- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000106924
感想・レビュー・書評
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10人の執筆者の論考を収録しています。
浅野智彦や葛山泰央の論考は、社会史のなかの「自我」というテーマを概観している手堅い論考となっています。
また、精神病理学者の木村敏、批評家の三浦雅士、宗教哲学者の上田閑照が執筆者として名前をつらねており、それぞれの観点から自我ないし主体、アイデンティティというテーマについて掘り下げた議論を展開しています。
木村敏は、人間存在論というべき観点から、「あいだ」というキーワードを軸に主体性について独創的な考察をおこなっています。また上田閑照は禅の境地を示す『十牛図』を手がかりに、自閉的な自我を超えた「我ならざる我」の立場へと開かれていく可能性について論じています。
三浦雅士は、大航海時代における西洋と非西洋の出会いについて考察しながら、「自我」の成立という出来事が世界史においてどのような意義をもっていたのかという問題を提起しています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
やっと読み終わった! かれこれ1週間ぐらい、この本にかかりきりだった気がする。
当然というか、筆者によって文章のクオリティがかなり異なる。
個人的な評価を下すなら、木村敏「自己と他者」、木村洋二「「私」の構成―自己システムのソシオン・モデル―」、浅野智彦「近代的自我の系譜学1―ピューリタニズム・スノビズム・ダンディズム―」三浦雅士「近代的自我の神話」は読む価値があったと思う。
なんでこの執筆陣になったのだろう。木村敏は精神医学の話をしだすし、文学批評のようなことをする筆者も結構多かった。上田閑照なんて「十牛図」がテーマだったし。社会学だとミード、ゴフマンとかばっかになっちゃうからかな。お隣の畑なんだし、社会心理学の知見がもっと紹介されてもいいのではないかとも思う。