キャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像 (岩波ブックレット)

著者 : 土井隆義
  • 岩波書店 (2009年6月5日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (63ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000094597

作品紹介・あらすじ

価値観が多元化した社会で感じる閉塞感。気遺いに満ちた「優しい人間関係」のなかで圏外化におびえる恐怖感。ケータイやネット、家庭から学校といった日常は、過剰な関係依存と排除で成り立っている。子どもたちにとって、現実を生き抜くための羅針盤、自己の拠り所である「キャラ」。この言葉をキーワードに現代社会の光と影を読み解き、「不気味な自分」と向きあうための処方箋を示す。

キャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像 (岩波ブックレット)の感想・レビュー・書評

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  • 人間関係のカースト化→各カースト内でのフラット化→「対立をはらまない限りにおいてお互いの差異を認め合うという基本的な態度だけ」→アイデンティティからキャラへ
    カースト化→宿命主義

    話の筋は理解しやすい。
    「キャラ化」は子供に限ったことでなく、あらゆるシーンに存在することは、思い当たるところがあるでしょう。
    それに対して一理ある説明がなされているので、
    そのようなあり方に疑問を持っている人は、本書がヒントを与えてくれると思います。

  • 図書館で借りた。
    一ページ、一行たりとも無駄のない、凝縮された内容だと感じた。

  • <子ども>たちとたくさん接してきていた身としては、すべてに首肯できるわけではない。
    でも、確かに一つの見方なのだとは思う。

    かつては、アイデンティティ(自己同一性)を確立するために若者はもがき、
    現代は、キャラを確立させるために、もがく。

    ***

    時代性という言葉を闇雲に使うのは嫌いなのですが、嫌おうが避けようが確かに時代が作り出すものはあると思う。
    90年代末~00年代が高校~大学時代だったのだけど、
    特に90年代末って、崩壊への憧れとか破滅の美しさとか、そういうものがもてはやされていた気がする(そういうものばかり自分のアンテナにひっかかったともいえる)。
    そうして、なんとなく、いつかこの世界が美しく消えるという幻想というか希望の中で、自己の裡へ裡へと潜っていく。だからこそ他者との関係性というのは、今思うと、必死で痛々しいまで「己」を守って崩さないようにするものだったような気がする。
    それが今は、キャラという他者に保証されないとなりたたないものに変わっていっているようだ。だが、他者といっても、完全なる他者ではなく、自分´とも言いえるような不完全な他者からの認証を得なければならない。
    難儀な時代になりましたね。

    印象的だった部分。
    しかし、よく考えてみれば、コミュニケーション能力ほど、その評価が他社の反応に依存するものはありません。コミュニケーションとは、その原理的な性質からして、けっして自分の内部で完結するものではなく、つねに他者との関係の総体だからです。コミュニケーション能力は相手との関係しだいで高くも低くもなりうるものです。それは、じつは個人がもっている能力ではなく、相手との関係の産物なのです。(P28)

    ***

    最近、00年代後半の小説をよく読む。
    90年代J文学(!)と言われた風潮の中にあった、美しい破滅、というのはどうもないらしい、確かに世界は変容したけれど、一瞬にして世界が崩壊することはあり得ないらしい、ということを知ってしまった後の小説は、なんだか酷く絶望的で、諦観にあふれているような気がする。
    うん、たぶん、自分が選んでいる本の傾向。

    90年代J文学にあった、あの破滅への憧れみたいなものは、ある種の希望であり、ある種の救いであったのだと思う。さて、すでに10年代。これから何処へ向かうのか。
    自分の中の読書史がぽっかり空いた00年代中盤~後半の本をゆるゆると読みながら、これからを見ていきたいと思います。

  • 2016年6冊目「キャラ化する/される子どもたち」読了。

    センター試験にも出たということで読んでみた一冊。出だしの部分は、現在の若者と当時の若者を説明しているが(う~ん…そこまででもないな)というのが正直な感想。しかし、後半に進むにつれ、非常に面白い考察になる。先日、NHKでも不寛容社会が話題となっていたが、本書でも述べられている排除型社会の克服は我々の課題だと感じる。さらには現代に生きる若者が自身のアイデンティティを確立するには、今まで以上の悩みや葛藤があり、今まで通りとはいかないことが良くわかった。P.54からの第4章はとても参考になる。

