パレスチナはどうなるのか (岩波ブックレット 713)

  • 岩波書店 (2007年11月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (72ページ) / ISBN・EAN: 9784000094139

作品紹介・あらすじ

2006年1月の評議会委員選挙でハマスが勝利した。以来、それを認めない自治政府(・欧米)とハマスの対立が激化、本年6月にはハマスがガザを武力制圧するにいたった。一体、何が起きているのか。一向に改善しない占領下の暮らし、私腹を肥やすだけの自治政府への苛立ちなど、パレスチナの現状を詳細に解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 知之介さんのレビューをきっかけに、本書を、そして「岩波ブックレット」という存在を知った。
    調べてみると、社会問題や国際情勢を扱う小冊子が数多く刊行されており、その中には「ガザ」や「パレスチナ」をテーマにしたものもいくつかあるという。
    図書館で探してみると、確かに70ページほどの薄い冊子が並んでいた。
    手に取ると、文庫より軽く、雑誌よりも内容が濃い。
    これなら、日常の合間に少しずつ読み進められそうだと思い、目についたガザ関連の数冊を借りてきた。

    読むならば、できるだけ時系列で追ったほうが理解しやすいだろう。
    そう考えて、まずは本書『パレスチナはどうなるのか』から手をつけた。刊行は2007年。
    つまり、今から約20年前の視点で書かれた「現在進行形の危機」の記録である。
    だが読み進めるほどに、20年前の問題がそのまま現在につながっていることに気づかされる。
    むしろ、当時の“兆し”が今の惨状を予告していたかのようで、胸が締めつけられる思いがした。

    (´ρ`*)コホン
    では、本書の内容を含めた感想を。

    ―20年前のガザから、いまの世界を見つめ直す

    本書が扱うのは、2006年のパレスチナ評議会選挙でハマスが勝利し、翌年にはガザを武力制圧してファタハと分裂した時期である。
    ニュースで「内戦」「分裂」といった言葉だけを聞くと、単なる権力闘争のように見えてしまう。
    しかし本書は、その背後にある長い占領の歴史、国際社会の圧力、自治政府の腐敗、住民の疲弊と絶望を丁寧に掘り起こしていく。

    特に印象に残ったのは、ガザの人々が置かれていた生活状況だ。
    封鎖によって物資が入らず、医療も教育も崩壊寸前。
    失業率は高く、若者たちは未来を描けない。
    政治的な対立は、こうした日常の苦しみの延長線上にある。
    つまり、ハマスとファタハの衝突は「突然起きた内紛」ではなく、長年積み重なった痛みが爆発した結果なのだと理解できた。

    また、イスラエル軍の元兵士の証言や、現地で活動する人権団体の声も収録されており、単なる政治分析ではなく「人間の視点」からパレスチナを見つめ直す構成になっている。
    占領政策がどのように人々の生活を破壊し、心を追い詰めていくのか。
    数字や地図では見えない“痛みの質感”が伝わってくる。

    読みながら、何度もページを閉じて深呼吸した。
    20年前のガザの状況は、今のガザと重なりすぎる。
    封鎖、空爆、分断、国際社会の沈黙。
    歴史は繰り返すという言葉があるが、パレスチナに関しては「繰り返されている」のではなく、「終わっていない」のだと痛感した。

    本書の最後で、編者の土井敏邦氏は「パレスチナ人同士が殺し合う姿を最も見たくなかった」と語る。
    しかしその悲劇は、占領、貧困、失望、国際政治の思惑が複雑に絡み合った結果であり、誰か一人の責任に帰すことはできない。
    だからこそ、外側にいる私たちは「単純化しないこと」「知り続けること」が求められているのだと思う。

    今回、岩波ブックレットという小さな冊子を手に取ったことで、私は“知るための入口”をひとつ見つけた気がする。
    70ページという薄さは、決して軽さではない。
    むしろ、必要な情報が凝縮されており、読者に「次へ進むための視点」を与えてくれる。
    時系列で追うことで、ガザの歴史が一本の線としてつながり、ニュースの断片が立体的に見えてくる。

    20年前の本を読みながら、私は「いま」を考えていた。
    そして「これから」も考え続けたいと思った。

    パレスチナ問題は、遠い国の出来事ではない。
    私たちが生きる世界の不条理が、最も過酷な形で現れている場所のひとつだ。

    解決の糸口は、まだ見えない。
    しかし、知ることをやめてしまえば、世界はますます暗くなる。

    だから私は、少しずつでも学び続けたい。
    本書は、その決意を新たにしてくれる一冊だった。



    <あらすじ>
    岩波ブックレット『パレスチナはどうなるのか』(土井敏邦編)は、2006〜2007年にかけてパレスチナ社会を揺るがした〈ファタハとハマスの対立・ガザ武力制圧・占領下の生活悪化〉を軸に、混迷の背景と人々の現実を多角的に解説する入門書です。

