- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000113076
作品紹介・あらすじ
計算科学はコンピュータとともに発展してきた。科学技術計算を主目的とする大規模で超高速なコンピュータはスーパーコンピュータと呼ばれ、その象徴である。本書はコンピュータの基本原理から、演算能力の高速化手法、並列プログラミング、最新の技術動向や今後の課題までをわかりやすく解説し、その可能性を考える。
感想・レビュー・書評
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主に数値シミュレーションを行う研究者、学生向けに書かれた本。もしくは、スパコンを設計する人向け。計算科学について基礎的な内容から記述されており、初学者が体系的に学ぶことができる構成となっています。
アカデミックな要素が強い一冊ですが、1章「コンピュータの基本原理」の内容は、情報処理技術者試験の応用情報技術者の「コンピュータシステム」分野で問われる内容と被っています。応用情報技術者試験は国内の多くのITエンジニアが受験する資格試験ですが、そこで問われるような基礎知識から始まる点でも、入りやすい本といえます。
3章ではマルチスレッドプログラミングの解説があります。openmp の指示行ベースでの並列化についても書かれていますが、これは普通の企業エンジニアでも使う人がいそうですね。
また、最終章の4章では、エクサスケールスパコン(京コンピュータの約100倍の性能)の開発に向けた課題が書かれており、この章の執筆は東工大TSUBAME設計リーダの松岡教授が手がけています。松岡先生ならではの先見性のある視点から記述されており、今後のスパコン動向を知るための背景知識として有用な知見を得られる章だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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大学の教科書のような佇まいだけど,2進法や倍数精度表現等の基礎から入り,スパコンで使用されている高速化技術,とくに並列演算技術について平易な部分から解説されており,そこまで敷居は高くなかった.スパコンといっても結局はCPU(最近だとGPU)のコアをどれだけ効率的に使うかという話であり,マルチコアや共有メモリ,省電力化などがトピックであって,スパコンに限らず処理演算の高速化に腐心している人には有意義な本だと思う.
逆にスパコンに特化した話題はそこまで多くない.第3章「スパコンをどう活用するか」はビジネス領域での実例の話ではなく,MPIやOpenMPなどを用いてアルゴリズムの領域でスパコンを活用するという話.さらに,著したのが別々とはいえ,第3章と第4章で内容が一部かぶっている部分がある.なぜスパコンが必要とされているのか,特になぜ次世代のエクサを目指すのか,についてもページを割いて欲しかった.
第4章「スパコンの進化と今後の課題」は,HPCの領域での課題が整理されており,とても良かった.