いつも香港を見つめて 往復書簡

  • 岩波書店 (2008年6月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784000221658

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  • 【B.J.インタビュー】四方田犬彦・著書刊行100冊突破記念!!『濃縮四方田』ザ・ベリーベスト・オブ・四方田犬彦【Book Japan】
    http://bookjapan.jp/interview/090428/note090428.html

    往復書簡 いつも香港を見つめて - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b264051.html

  • むかし、往復書簡といふものがあつた。
    (などと書くと、古老になつたやうでいい気持ちである)
    正確には今でもある。
    しかし、メールや電話でいくらでもつながれる
    この21世紀に、まだ存在価値があるんだらうか。
    さういふ疑念をわたしは抱いてゐたのですね。
    しかし、この本を読んでその不安は吹き飛びました。

    日本の多作な批評家四方田犬彦さん(著書は百冊を超える)と
    香港の詩人、也斯(イェース)さんの往復書簡は
    この形式が現代にも通じることを証明した小品である。

    お互いの国の第一印象や街の移り変り、料理や映画、
    文化の規定のされ方などを四年もかけておつとりと
    論じ合つてゐるこの本を読み、ウーム、
    物事は速く進めばいいといふものでもないのだなあ、
    としみじみ感慨にふけつてしまつた。
    ちかごろはやりのTwitterは確かに便利ですが、
    深く考えることをむづかしくしてゐる面もある。
    これからは便利なメディアと不便なメディアの
    両方を駆使してゆくのも、ひとつの知恵でせうね。

    また、隣国の文化をいかに知らないか知る必要もある。
    東亜の知識人は欧米の固有名詞は共有できても
    中国の詩人、インドネシアの小説家、
    フィリピンの映画監督、etc……について
    ごくごく基本的な知識さへ持つてないことが
    本書で指摘されてゐます。不勉強に恥ぢ入るばかり。

    二人のやりとりは2003年から2007年にかけて行はれた。
    中国共産党が広東語言語圏の香港に対して
    「お前たち自国の傳統を知らんだらう」と決めつけ
    論語を北京語で朗読する運動を進めることへの
    嫌悪を也斯さんが語る件など、示唆に富んでゐる。

    一方四方田さんはこんなことを言つてゐる。
    「世の中の多くのことは資本と利子の論理で動き、
    憎悪と復讐の理念によって動機付けられています。
    そのなかでかろうじてこうした悪徳から免れていると、
    わたしが考えるものが、三つあります。
    夕暮れを見つめることと、長い時間をかけた友情、
    それから詩を読むことです」
    どうです、格好いいでせう。
    ちよつと気障ですが、言語を越えて通じ会うには
    これくらゐのことを言はなきやいけないね。

    さうだ、かうしてる場合ぢやない、
    也斯さんの本をもつと翻訳するよう、
    日本の出版社にかけあはなくちやあ。

    2010年11月21日記

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著者プロフィール

(よもた・いぬひこ)
1953年生まれ。映画史家、比較文学研究家。東京大学で宗教学を、同大学院で比較文学を学ぶ。明治学院大学教授として長らく教鞭を執り、コロンビア大学、ボローニャ大学、テルアヴィヴ大学、中央大学校(ソウル)、清華大学(台湾)などで映画史と日本文化論を講じる。『月島物語』(集英社)で斎藤緑雨文学賞、『映画史への招待』(岩波書店)でサントリー学芸賞、『モロッコ流謫』(筑摩書房)で伊藤整文学賞・講談社エッセイ賞、『ソウルの風景 記憶と変貌』(岩波新書)で日本エッセイスト・クラブ賞、『白土三平論』(作品社)で日本児童文学学会特別賞、『日本のマラーノ文学』『翻訳と雑神』(ともに人文書院)で桑原武夫学芸賞、『ルイス・ブニュエル』(作品社)で芸術選奨文部科学大臣賞、『詩の約束』(作品社)で鮎川信夫賞受賞。主な著書に『パゾリーニ』『零落の賦』(ともに作品社)などがある。

「2025年 『隣接の遁走曲(フーガ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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