    2006年1月、パレスチナ評議会選挙でイスラム組織ハマスが勝利した。この選挙結果は、長年パレスチナ自治政府を主導してきたファタハの腐敗や無能への不満が噴出した結果でもあった。しかし欧米諸国やイスラエルはハマス政権を認めず、資金援助を停止。自治政府は麻痺状態に陥り、パレスチナ社会は急速に不安定化していく。

    その後、ファタハとハマスの対立は激化し、2007年6月にはついにハマスがガザ地区を武力制圧。パレスチナは「ガザを支配するハマス」と「西岸を統治するファタハ」という二重権力状態に陥った。土井敏邦は、この“内紛”が単なる権力闘争ではなく、長年の占領政策、経済封鎖、国際社会の圧力、そして住民の疲弊が積み重なった結果であると指摘する。

    ガザではイスラエルによる厳しい封鎖が続き、食料・医薬品・燃料など生活必需品が慢性的に不足。住民は日々の生活すらままならず、失業率は極端に高まり、若者たちは未来を描けない状況に追い込まれている。一方、西岸地区ではイスラエル軍の占領が続き、検問所や分離壁によって移動は制限され、経済活動も停滞。住民は「占領」と「内部分裂」という二重の圧力に苦しんでいる。

    本書の特徴は、研究者・ジャーナリスト・NGO・現地の人権活動家など、多様な立場の専門家が現状を語る点にある。
    臼杵陽は、パレスチナ内部の政治構造と歴史的背景を整理し、なぜハマスが支持を得たのかを分析する。川上泰徳や樋口直樹は、現地取材を通して見えてきた「占領下の暮らしの実態」や「自治政府への失望」を描き、国際社会の対応の問題点を指摘する。NGO関係者は、ガザの子どもたちの栄養失調や医療崩壊の深刻さを報告し、封鎖が人道危機を生み出している現実を伝える。

    また、パレスチナ人権センター代表ラジ・スラーニは、占領政策がもたらす構造的暴力と法的問題を鋭く批判し、国際社会が沈黙してはならないと訴える。ガザの現場で活動するハナン・エルクルドゥは、封鎖下で子どもたちが直面する飢餓やトラウマを語り、政治的対立の背後にある「人間の痛み」を浮かび上がらせる。

    編者の土井敏邦は「パレスチナ人同士が殺し合う姿を最も見たくなかった」と述べる。しかし、その悲劇は突然起きたのではなく、長年の占領、国際社会の無策、自治政府の腐敗、そして住民の絶望が積み重なった結果だと強調する。本書は、パレスチナの未来を考えるためには、単なる政治分析ではなく、占領下で生きる人々の声に耳を傾ける必要があると訴える。

    総じて本書は、
    「パレスチナはなぜ分裂したのか」
    「占領下の生活はどう悪化しているのか」
    「国際社会は何をしてきたのか、何をしてこなかったのか」
    を、現地の証言と専門家の分析を通して立体的に描き出す入門書である。



    本の概要
    2006年1月の評議会委員選挙でハマスが勝利した。以来、それを認めない自治政府(・欧米)とハマスの対立が激化、本年6月にはハマスがガザを武力制圧するにいたった。一体、何が起きているのか。一向に改善しない占領下の暮らし、私腹を肥やすだけの自治政府への苛立ちなど、パレスチナの現状を詳細に解説する。

    著者について
    土井敏邦(どい としくに)
    パレスチナ問題や福島、慰安婦問題など“人権と社会の痛み”を長年取材してきた日本を代表するドキュメンタリー・ジャーナリストです。最新作では在日ミャンマー人の自由を追い、現在も精力的に発信を続けています。

    プロフィール
    - 1953年生まれ、佐賀県出身
    - フリージャーナリスト/映画監督
    - 1980年代から パレスチナ・イスラエル問題を継続取材(通算5年以上の現地滞在)
    - 福島原発事故後の被災地、慰安婦問題など「声なき人々」の証言を記録
    - 代表作は『沈黙を破る』『ガザに生きる』『福島は語る』など

    主な受賞歴
    - 芸術選奨 文部科学大臣賞(映画部門)
    - 石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞(『沈黙を破る』)
    - 大同生命地域研究特別賞(『ガザに生きる』)

