生き延びるための思想―ジェンダー平等の罠

著者 :
  • 岩波書店
3.66
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本棚登録 : 97
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000221511

作品紹介・あらすじ

「男女共同参画」でフェミニズムの課題は解決するのか。そもそもフェミニズムとは何か。「男なみ」をめざすことで袋小路に入り込んでしまった(リベラル)フェミニズムの思想的な落し穴を指摘し、国家暴力と対抗暴力とを問わず、社会のなかの暴力的な構成=男仕立ての「死ぬための思想」を根源的に批判。国家、暴力、ジェンダーという問題系をめぐる近年の議論を再構成し、「弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想」としてのフェミニズムの立場から、人間らしく生きるために今なにが問われているのかを明晰に論じる。幅広い活動を展開する著者の問題関心を結節するとともに、その思想的な中核を浮彫りにする重要な一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 著者のおおもとの考え方ってこれなんだと思った

  • 男仕立ての思想の刷り込みから自由になって、いまここでを生き抜く言葉と知恵を持っていきたいと思う。
    「命より大事な価値」はあるのか、「尊厳ある生」と言う時、「生」と「尊厳」どちらに力点があるのか。という問いかけにはどきりとした。

  • 「市民とは公領域に公民として、すなわち私的な領域をプライバシーとして封印したまま、互いに「同じであること」を偽装して登場する個人のことである。このプライバシーの領域には、セクシュアリティから、再生産、扶養や依存の有無、障害などさまざまな差異が、封じ込められている。それらの差異をあたかも存在しないようにふるまうのが公領域の「同じであること」を担保する作用であり、これを公平と呼び慣わしてきた。その公的領域のゲームでは、差異の付加がまったくない者を模範に近代的個人像が作られており、そうした人々が、もっとも有利になるようにルールが作られている。(p.39)」

    →いくつかの論考が収められているが、「同じであること」をめぐる上記の箇所が全体を貫く本質的な論点となっている。ある基準を元(上野によれば、それはつまり「健康な壮年男性」ということなるだろう)にした「同じであること」の上にある現在の社会を解体し、さまざまな差異に開かれた、差異を前提とした社会を構築することが必要。
    →「公平」を謳う言葉の中に隠蔽された不公平を読み解き、問題点をオープンに発見できるような言葉を選んで再定義していく様には共感する。批判に対してものすごく開かれた文体。

  • 本質を見抜いた発話。読後はすがすがしさを感じる。批判者を思いやる気持ちがずんずん入ってくるので、人間的な優しさも感じる。ただ・・・。談話を読む限りは「品」はあまり・・・・(^_^)/~

  • 201010
    持ち帰ってよまずにいられないおもしろさ。ただ読むほどに男性から敵視されるに違いない思考スタイルが身につく。

  • ほんとうに、ほんとうにことばをもたぬ人に、徹底して真摯に寄り添う姿勢を、全編からひしひしと感じる。
    こちらは緊張していた心身がほぐれていくような。あー。

    上野千鶴子という人は、圧倒的な知力を、こんなふうに使う人だったのか。
    すっげえ。

    *****

    最後の対談「補論 生き延びるための思想」がすごくわかりやすい。
    (上野さんもあとがきに書いておられるが、このインタビュアーの方、ほんっとうにすごい…)

    我も難民であったのか、とハタと膝を打つ。

    この国のくれるコトやモノがことごとく、遠いかんじがしていた。
    私が大切に思うことはことごとく、この見慣れ馴染んだはずの社会から、こぼれおちてしまう。
    諦念の中に暮らしていた。諦念にすら気づかずに。
    「当事者とは、まず言葉を奪われた人たち」

    *****

    遺憾なことなのか僥倖なのか知れぬが、フェミニズムど真ん中な現場で仕事をさせて頂いている。
    私自身、「女性ではない」ために、時折、自分で自分を切り落とすような気持ちになりながら。
    いらだちと孤立感を、あるシンポジウムで「質問」という形をとって、上野さんに直接ぶつけてしまった。(今思えば、上野さんご自身には全然関係ないのに、八つ当たりですよね)
    ぴしゃりと言われた。「私はこの立場で話をするよう頼まれて来ているので、そのように話しました」

    この本に既に、書いてあった。
    「アンタが言っていいのなら、アタシだって、という気持ちをいろんな立場の人に持ってもらえたと思ったから。フェミニズムがすごく良かったと思うのは、その点です」

    どんなふうにか分からないが
    私の立場の言葉を、私たちが探す。入り口に立たせてもらったんだな。

    *****

    次は、スピヴァク『サバルタンは語ることができるか』を読まねばな。

  • 「女も男並みに戦争に行け」ではなくて、「男も女並に命を大切にしろ」ってこと。
    祈るしかない時もあるけど、祈ってたって変わらないのよね。久しぶりに読んだ上野千鶴子。相変わらず凄まじい逆風を切って颯爽と走ってました。 惚れ直したぜ。 

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著者プロフィール

1948年富山県生まれ。社会学者。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクショネットワーク(WAN)理事長。専門学校、短大、大学、大学院、社会人教育などの高等教育機関で、40年間、教育と研究に従事。著書に『近代家族の成立と終焉』、『家父長制と資本』(岩波書店)、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『女ぎらい』(紀伊國屋書店)、『ケアの社会学』(太田出版)、『サヨナラ、学校化社会』など多数。

「2018年 『情報生産者になる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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