猿橋勝子という生き方 (岩波科学ライブラリー)

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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (123ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000074971

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  • 猿橋勝子は、日本の科学者。日本の女性科学者のパイオニアとして地球科学の分野で活躍し、「猿橋賞」という日本の女性科学者を表彰する賞を創設した。

    失礼ながらお名前をまったく存じ上げなかったのだが、ある日Googleで検索しようとページを開くと、Doodle部分に何やら海をバックに知らない女性の顔が。
    調べてみると、「猿橋勝子」という文字。

    そこでさらに検索してみると、日本の女性科学者の先駆者ということだった。
    理系には興味も知識もないけれど、なぜか気になったのでこの本を読むことにしてみた。

    この本の著者は猿橋勝子さん本人ではなく、米沢富美子さんというこれまた科学者(しかも調べてみると現在の女性科学者の中でも一線を走られている方のよう)で、いわゆる伝記にあたる。

    「第五福竜丸事件」からこの本は始まる。
    アメリカがビキニ環礁で行った水爆実験により、日本の第五福竜丸の船員たちがいわゆる「死の灰」を浴びた事件である。

    猿橋さんはこの事件に関し、海洋放射能汚染の調査に加わり、その調査方法の精密さをもって海洋汚染の実態を証明した。これはその後の水爆実験の防止へとつながっていき、猿橋さん本人もその活動に関わっていく。

    続いて、猿橋さんの幼少期からの歩みが紹介される。
    とても聡明だったようで、当初は医者を目指していた。女性の入ることができる女子医専に合格するものの、面接官だった創立者の吉岡弥生の一言にショックを受け、進路を帝国女子理学専門学校へ進路変更する。これが、科学者 猿橋勝子が誕生するターニングポイントになった。

    今の気象研究所に勤務し、その中で第五福竜丸事件に関わることになる。
    アメリカへ行き自分の調査方法の正確さを「道場破り」(著者の言葉)のかたちで証明してみせた。

    そして、最後に後進育成に取り組む猿橋さんの功績についての紹介。
    「女性科学者に明るい未来をの会」の設立、女性科学者への賞である「猿橋賞」の創設などなど。

    ---------------------------------------------

    第五福竜丸事件当時、私はもちろん生まれておらず、学校でもこの事件について社会科で取り扱いはあったものの、「現代史」に含まれることから時間がなく、正直なところあまり知識がなかった。

    しかしながら、この本に書かれた船員たちの状況を見るだけでも、本当に恐ろしかった。「灰」を浴びただけなのに、次々起こる体の異変、そして最終的には命を落とす人が出てくる。
    (それにしても著者の方は本当に頭がいいのだと思う。そんなにページを割かなくとも当時の状況が鮮明に浮き上がるように説明されている。)

    猿橋さんは核廃絶について呼びかけていたそうで、それはこの事件が起こった時代に生きていた一人の人間として、そして科学者として調査をしていく上で分かったことから、その脅威がどのようなものかを実感していたからではないかと思った。

    アメリカへの「道場破り」エピソード、そして以後の活躍もすごいなと思わせられるが、それも自慢のように聞こえないのは、猿橋さんが言っていたという

    「男性に負けまいとする故の頑張りではなく、一生懸命勉強すると、初めは幾重ものベールの向こうにあった複雑な自然現象が一枚ずつベールをはがし、からみあっていた自然のしくみが、次第に解き明かされてくる。研究者としての、何ものにも替え難い大きなよろこびがここにある。」

    というものが彼女の研究の根底にあったからではないかと思う。
    根っからの研究者だったのだろう。

    更に私の一番心に刺さった言葉が、猿橋さんが恩師である三宅泰雄さんから言われたという2つの言葉だった。

    1つ目は、「実績を残せ」
    自分のほうから差別を是正しろ!と言うのではなく、それを相手が撤回せざるを得ないくらい実績を残す。
    (ただ、これについては声高に主張することも私は大事だと思う)

    2つ目は、「哲学者であれ」
    科学は万能ではなく諸刃の剣である。科学者こそその功罪を忘れずに語り継いでいかなければならない。

    特に2つ目の言葉については、昨今科学の発展がとどまるところを知らない中、必要な考えだと思う。「倫理」にもあたるのかな。
    そのまっただ中で研究していると、気づかなかったり、忘れてしまったり、あるいは好奇心や功名心が先にたってしまうこともあるのだろう。それを諌める言葉だ。

    私はまったく科学分野に疎い人間で、本書の中でも結果の抽出方法を説明されるようなところでは「???」となってしまい読み飛ばしてしまったので、すべてを読み取れたわけではないと思う。

    けれども、全然門外漢の私でも猿橋勝子さんの生き方をしり、読み終わったあとに少し世界が広がり、私ももうちょっと頑張ってみようという気になった。やはり、パワフルに生きている人の話を読むと、エネルギーをもらえるようだ。

    最後に、著者の米沢富美子さんという方についても興味が湧いてきた。
    何冊か本を出されていて、これまたエネルギッシュな方のようなので、読んでみようと思っている。

  • 進路支援図書「はたらく人びと」
    2009/9/10更新 024号 紹介図書
    http://www.nvlu.ac.jp/library/workers/workers-024.html/

  • 三葛館一般 289.1||YO

    日本の女性科学者の先駆けである地球化学者、猿橋勝子氏の評伝です。
    まっすぐに自分の信念を貫き、研究に打ち込む姿に心を動かされます。

    和医大OPAC →http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=60818

  • 猿橋勝子さんの初の評伝です。性別にかかわらず科学者、研究者、さらには学ぶ者のお手本とも言える方だと感じました。

    放射性物質の測定方法をめぐってアメリカの著名な研究者と堂々と勝負し、勝利したエピソードだけでなく、自分に足りない知識があると判断すれば徹底的に学び身につける姿には感銘を受けます。
    また、第五福竜丸の事件や当時の水爆実験の状況など分かりやすく書かれており、日本人なら一度は読んでおくべき本だと思います。

    【福岡教育大学】 ペンネーム: 粉もん研究会会員

  • こんな女性の科学者がいらしたとは知らなかった!スゴイ方です。

  • [ 内容 ]
    戦前戦後の女性が理系の道を選ぶことも困難な時代に、海水の放射能汚染や炭酸物質の研究で世界的な業績をあげた地球化学者・猿橋勝子。
    さらに後進を育てようと女性科学者を顕彰する「猿橋賞」を創設、女性科学者を励まし続けた。
    科学者として人間として自らの哲学とそれを貫く強い意志をもって、まっすぐに生きた猿橋勝子の軌跡を描きだす。

    [ 目次 ]
    1 誇り高き科学者
    2 海水の放射能汚染
    3 道場破り・現代版
    4 科学者への道
    5 科学者として生きる
    6 女性科学者としての仕事
    7 初心を貫いた人生

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 教員からの推薦図書。
    地球化学者・猿橋勝子(1920-2007)は、まだ女性が理系の学問を追究する道が開けていない時代に生き、世界的な業績をあげました。また、後進の女性科学者を支えるために「猿橋賞」を創設し、優れた女性科学者に賞を与えています。科学者として、一人の女性として、ひたむきに生き抜いた猿橋勝子の人生に、あなたも触れてみませんか?

  • 2階人間探究 : 289.1/YON : 3410157862

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