないことが多いクマムシ。
    これは私見ですが、1つにはその存在が微妙に小さいこと、1つには人にとって「毒にも薬にもならない」ことが原因なのではないかと思います。昆虫のように見つけやすく観察しやすければ子ども達も飛びつくでしょうが、体長1mm未満では、さほど高い倍率は必要としないとはいえ、やはり顕微鏡サイズ。
    コケの中に多種のクマムシが潜んでいるらしいですが、普段、まったく気付きません。
    そしてこれが有益物質なんかを分泌して人類の役に立つかといえば、そんなことはない。かといって病原性があって駆除が必要かといえばそんなこともない。
    何となくそこにいて、のんびりゆったりと生きてきた、それがクマムシなのでしょう。

    著者は元々、昆虫の精子形成の研究者だった人ですが、クマムシの魅力に取り憑かれてしまったそうです。
    クマムシは何を食べるのか、なんてところから始まる、手作り感溢れる研究記録も楽しい本です。
    古今の研究者によるクマムシの挿絵も併せ、クマムシ研究者の「愛」がふんだんに感じられ、微笑ましく楽しい1冊です。



    *参考URL
    ・NHK 爆問学問・クマムシの回のまとめ
    http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20100803.html

    ・クマムシさん
    http://www.kumamushisan.net/about.html
     本書の著者とは違う人ですが、クマムシ研究者が作ったゆるキャラ(!)です。グッズの販売もされていて、収益は研究費に充てられている、のかな・・・?

    • usalexさん
      やっぱりきましたね〜、ぽんきちさん!
      やっぱりきましたね〜、ぽんきちさん!
      2013/02/21
    • ぽんきちさん
      あ、お見通しでしたか(^^;)。

      世の中、いろんな生きものがいるものです。
      あ、お見通しでしたか(^^;)。

      世の中、いろんな生きものがいるものです。
      2013/02/21
  • クマムシとは、ミクロの世界に住む8脚の足でのそのそと歩く、緩歩動物。
    その姿が熊みたいなので、クマムシといわれています。
    カブトムシとか、カメムシとか単体の生き物の名称ではなく、1000種類ほどいるものの総称をクマムシと呼ぶのです。クマムシがいかにして最強生命体なのか、その所以を紹介しましょう。

    1 温度で最強!
    クマムシさんのすごいところの1つ目は温度への耐性。人間の細胞は55度あたりませ耐性がありますが、クマムシはなんと151度の高温でも大丈夫。
    さらに低いほうでいうと、 絶対零度(0.0075ケルビン)までほぼ耐えられるのです。ケルビンよかよくわからないのが出てきましたが、これ以上冷たくならないという限界で、−273.15 ℃くらいだということです。ただし、これは乾燥状態に限り。151度の高温は平気ですが、熱湯では死んでしまいます。

    2 乾燥で最強!
    クマムシさん、通常はその85%が水分で出来ています。しかし、この水分を0.05%まで減らし、乾眠状態に入ることで、水分のない乾燥状態でも生きることができるのです。しかも、寿命はそこまで長くなく、通常1ヶ月~1年ほどで死んでしまうクマムシですが、この乾眠状態になると9年間も生きられるのです。

    3 圧力で最強!
    宇宙空間は空気がありません。クマムシはそんな真空状態でも生きることができるので、宇宙空間でも10日間ほど生きられることが確認されています。さらに、75,000気圧にまで耐えられるので、深海もへっちゃらです!

    4 放射線で最強!
    紫外線やエックス線など、人間の致死量は500レントゲンですが、クマムシの場合は57万レントゲンにも耐えることができます。
    地球には数百万の生き物がいますが、このように環境が変わっても適応できる生き物はクマムシくらい。
    こういった苛酷環境におかれても、乾眠状態、仮死状態、塩眠状態、冬眠状態になり生き延び、そして元の環境になると、そのまま何事もなく動き出すのです。まさに最強の名にふさわしい生物。
    NASAで研究を進める日本人の堀川大樹さんなどは、その貴重な特性を何かに生かすことが出来ないかと、日夜研究を進めてくださっています。
    いつかこのクマムシさんのおかげで、人類に、地球に、劇的な変化が訪れたりするかも・・・考えるだけで夢があります。

    名前:クマムシ
    英語:water bears
    体長:50マイクロメートル~1.7mm
    緩歩動物門
    (以上、珍獣図鑑より)

    クマムシがかわいいというのなら、ノミやダニもかわいいのかな?
    本書の掲載写真をみても、作者が言うほど姿かたちがかわいいとは思えないのだが・・
    でも、最強の生き物、クマムシを飼育するほどラブしたのが鈴木先生です。
    とにかく、一度「樽」形状になると、最強の生き物であることは確かです。
    地球が人間にとってどんどん住みにくい環境になってきていますが、逆にクマムシにとっては邪魔な人間がいなくなるのでラッキーなのかも・・

    最後に、生き残るのはクマムシかも。

  • クマムシって聞いたことがありますか?私は子供の学校で科学部の生徒が発表しているので知りました。乾燥した環境にも耐え、真空中、放射線、電子レンジでチンしても生き延びるという伝説(?)の怪物です。

    実際は大きさ0.2mm程度のシャープペンの芯の先よりも小さな生き物。雨どいや、建物に付着した苔、淡水ばかりではなく、海にも生息している小さな生き物です。乾燥した状態では「乾眠」という体の水分を極力落とし、体内に特殊な糖質を蓄積して、生命としての代謝をおとして活動休止状態(クリプトピオシス)に入ります。

