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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784000221658
感想・レビュー・書評
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むかし、往復書簡といふものがあつた。
(などと書くと、古老になつたやうでいい気持ちである)
正確には今でもある。
しかし、メールや電話でいくらでもつながれる
この21世紀に、まだ存在価値があるんだらうか。
さういふ疑念をわたしは抱いてゐたのですね。
しかし、この本を読んでその不安は吹き飛びました。
日本の多作な批評家四方田犬彦さん(著書は百冊を超える)と
香港の詩人、也斯(イェース)さんの往復書簡は
この形式が現代にも通じることを証明した小品である。
お互いの国の第一印象や街の移り変り、料理や映画、
文化の規定のされ方などを四年もかけておつとりと
論じ合つてゐるこの本を読み、ウーム、
物事は速く進めばいいといふものでもないのだなあ、
としみじみ感慨にふけつてしまつた。
ちかごろはやりのTwitterは確かに便利ですが、
深く考えることをむづかしくしてゐる面もある。
これからは便利なメディアと不便なメディアの
両方を駆使してゆくのも、ひとつの知恵でせうね。
また、隣国の文化をいかに知らないか知る必要もある。
東亜の知識人は欧米の固有名詞は共有できても
中国の詩人、インドネシアの小説家、
フィリピンの映画監督、etc……について
ごくごく基本的な知識さへ持つてないことが
本書で指摘されてゐます。不勉強に恥ぢ入るばかり。
二人のやりとりは2003年から2007年にかけて行はれた。
中国共産党が広東語言語圏の香港に対して
「お前たち自国の傳統を知らんだらう」と決めつけ
論語を北京語で朗読する運動を進めることへの
嫌悪を也斯さんが語る件など、示唆に富んでゐる。
一方四方田さんはこんなことを言つてゐる。
「世の中の多くのことは資本と利子の論理で動き、
憎悪と復讐の理念によって動機付けられています。
そのなかでかろうじてこうした悪徳から免れていると、
わたしが考えるものが、三つあります。
夕暮れを見つめることと、長い時間をかけた友情、
それから詩を読むことです」
どうです、格好いいでせう。
ちよつと気障ですが、言語を越えて通じ会うには
これくらゐのことを言はなきやいけないね。
さうだ、かうしてる場合ぢやない、
也斯さんの本をもつと翻訳するよう、
日本の出版社にかけあはなくちやあ。
2010年11月21日記
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