アイヒマン調書―イスラエル警察尋問録音記録

制作 : ヨッヘン・フォン ラング  Jochen von Lang  小俣 和一郎 
  • 岩波書店 (2009年3月13日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000220507

作品紹介

ナチスによるユダヤ人殺戮のキーマン、親衛隊中佐アドルフ・アイヒマン。戦後アルゼンチンに逃亡し、リカルド・クレメントの偽名で自動車会社に勤めていた彼を、一九六〇年、イスラエルの情報機関モサドが拘束、イスラエルへ連行する。全世界が注目したアイヒマン裁判。準備にあたって、イスラエル警察は八カ月、二七五時間にわたり尋問をおこなった。迫真の駆け引きから浮かび上がる、アイヒマンの人間像とは!過去に何が起こったのか、それは将来また起こりうるのか。歴史の事実と可能性を直視し、「悪の凡庸さ」を超えて、人間存在の理解を深めるための必須史料。

アイヒマン調書―イスラエル警察尋問録音記録の感想・レビュー・書評

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  • いろいろ空しくなり、人間は奢ってはいけないなと感じたような。

  • ホロコーストを実施する機関の重要な一員であったアイヒマンの尋問記録。
    非常に興味深い。
    必読書とも言える。

  • ナチスの戦争犯罪者について面白かった、というと語弊があるかもしれないが興味深いとか勉強になったとか言い換えてもしょうがない、すばらしく面白い読書体験だった。
    「海辺のカフカ」の舞台の中で、ジョニー・ウォーカーの猫殺しとカフカ少年がアイヒマンについての本を読む経験がオーバーラップする場面があった。劇中の白眉といえる名シーンで、そこでこの劇(小説)のテーマと、村上春樹が書き続けている「悪」についてまで、すとんと理解できたように感じた。(さすが蜷川さん)それでこの本を読んだ。
    イスラエル警察での尋問を忠実に文章化している。尋問側は家族を収容所で殺されている。概ね冷静なやり取りだが時として熱を帯びる。アイヒマンの回答がとにかく「面白い」。「私は一人のユダヤ人も殺していない」「私は輸送を担当しただけで収容所など全く関知しない」「それは別の誰かがやった、あれは上司から支持されたからだ」などなど。
    今ではアイヒマンという言葉にデーモニッシュな響きさえあるユダヤ人虐殺の責任者だが、映画に出そうな冷徹で嗜虐的なナチ高官でもなければ、悔恨と贖罪の念に打ちひしがれた懺悔する人でもない。徹底して無自覚な凡人であり、保身しか考えていない。保身?しかしアイヒマンとて、「僕のせいじゃない」と駄々をこねれば許されるとは思っていなかったようだし・・・問いかけられるユダヤ人XX千万人を焼却場に送った、銃殺した死体が山積み、効率面でガスを推奨し・・・といった行為とのギャップは深遠なる闇だ。これはなんなのだろう、凡庸さと想像力の欠如から生み出される悪なのか。
    読めば読むほど、これはナチスという特異な過去の物語ではないと痛感した。日本軍が戦時に行った異常で残忍な出来事も、凡庸な人々が淡々と事務的にこなしていたのだろう。そして今現在のイラクやシリアでも。これらからの未来でも。人間性に関する普遍的な問いかけといえる。

  • 被害者は400万人なのか600万人なのかを質していくイスラエル警察に対し、アイヒマンは直接殺人に関与したことは無いと強弁する。組織内での歯車的立場を強調するアイヒマンの供述。対してイスラエル警察は、歯車のレベルにとどまるのか反駁を試み、証拠を積み上げ追い込んでいく。

    凡庸で非英雄的な人物が(人物こそ)、特殊状況下で悪魔的殺戮の推進エンジンを担う。このことこそ恐ろしい。アイヒマンがいなければ別のアイヒマン的人物が堅実に代務を執っただろうことは想像できる。時代を現代に変えても、国をドイツ以外に変えても、それは成り立つだろうことを、本書は静かに訴えている。

  • 表紙が秀逸すぎる。

  • 良い男(カルテンブルンナー)にホイホイ付いて行ったアイヒマンの運命やいかにっ!

  • 権力と感情は人を強く動かす。しかし、ひとりの人間が持つ力は小さい。組織やそのシステムが、自己回帰的に増幅していくことに、本当の恐ろしさはある。
    アイヒマンは、自身がシステムの一部でしかないことを強調した。システムの一部として忠実に働くことが彼の役割だったと。彼はその責任を、上司に、組織に、時代に転嫁した。善悪ではなく、それが役割だったと。この責任の欠如が、集合的な恐怖と暴力の衝動が、不気味なシステムを形成し、不合理な惨状をもたらした。
    夜と霧と併読すると、あまりの恐ろしさに身震いする。

  • 手に入れたばかりでまだ目次しか見ていません。アーレントの『イェルサレムのアイヒマン』では、アイヒマンは、ごく普通の平凡な軍人、人並みの良心すらもっていた人間が、全体主義運動の過程でいかにして凡庸な人間が恐るべき犯罪をなしえたか、アイヒマン自身が敗戦国の軍人として被告席にいるのであって、ユダヤ人虐殺の犯罪者だとは考えてもいなかったと分析しています。本書でさらに詳しくアイヒマンの人となりを読むことが楽しみです。最近、『ヒトラーを支持したドイツ国民』はじめ、全体主義体制下のごく普通の市民の良識はどうなっていたのかについての調査記録も出版されています。アーレントが著作執筆時には手にはいらなかったであろう記録が相次いで出版されているのは、世界に蔓延する不安のあらわれでしょうか。

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