安倍「教育改革」はなぜ問題か

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000220835

作品紹介・あらすじ

教育基本法を改正し、愛国心教育を推し進めた第一次安倍政権。現在の第二次政権も、教科書検定基準の見直し、道徳の教科化や教育委員会制度の改革など、「教育改革」に意欲を燃やす。そのねらい、危険性とは何か。教育社会学の第一人者が、一九八〇年代から続く政治主導の「教育改革」の弊害を検証し、教育現場が活性化する、本来の教育のあり方を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 政治主導の教育改革に警鐘を鳴らす一冊。構成が体系的であり、かつ根拠に基づいた論理展開がなされている。やや専門的でもあった。
    著者の主張は、教育政策が政治主導によってなされていることへの危惧がある。選挙は民意を示すが、それは一側面に過ぎない。特に、近年の政治の内容は多岐に及んでおり、選挙で当選したとは言え、有権者がその政策全てを認めているわけではない。実際に政策を進めていくには常に国民の対話が不可欠である。しかし、現在の安倍政権はどうか。安保法案に代表されるように、数の論理で推し進める強引さが目立つ。教育分野でも同じであり、審議会委員を考えの近い委員で固めるなど、公平な観点から改革が進められようとしているのか、著者は疑問を呈している。
    確かに、著者はこれまでの経過を含めて指摘しているため、説得力がある。「新しい学力」という言葉に踊らされている世間に対し、PISAやTIMSSの上位国に位置するわが国の古典的学力の重要性を説いている。また、小中一貫校の導入や学校選択制について、教育格差を生み出す要因となることも指摘している。
    「公教育」とは何か。全ての子どもが平等に教育機会を保障され、将来の選択の幅を広げられることである。その公教育が、根拠に欠ける政治判断によって歪められてはならない。私立が行う教育との役割の違いを考える良い機会となった。

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