    ----(以下抜粋)-----
    「多様性を奨励するようになった新しい学校文化のなかを生きていま…そのため、学校文化に反旗を翻すことで成立していた非行文化は、その基盤を徐々に失いつつあります」

    「コミュニケーションの対象とされるべき共通目標があれば、その技法が多少下手であっても、目前の切実な必要に迫られてなんとか意志疎通を図ろうとしますから、コミュニケーション能力の有無は二の次の関心事となります。しかし現在は、人々の関心対象が千差万別になったことで…切実な話題は少なくなっているのもかかわらず、自己肯定感の基盤であるコミュニケーションの場はつねに確保され続けなければなりません。その結果、コミュニケーションの形式やその能力だけが極端にクローズアップされることになります。」

    「自分に評価を下す人間も超越的な他者ではなく、自分と対等な他者となります。…大人たちは、自分たちを抑圧する敵ではなくなったと同時に、人生の指針を与えてくれる絶対的な拠り所でもなくなっているのです。」

    「「がんばれば必ず成功する」という生徒と、「何をやっても無駄だ」という生徒のあいだで、意欲の二極化も進んでいます。…「生まれ持った資質によって人生は決まる」という感覚の広まりを示唆しているように思われます。…人生の行方はあらかじめ定まっていると考えている点では、どちらも同じ心性の持ち主のように思われるのです。」

    「いくら完璧なセキュリティの壁を周囲に張りめぐらしても、真に不気味で異質なものはその内部から紡ぎ出されています。」

    「ネット環境が整う以前…意中の相手とつながりあうためには、自分にとって不都合な人間とのコミュニケーションも途中で経由しなければなりませんでした。」

    「今日では、一人でいることの孤独から逃れようとして多用されるケータイが、かえって一人でいることの恐怖を募らせるという皮肉な事態が生まれています。自己肯定感の揺らぎを手っ取り早く解消しようとして、同質な人間だけで固まってしまいがちになっているからです。」

    「読売新聞が2003年に発表した全国青少年アンケート調査によれば、75%が「努力しても成功するとは限らない」と回答している…まるで「自信がないこと」にかけては誰よりも自信があるとでもいうような、「確固たる自信のなさ」というべき態度が、若い世代に蔓延しつつあると指摘してます。」

    「ネット環境の発達でコミュニケーションが便利になった反面、雑多な人間と出会う機会を意図的にでも設けていかないと自己の耐性力も育ちにくい時代なのかもしれません」

    「意図的にウォーキングでもしないと足腰が弱りがちな時代です。同様に、ネット環境の発達でコミュニケーションが便利になった反面、雑多な人間と出会い機会を意図的にでも設けていかないと自己の耐性力も育ちにくい時代なのかもしれません」

  • ざっと読んだ程度なので詳しくは書けませんが、アイデンティティとキャラの違い、これからの人間はキャラよりもアイデンティティを育てることを意識しなければならないのではということを考えました。、

  • コミュニケーション,圏外化,多様化.二次創作,やおい,カップリング,関係性.

  • 人間関係を「キャラ」というキーワードで社会学的に分析する、という内容的には今更(キーワード的にも分析法的にも)な一冊である。どちらかといえば、単著にするほどでもない内容を60ページの冊子として出版してくれる岩波書店はすごいなあ、と。

  • • 多様な生き方が等価なものとして認められるようになり、ものごとの価値にも絶対的な序列性がなくなる
    • 今日では、立場の異なった相手と意見を戦わせて理解し合うのではなく、異物とみなして最初から関係を絶とうとする傾向が強い

  • 日常の閉塞感とか優しさを強要される恐怖とか過剰な関係依存とか。「わかるわ……」っていうのから「うん?」っていうのまでいろいろ書かれてたけど、概して首肯する内容だった。ちょっとだけダメな自分と向き合える一冊だった。

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