安全神話崩壊のパラドックス―治安の法社会学

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 81
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000220231

作品紹介・あらすじ

「日本は犯罪の少ない安全な社会である」という安全神話が揺らぎつつある。しかしはたして、犯罪が増加し、凶悪化が進んでいるという認識は正しいのか。著者は、統計資料の徹底的な読み込みを通してわが国の犯罪状況を分析し、近年の通説が現実を正しく反映していないことを考証。なぜそのような言説が一般的にまかり通ることになったのか、その背景と言説自体がもつ意味を明らかにしたうえで、欧米社会との比較考察をも加えつつ、今後の社会変化と法状況の将来を展望する。法とは何かを問うことを通して、わが国における司法制度や社会関係のあるべき姿について考察した、気鋭の法社会学者による刺激的な問題提起である。

感想・レビュー・書評

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  • ・日本の治安は悪化していない
    ・犯罪の凶悪化は認められない

     え、まじですか。でも、本書を読んでいくと、それがたしかなことと思えてくる。

     交通事故や統計の取り方、警察の対応の変化など、統計の雑音を消去していくと、近年叫ばれている「治安の悪化」が数字の上からでは幻にすぎないことを、著者はまず明らかにする。
     そのうえで、昔は安全だった……という「安全神話」が、昼と夜、繁華街と住宅街など、時間的・地理的境界があったことに支えられていたという説にいたる。昔の犯罪は、夜、繁華街、でおこっていた。そんなところにそんな時間、女子供が出歩くならば「人さらいにつれていかれる」ものであった。その境界の崩壊こそが「安全神話」を葬り去りつつあるのだという。
     非常に説得力があり、またその対策も一考に値すると思う。ヤクザが「治安」に果たした役割など、興味深い考察が広げられている。いたずらにマスコミに踊らされて街中を監視カメラで埋め尽くす前に、データに基づいた冷静な意見を参考にすべきだと考える。
    (以上2004年にmixiに書いたレビューの、まんまです)

  • 情報の読み方、データの見方について考えさせられる。また、安全を守るための従来の日本のシステムについても、そういう考え方があるのか、と勉強になる。

  • 自分の体調もあってか読むのに時間がかかりすぎ、前半の記憶があいまいなところもあるけど、「マスコミの報道によって凶悪事件は増えたようなかんじがして安全神話の崩壊なんて言われているけど実は増えていなくて、そのかわり、住宅街をミクロな視点でみると、ひったくりとか空き巣とかそういうのがちょこちょこ増えている、それは住宅街の人間関係が変貌したから」「住宅街にしても、夜に通りを歩く住民がいなくなればひったくりはなくなるし、夜中にあいてる店がなくなれば、警察も犯罪者の取り締まりがしやすい、24時間どこでも安全というのは今も昔も無理難題」「繁華街にしても、昔は『夜遅くに出かけてはいけない』っていうのが常識ぐらいに危険だったけど今では夜更けに女子高生も歩けるぐらいに安全になったともみられる」って話だと思う。
    ただ、正確にこの本を理解していないだけなのかもしれないけど、ひったくりや住居侵入などが深夜にしか起きていないわけではないし(この点の指摘は本の中にもあったかな)、結局、住宅街でのそういう犯罪が増えているんだったら、治安の悪化というのはそんなに間違った表現ではないのでは。

    ほかには、ヨーロッパの人間関係と、日本の古くからの人間関係を比べて、日本の人間関係は狭くて他者を知っている→だから訴訟も少ないし、住んでいる地域をミクロでみれば安全神話があったみたいなかんじ。
    ちなみに河合幹雄さんは、河合隼雄さんの子どもらしい。

  • 冒頭は統計を用いて犯罪発生率や検挙率等を多方面から詳細に検討して、日頃マスコミ報道から受けるような治安の悪化という事実はなく、現実にはここ数年を見比べた場合せいぜいが微増程度(犯罪の種類にもよるけど)、と徹底的に証明していきます。
    それなのにどうして治安が悪くなったように感じるのか、という分析のために日本の社会的な構造から解き明かしていくあたりは圧巻です。欧米との違いとして一番日本の特徴として顕著な「ハレ」と「ケ」の仕組みと絡めて進められる話には引き込まれました。分かりやすい!
    いろんなタブーにも精力的に言及されていて、読み応えという点では充分です。ただ現状の衰退を言い捨てるだけじゃなくて共同体の崩壊した現状からどうするのか、と方向性を示されているのも評価できます。
    でも、ちょっと統制機関に対しての信頼度が高すぎるというか…取り調べ時の可視化に反対とか、メールへの統制も許可すべき、とか。
    卒論関連でブロッキングについて書かれた報告なんかをちょっぴりですが読んだんですが、スウェーデンでちょっと深刻な問題なども起こってるようですしねえ。ブロッキングなんで進まないのか、と歯がゆく思っていたりもしたのですが、こういう話聞くとそれもないな、という気になった私にとってはちょっとこの提案は受け入れがたい部分がありました。
    でもいろんな面で視点が変わりそうです。問題提起としてもすばらしい本ですよ。

  • 授業の課題レポートの題材として読む。基本的には著者が講義で述べていたことと同じことが書いてあったけれど、より詳しく法社会学や日本の社会の裏の仕組みを知ることができる。第一部は日本の犯罪の増加に代表される安全神話の崩壊を統計のトリックと考えてそれを分析、第二部は出所した犯罪者やどうしようもない問題児がどのように社会に属しているか、そして第三部は安全神話の崩壊以降の時代の共同体においてどのような治安維持のシステムを作るべきかを扱っている。

  • 河合先生は偉い。法社会学ってのはこういう学問だわね。

  • 日本の安全神話は本当に崩壊してるのだろうか?

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