新装版 道具と機械の本――てこからコンピューターまで

  • 岩波書店
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000098892

作品紹介・あらすじ

子どもから大人まで、みんなで楽しめる道具と機械の全ガイド。てこからデジタル機器まで、身近な道具と機械のしくみや働きを、豊富なイラストレーションで解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 「科学道100冊2020」の1冊。

    一見、子供向けの図鑑のように見えるが、なかなかどうして読みでがある。
    現在広く使われている道具と機械のうち、200種ほどを取り上げ、原理・しくみ・はたらきをイラストで解説する。
    ただ道具を羅列するだけではない。
    ファスナーとピラミッド建設、歯科医のドリルと水車、自動車のタイヤとパラシュートといった、まったく関係なさそうなものの奥に潜むつながりも紹介する。
    ひとつの発明と別の発明を支える原理が実は同じだったりするのだ。

    斜面、てこ、車輪と車軸、カムとクランク、滑車、ねじ、ばね、摩擦といった基本的な原理から、実にさまざまな道具が生み出されてきた。
    道具というのは、かけた力の形や大きさを変えて、なすべき仕事にちょうどよい形や強度のものにするために用いるものである。直線運動を円運動に変えたり、その逆を行ったり、小さな力で大きなものを動かしたり、逆に大きすぎる力を小さい力に調整したりして、目的を達成する。
    缶切りを使って缶詰を開けるのにさほど大きな力はいらないが、缶切りがなかったとしたら、ハンマーでたたき壊すか、のこぎりでぎこぎこやるか、いずれにしても大変なことになる。

    例えば斜面の原理。ある重さのものを持ち上げる際、垂直に引っ張り上げるよりは、斜面を転がして上げていく方がはるかに楽なはずだ。但し、作動力では得をするが、持ち上げる距離は長くなる。それでも、斜面を利用した方が楽に仕事を達成できる。
    この原理はピラミッド建築にも利用されたが、他にもこれを利用した道具は数多く、錠と鍵、斧・はさみ・バリカンなどの切る道具、鋤、ファスナーなどにも使われている。
    それからてこの原理。てこは、支点・力点・作用点の位置関係を元に、大まかに3種類に分けられる。これを利用した道具といえば? すぐに思い浮かぶのは天秤ばかり、くぎ抜き、栓抜きあたりだろうか。ハンマーや釣り竿などもてこの原理を使用している。てこを組み合わせた道具には、掘削機や爪切りがある。おもしろいところではグランドピアノやタイプライターもてこの原理を使っている。

    本書のもう1つの特徴は、そこここにマンモスが登場すること。
    架空の国で、毛長マンモスを飼いならす試みが行われている。その国の人々は、大きな体や強い力を利用して、さまざまな仕事をさせようとするのだが、これがなかなかうまくいかない。挙句の果てに、マンモスも吹っ飛ばされたり押されたり大怪我をしたり、なかなかの波乱万丈ぶりで、ちょっと冷や冷やする。
    独特のシニカルなユーモアである。

    第1部:動きのからくり
    第2部:水、空気、火の利用
    第3部:波の働き
    第4部:電気と自動制御
    第5部:デジタルワールド
    といった構成である。
    読み進めていくにつれ、道具というのはいろいろな物理法則をうまく利用して出来ているものなのだなと感心する。これはエネルギー保存の法則、これはパスカルの原理、これはベルヌーイの法則など。法則の名前が出てくるわけでもなく、数式も出てこないが、イラストを通じて直感でわかりやすく解説していて唸らされる。
    著者もすごいが、法則に気づいた人、それを道具に利用した人、発展させていった人もすごい。

    ちなみにこちらは「新装版」となっているが、オリジナル版は1988年に出ている。かなりのロングセラーである。
    20数年前にたまたま原著の方を買っていて、「あの本の和訳なのか」と気づいて見比べてみた。
    内容は大部分が同じで、2色刷りの部分がフルカラーになっているのが大きな違い。加えて、オリジナルは第4部までだったものが、コンピュータを深く解説する第5部のデジタルワールドが付け加えられている。ビットの作成から使用、GPSやコンピュータネットワークも解説している。
    1998年、2004年と改訂版が出ているようなので、その際に付け加えられた部分だろう。
    しかし、フロッピーディスクの解説もあるが、今やもう知らない世代も出てきているだろう。コンピュータのディスプレイもブラウン管形式なのか分厚い。このあたりは次の改訂版で削除・訂正されるのか。
    いやはや、技術の進歩というのはすごいものである。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB06730277