    極め詰めは水をかけると元の状態に戻り活動を開始します。小学校のころ、子供たちの間で人気のあった、シーモンキーも同じ乾眠の状態であったとは。

    本書はクマムシについて解説した初めての一般書でしょうか。周辺の身近なところに、いつもは人の目に触れないが、こんな不思議な生き物たちが生活しているのを知るとわくわくします。望遠鏡を覗いて初めて土星の輪を見たり、顕微鏡で透明な体に緑を蓄えた微生物に驚きながら科学する気持ちが育っていくのだと思います。

    さて、不死身のクマムシ都市伝説は本当か?条件によっては強いようですが、やはり生物であり限界はあるようです。

  • 虫全般苦手な私は、今までだったら絶対買わない本であるが、尊敬する成毛氏の運営するHONZサイトでもおススめだったので、えいやっと購入(薄いので割と楽に読めるかも…と期待しつつ)。著者によると「クマムシ」はかわいいらしい。 う~ん。確かにアップの顔はマンガのような顔。
    ただ、モゾモゾ動くと想像するだけでゾクゾクしてしまう。写真でよかった。 内容は、あっという間に読めるほど、おもしろかった。

  • スーパー生物として名高いクマムシだが、ネットで尾ひれがついてエスカレートした評判とはうらはらに、本人はわりと実直に、一生懸命生きているらしい。たぶん何の役にも立たない生物であり、研究だけれど、役に立つものだけでできている世界はさぞかし住みにくいだろう。ぼくも顕微鏡でクマムシを探してみようかな。

  • 2012 2/5読了。つくば市立図書館で借りた。
    ネットでもかなりの極限環境に耐える生き物として名高いクマムシについての一般向けの本、ということで以前から読みたかったもの。
    2年ぶりくらいに市の図書館に行ったらあったので借りてきた。

    クマムシといえば高温/低温に耐える、感想に強い、放射線にも耐える・・・と強い方面の話題に興味がいきそうなもので、実際本書の後半はそのあたりの「伝説」の検証が描かれている。かなりの部分は事実だけど一部は本当に「伝説」であることも明かされる。
    しかしそれ以上に多くを割いているのは、筆者がクマムシに興味を持って、大学近所のコケの中にいるのを発見して、観察し飼育に至る前半の方。
    なにを食べるのかもよくわからない生き物を飼育しながら観察・実験する生物学者の苦労と情熱が描かれつつ、可愛いクマムシの姿にほのぼのもする。最初の口絵とか超可愛い。
    岩波科学ライブラリーはこういういい本があるから好きだ。

  • いつの日にか、ガキと夏休みの自由研究のテーマにしたい。

  • 博物学的な生物学はあまり好みではないので分類についての記述が多く読み進められなかった
    また、著者の個人的な記述とクマムシについての一般的な記述が混在しており、後者のみをもっと体系立てて欲しかった

  • 1540
    鈴木忠
    1960年愛知県生まれ。名古屋大学では昆虫変態に関する生理・生化学を学び、1988年同大学院を単位取得退学後、浜松医科大学で糖脂質に関する研究に従事。1991年より慶應義塾大学医学部生物学教室で昆虫の精子形成を研究し、1998年に金沢大学大学院自然科学研究科より学位取得。2000年、クマムシの世界にはまる。2005年より1年間、コペンハーゲン大学動物学博物館で海産クマムシの卵形成を研究

    クマムシ?!-小さな怪物 (岩波科学ライブラリー)
    by 鈴木 忠
    小さいムシである。ただし昆虫ではないし、節足動物でもない。顕微鏡を使って観察しなければ、ほんの小さなケシ粒にしか見えない。

    顕微鏡でのぞく、と聞くと微小なプランクトンを連想する方もあるかもしれないが、クマムシには四対の 肢 があってノコノコと歩く。その肢には昆虫のような関節はない。全体の雰囲気は、肢の数は別として、クマのような動物が歩いているように見える。

    その脊索動物門と同じ格付けの地位に置かれているのが緩歩動物門で、これはクマムシ類だけで構成される。

    クマムシだけで独立の門がたてられるのはなぜかといえば、それだけ他の動物とはからだの構造が異なっているからである。

     「どこにでもいる」というと少しおおげさだが、そう言われることもある。  わたしたちの身近では、そこらへんの塀などにひっついて干からびたコケの中にいる。山を歩けば木々や岩が苔むしていて、もちろんそういうコケの中にもいるし、木々の間の足下の土壌中にも、池の中にもいる。ヒマラヤ山脈からも南極大陸からも見つかっている。海に行けば、砂浜の砂の間にもいるし、フジツボの中に隠れているかもしれない。そして深海底の堆積物の中にもいる。

     さて、わたしはクマムシを見始めるまでは昆虫の精子形成の研究をしていたから、研究対象をクマムシに替えてからも、機会があれば精子形成を見たいものだと思っていた。ところが、すでにおわかりのように、わたしの飼っているオニクマムシは全員が産卵した。つまりメスばかりで単為生殖をしていたのである。  クマムシは基本的に両性生殖することになっているが、コケに棲むものではメスばかりで単為生殖するものがかなり多いと考えられている。

    このクマムシは、アオノリなどの 海藻 の中に見つかると書かれることもあるが、実際のおもな 住処 はフジツボだと考えられている。クリステンセンとハラス(一九八〇年) によれば、ひとつのフジツボに五七三匹ものクマムシが見つかったこともある。

  • 読みながらうちの駐車場や塀のコケのなかにもクマムシがいるのかも、さらに樽状になったやつが風に吹かれて花粉みたいに鼻に入ってきてるのかもしれないと思った
    宇宙空間に投げ出されても生きてるやつがいるのすごすぎる

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著者プロフィール

白百合女子大学人間総合学部教授

「2021年 『チャイルド・アートの発達心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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