岩波講座 文学〈13〉ネイションを超えて

制作 : 小森 陽一  沼野 充義  松浦 寿輝  富山 太佳夫  兵藤 裕己 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000112130

作品紹介・あらすじ

国民国家の形成に文学は重要な役割を担った。ナショナリズムと時を同じくして登場したネイションの文学=「国」文学は、グローバル化の波をうけて国民・国家概念そのものが揺らぐいま、いかなる変貌を遂げるのか。ネイション形成の要としての言語-文学と国家の関係を問う。文学の新世紀を切り拓く、最前線の思考。

感想・レビュー・書評

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  • 印象に残ったところの抜粋。

    p.4
    「スコットランドというネイションは、グレート・ブリテンという連合王国が成立することの中で、創造的かつ想像的に自覚され構築されたのである(中略)
     スコティッシュネスが、グレート・ブリテンという帝国に支配され、抑圧され従属させられていく中で、逆にスコットランドの人々が帝国の拡大に最も貢献していくという、ゆがみときしみを内在させた関係性。植民地に流出していった在外・国外のスコットランド人によってスコティッシュネスが欲望されていったのである。」

    p.128〜130 堀江敏幸、シルヴィア・バロン=シュペルヴィエルについて。
    アルゼンチンで育ったのち、渡仏してフランス語で創作を始めるとともに、スペイン文学のフランス語訳を数多くこなし、「翻訳作業を通じて両国語の「行き来」の場を自分の内側に確保してもいるのだが、バロン=シュペルヴィエルの特異さは、彼女がフランス人読者にむけて書いているのではないと主張している点である」。

    「フランス語による自己表現を選択しながらその言語への完全な同化を拒み、母国語であるスペイン語を捨てないと言いながらその言語では書かず、しかもその作品を支える言語は、かならずしもその使用者たちに向けて発せられてはいない、と言うのだから。フランスの首都に住み、フランス語で書くという行為が必要とする真の名宛人を不明のままにしておこうというこの明らかな矛盾を解決するのは、複数の言語をよくするユートピア的な読者の存在だけだ。フランスの読者に読まれたいのではなく、フランス語を解する母国の読者に読まれたいとする「あいだ」の屈折。これこそ、母国語からフランス語への越境とも、母国語とフランス語の行き来とも別種の、つまりはそのはざまに横たわる「内なる外国人性」を示す、格好の事例ではないだろうか。「つまり書くためにどこかから力を引き出すことができるとしたら、それはまさしくふたつの言語のあいだに自分が占めているこの場所からだったのです。(中略)私の力は、まさにフランス語のなかには完全には入らないこと、そしてそれをいくらか自分の外に残しておくことなんです」と自己解説する彼女にとっての安住の地は、その最新作のタイトルが示すように「エクリチュールの国」でしかありえない。」

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