  • 「約200種類の機械の原理、しくみ、働きを大きな画面でタップリ見せてくれます。用途別ではなく、原理別に分けてあるので、スキとファスナー、楽器とハップル宇宙望遠鏡、歯医者さんのドリルと風車が仲間だってこともわかる。」(『読んでみない?科学の本 しらべてみようこんなこと』子どもと科学をつなぐ会 編 連合出版 2000  の本での紹介より抜粋)

  • #科学道100冊/科学道クラシックス

    金沢大学附属図書館所在情報
    ▼▼▼▼▼https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB06730277?caller=xc-search

  • 図解の王様、デビッド・マコーレイの代表作と言ってよいだろう労作。
    様々な道具や機械の働きを、用途や対象物ではなく動作原理によって説明する。なので、意外なものがほとんど同じ原理で動いていることを知ることにもなる。そして、人類が利用できる原理は限られている。

    スケールも自由に行き来するのがよい。
    小さな電球が大きな建築のように説明されていたりする。

    子供の時に読みたかったと、見るたびに思わされる。
    子供に読ませたい。

  • 【書誌情報+内容紹介】
    原題:THE WAY THINGS WORK NEW EDITION
    著者:David Macaulay
    著者:Neil Ardley
    訳者:歌崎秀史
    定価 本体7,600円+税
    刊行日:2011/09/07
    ISBN 9784000098892
    版型 A4変 上製 カバー
    頁数 400
    在庫 あり

     わたしたちの生活をとりまく道具と機械200種以上の原理、しくみ、働きを、豊富なイラストレーションで解き明かす究極のガイドブック。身近な生活道具、乗り物、楽器、デジタル機器から、果ては原子力、人工衛星まで、あらゆる「基本」を集大成します。
     『道具と機械の本』は1990年の初版刊行以来、多くの読者を魅了してきたロングセラーです(99年には、デジタル機器に関する章を加えた新版を刊行)。
     このたびの新装版では、従来2色刷だったイラストがすべて4色刷りになりました。また文字のレイアウトも全面的に改良。見やすく、美しいフルカラー新装版が完成しました。
     子どもから大人までみんなで楽しめて学べる実用の書。ご家庭に、教室に、ぜひお備えください。
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b264738.html

  • タイトルの通り、カギや自動車、パソコンといったありとあらゆる身の回りのものの仕組みについて解説した本。
    ガチな説明とコミカルな絵のバランスが良くて、さらさらと読み進められます

  • リーダーの本棚理解を超えた謎に心躍る
    理化学研究所理事長 松本紘氏

    2017/6/3付日本経済新聞 朝刊

      日本が誇る国際人でマルチ人間
     空海に関心を持ったのは、学問領域を広げ、研究マネジメントもしなければならない立場になったときでした。空海は宗教家、文筆家、書家であり、ため池を築いた土木工学者でもあった。学問に傑出していただけでなく、活躍した領域が本当に幅広い。一時期、空海関係の本を読みあさりました。本人の著作は難解ですから、『曼陀羅(まんだら)の人』など、空海の生涯を描いたり、教えを解説したりする本が中心でしたが。


     空海が学んだ頃の唐の長安には多くの留学僧が集まっていた。その中で頭角を現し、著名な師の恵果(けいか)和尚から高く評価された。昔の日本に海外で畏敬される優れた国際人がいたと感じ入りました。足跡を知ると、時の権力者を動かしたりする世俗的な面もある。三筆の一人に挙げられる書も、きれいな字だけでなく、実験していたかのような奇妙な字も書いている。超俗の偉人ですが、どこか親しみも感じます。


     私は小学生のころ左目の視力が極度に悪くなったため、長時間の読書が難しい。本はじっくり読むより短時間で内容をつかむ読み方になっていきました。物事を考え抜いたり、悩んだときに論語や徒然草にヒントになる一節があります。時代を超えて残る古典にはそうした普遍的な知恵がありますね。


      好奇心を刺激されるものに引かれる


     宇宙を研究すると思考が遠大になるのかもしれません。地球の資源や人口増の限界を踏まえ、宇宙太陽光発電や太陽系を開拓する未来について構想してきました。人類が宇宙に本格進出する時代がいずれ到来するでしょう。スイスのデニケンは世界中の遺跡などを調べ、古代文明には地球に飛来した宇宙人が関与したという説を唱えています。非科学的で荒唐無稽と批判されますが、『失われた未来の記憶』などの著作は読み物としては面白かった。


     旧約聖書や古代インドの宗教文書ヴェーダに描かれた物語には現代科学が切り込めていない謎があるかもしれないと思ったりします。原典に当たらないと分からないだろうと、一時期サンスクリット語の勉強にも挑みました。