    代表的なテーマと姿勢

    1. パレスチナ占領地の現実
    - 1985年の初訪問以来、占領下で生きる人々の声を可視化
    - イスラエル軍元兵士の証言を集めた『沈黙を破る』は国際的評価

    2. 福島の「見えない痛み」
    - 『福島は語る』シリーズでは、被災者の心の傷と沈黙を丁寧に記録

    3. 社会の周縁に追いやられた人々
    - 慰安婦問題、在日ミャンマー人、難民など
    - 「加害と向き合う」視点を重視

    最近の活動
    - 『在日ミャンマー人 ―わたしたちの自由―』(2026公開予定)
    - Yahoo!ニュースでの連載「新・ガザからの報告」では、現地の最新情勢を継続発信

    • 知之介さん
      パレスチナ関連は今のところ8冊ありますからね。
      岩波書店は左派ではないけどリベラルだ。「世界」は論壇誌。私は詩集は「岩波文庫」。知識は「岩波...
      パレスチナ関連は今のところ8冊ありますからね。
      岩波書店は左派ではないけどリベラルだ。「世界」は論壇誌。私は詩集は「岩波文庫」。知識は「岩波ブックレット」。もちろん「岩波新書」は学生時代からの鉄板です。
      2026/02/02
    • ヒボさん
      知之介さん♪
      いつもありがとうございます。
      ブックレットは目についた5冊をお借りしてきましたが、他にも3冊あるんですね。
      昔、誰かに言われま...
      知之介さん♪
      いつもありがとうございます。
      ブックレットは目についた5冊をお借りしてきましたが、他にも3冊あるんですね。
      昔、誰かに言われました。
      「本は岩波だけ読めばいい」
      少しずつ読み進めたいと思います。
      2026/02/03
  • パレスチナはどうなるのか
      岩波ブックレット 2007年11月
      土井敏邦(フリージャーナリスト)

     2007年ガザ地区でのハマスとファタハの抗争の結果、ハマスがガザを制圧した。
    そこまでの歴史がわかりやすく書かれている。

    ⚪︎1956年、ファタハ(パレスチナ民族解放運動)はPLO(パレスチナ解放機構)の最大の組織でアラファトらが創設。第3次中東戦争でのアラブ諸国の大敗を受けて生まれた。
    ⚪︎イスラエルを解体して、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒が平等に生きる民主的なパレスチナ国家建設をめざした。
    ⚪︎左右の思想の枠を超えた組織。
    ⚪︎1969年アラファトが実権を握り、ヨルダンを拠点に勢力を伸ばす。
    ⚪︎ヨルダン国王の弾圧(黒い9月)を受け拠点をレバノンに移し政治的に飛躍。
    ⚪︎1974年、アラブ首脳会議で「唯一のパレスチナ人の代表」と認められ、11月国連でアラファトが演説、総会で代表権などが認められた。
    ⚪︎1975年からのレバノン内戦、82年のイスラエルの攻撃(レバノン戦争)により、レバノンを追い出されチュニジアへ。
    ⚪︎この撤退が転機となりPLOの戦術が武力闘争から外交攻勢へと転換され、「全パレスチナ解放」から「ミニパレスチナ国家案」=「ヨルダン川西岸とガザ地区でのパレスチナ国家設立」に。

    ⚪︎PLOは闘いの主力を占領地に移すに違いないとの期待を裏切られた人々は「自らが闘うしかない」という意識を強め、1987年のインティファーダ(民衆蜂起)を起こす。銃に石で立ち向かったのである。この闘いはパレスチナ人の「テロリスト」というイメージを変え、一方、「中東唯一の民主主義国家」から「アパルトヘイト国家」へとイスラエルのイメージを転落させた。
    ⚪︎1990年イラクがクウェートに侵攻し湾岸危機に。アラファトはフセインを支持する。これに怒ったサウジアラビアなどの湾岸産油国がPLOへの経済援助を停止し、アラファトは権力の基盤を失った。