     現在は解明できていない未科学、非科学的とされるものを科学にする研究ができたら心が躍るでしょう。iPS細胞など生命科学の発展は従来の常識を覆しつつあります。自分の理解を超えた謎を提示してくれる本は興味深い。宇宙と同様、分からないことが多いのが脳です。今年創設百年を迎えた理化学研究所は脳科学研究に力を入れていますが、私自身、理研に来て脳への関心が高まりました。最先端の研究をまとめた『つながる脳科学』は知的好奇心を刺激してくれると思います。


      啓蒙する本に感心する


     子ども向けの講演もするため、科学をわかりやすく解説した本にも目を通してきました。『道具と機械の本』は海外では有名で、たびたび改訂されています。てこからコンピューターまで、原理や仕組みを絵を使って描いている。小学生でも絵を見ながら読める一方、大人でも理解が難しい原理に触れている。大冊で歯応えがあります。


     京大教授時代には入試問題を考えるため、高校の教科書や資料集を集めました。必要なことをコンパクトにまとめてあり、専門外の教科の理解に役立ちました。現代文の教科書も面白かった。最新の資料集はカラフルで見やすい。フォトサイエンス図録シリーズの物理、化学、生物、地学は理研の待合スペースにも置いています。研究者たちは「今の高校はこんな最新の話題も扱っているのか」などと話しています。


     自宅が奈良市にあるため、新幹線に乗る機会も多く、駅の売店にある文庫の小説をよく買って読んでいます。浅見光彦シリーズには日本各地の旧跡や観光地が登場し、歴史や伝承が書かれているので、実際に現地を旅行しているような気分になれます。日本の多様性や歴史の深さを知ることもできる。


     最近の世界情勢や政治経済を基にした小説も好きです。もちろんフィクションですが、濱嘉之さんの警察の小説などは、知らない世界を知るきっかけにもなる。よく取材をして書いていると感心する作品がありますね。


    (聞き手は編集委員 堀田昇吾)






    【私の読書遍歴】




    《座右の書》


    『曼陀羅の人』(上・下、陳舜臣著、集英社文庫)、『最澄と空海』(梅原猛著、小学館文庫)、『秘蔵宝鑰』(空海著、加藤純隆・加藤精一訳、角川ソフィア文庫)など空海関係の著作。


     


    《その他愛読書など》




    (1)『徒然草』(兼好法師著、小川剛生訳注、角川ソフィア文庫)
    (2)『論語』(加地伸行全訳注、講談社学術文庫)
    (3)『失われた未来の記憶』(エーリッヒ・フォン・デニケン著、松田和也訳、学研プラス)
    (4)『つながる脳科学』(理化学研究所脳科学総合研究センター編、講談社ブルーバックス)
    (5)『新装版 道具と機械の本』(デビッド・マコーレイ作、歌崎秀史訳、岩波書店)
    (6)『視覚でとらえるフォトサイエンス 生物図録』(鈴木孝仁監修、数研出版)
    (7)『津和野殺人事件』(内田康夫著、光文社文庫)
    (8)『警視庁公安部・青山望 国家簒奪』(濱嘉之著、文春文庫)




     まつもと・ひろし 1942年生まれ。奈良県出身。京大院修了。専門は宇宙物理学など。京大教授、同大総長などを歴任。2015年から現職。

  • マンモスと機械の組み合わせで説明していくけど、てこからコンピュータまで、全部カバーできるのがびっくり。

  •  機械はなぜ合理的に働くのかと問われれば、その答えは、機械はすべて「原理」に従っているからとなる。では、機械を動かしている「原理」とは何か。
     その質問に答えるため、本書では機械を「用途」ではなく「原理」によって分類し、鋤とファスナーが仲間であるとか、水力発電所と歯医者のドリルはよく似ているとか、「用途」で見たときにはわからない仕組みを、ユーモアたっぷりの文章にイラストを満載して紹介している。
     いかに何も知らずに毎日道具や機械のお世話になっているか。それを痛感し、先代の知恵に深く頭を垂れる一冊。

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著者プロフィール

著者:デビッド・マコーレイ(David Macaulay)
イラストレーター、作家。1946年イギリス・ランカシャー生まれ。1957年にアメリカ・ニュージャージー州に移住し、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで学んだ後、同校の教師を務める。1975年にドイツ児童文学賞、1991年にコルデコット賞受賞。『道具
と機械の本―てこからコンピューターまで』(歌崎秀史訳、岩波書店)など全世界で発行されている著書多数。

「2023年 『数と図形について知っておきたいすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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