    ⚪︎1993年イスラエルとPLOの「オスロ合意」。世界のメディアは歴史的な和解と持ち上げたが、結局イスラエルの占領、入植は止まず、経済分野でもイスラエル経済への従属化が「合法化」されることになった。
    ⚪︎自治政府をになったのはPLOで、腐敗と非民主的統治への失望と怒りが深まる。第2次インティファーダが勃発する。
    ⚪︎1987年に「ムスリム同胞団の闘争部隊」として登場したハマスは、空虚な平和的解決や国際会議を追い求めず、パレスチナ全土の解放を目指すとした。
    ⚪︎社会のイスラム化を最優先し、宗教教育や福祉活動にとりくみ,世俗的なPLOとも敵対した。
    ⚪︎イスラエルはPLOを切り崩そうと同胞団を援助したが、1987年第2次インティファーダが始まると同胞団の中から、民衆蜂起の闘争組織としてハマスが誕生したのだ。
    ⚪︎ハマスはインティファーダ以後、西岸地区やガザで幅広い支持を得ていく。
    ⚪︎反オスロ合意でイスラエル人への攻撃を続けるハマスを「イスラエル人の安全確保」をイスラエル側に約束している自治政府は弾圧する。イスラエルはガザ地区、西岸地区の封鎖を一層強化する。住民はイスラエルへの出稼ぎ労働も断たれ困窮する。
    ⚪︎大きな岐路に立たされたハマスだが、住民にはハマスが軍事行動を休止してもイスラエルの政策は変わらないこと、つまり問題の根源は「占領」であるとの認識が広がる。篤い福祉事業で貧困層を救済するハマスへの支持は途絶えることはなかった。
    ⚪︎2005年、イスラエルが軍と入植地をガザから撤退した。平和を希求するとのシャロンの見せかけ。封鎖は強化された。

    ⚪︎2006年、選挙で圧勝し、イスラエルや欧米社会が最も恐れたハマス政権が生まれた。世界は一斉に「ハマスよ、テロと決別せよ」と叫ぶ。これに「国家テロである占領をやめよ」となぜイスラエルに要求しないのかと反論する。
    ⚪︎イスラエルと欧米は自治政府への援助を凍結し住民の生活をさらに逼迫させ、民意がハマスから離れることを画策したが,ハマスを追い詰めれば追い詰めるほど圧力に屈せず闘うハマスの人気が高まるという皮肉な結果に。
    ⚪︎独裁と腐敗にまみれた自治政府と清廉なイメージを持つハマスの抗争はイスラエル側の利益となる。
    ⚪︎アッバス政権のもとで権勢を振るった治安当局の最高責任者モハマド・ダハラン(腐敗し富豪に、アメリカが後押し)はハマス政権に従わなかった。
    ⚪︎2007年6月、ガザ地区でのハマスとファタハの武力抗争は五日間でファタハが敗北し、ガザ地区はハマスが制圧した。

     以上は71ページしかない本書の40%にも満たない土井さんの文章を、できるだけ時系列に沿ってメモったもの。
    iPhoneデフォルトのメモアプリに書き込みながら読んでいく(途中で調べごとも入れながら)のが定番のやり方だが二日もかかった。

    ガザの今を理解するにはいい本だと思う。

     だが2007年出版のこの本と現在のガザの状況はほとんど変わっていないし、むしろ悪化している。
    「パレスチナはどうなるのか」を考える時、残る60%を是非とも読んでいただきたい。土井さんを含め7名の方の緊急シンポジウムだが、とにかく深い。私たちや日本がどうすべきなのかも示唆していると思う。何冊も読んできたが、これを早く読むべきだったとも思う。

  • パレスチナ・イスラエル間の問題を分かりやすく解説。

    何よりも480という手ごろな価格で中東問題を理解できるのが売り。

    やや欧米批判が強いか。

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著者プロフィール

1953年佐賀県生まれ。ジャーナリスト。
1985年以来、パレスチナをはじめ各地を取材。1993年よりビデオ・ジャーナリストとしての活動も開始し、パレスチナやアジアに関するドキュメンタリーを制作、テレビ各局で放映される。2005年に『ファルージャ 2004年4月』、2009年には『届かぬ声―パレスチナ・占領と生きる人びと』全4部作を完成、その第4部『沈黙を破る』は劇場公開され、2009年度キネマ旬報ベスト・テンの文化映画部門で第1位、石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。次作となった『“私”を生きる』(2010年)は、2012年度キネマ旬報ベスト・テン文化映画部門で第2位。

東日本大震災後に制作された中編『飯舘村 第一章・故郷を追われる村人たち』(2012年)では「ゆふいん文化・記録映画祭・第5回松川賞」を受賞。また、2012年には、ビルマ(ミャンマー)から政治難民として日本に渡った青年を14年にわたって見つめた『異国に生きる 日本の中のビルマ人』で2013年度キネマ旬報文化映画第3位、文化庁映画賞文化記録映画優秀賞受賞。その他に『飯舘村 放射能帰村』(2013)、『ガザに生きる』全5部作(2014)など。著書は『アメリカのユダヤ人』、『沈黙を破る─元イスラエル軍将兵が語る“占領”─』(いずれも岩波書店)など多数。

「2020年 『ヨルダン川西岸(3部作)[DVD]ライブラリー版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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