犬の帝国―幕末ニッポンから現代まで

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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000221740

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  • 直接「犬」を論じた本ではありません。
    概要については、カバー折りしろの内容紹介から以下引用させてもらいます。

    <font color="blue"><em>現代日本人にとって、今や欠かせない伴侶となった犬。
    しかしほんの150年ほど前、「野蛮な」日本犬と「文化的な」洋犬は、日本と西欧の文化的軋轢の象徴でもあった。
    そして帝国のシンボルとして「忠犬」ハチ公が顕彰され、挙国一致の戦争に多数の軍犬たちが動員された時代を経て、いまペット大国日本の犬たちは、主人たちとともに大量消費の時代を迎えている。犬という鏡に映し出された近現代日本の姿を、気鋭の米国人歴史家が鮮やかに切り取る。</em></font>

    「犬」という切り口で日本社会の近現代を新たな視点から俯瞰します。

    西洋犬との比較で日本犬を蔑み、オオカミや野犬を滅ぼした19世紀後半から、一転して日本犬を賛美するようになった1930年代。
    ここで紹介される手のひらの返しようは今から見ると滑稽ですらあり、国威発揚のために「忠犬ハチ公」や「軍用犬・金剛と那智」の美談が利用される件りには滑稽さを通り過ぎて空恐ろしさを感じます。
    過剰な「擬人化」により世間が美談に酔う様は古今東西共通。
    直近の「はやぶさ」ブームなんかにも共通したものを感じたり。

    この本で初めて知ったこともいくつかありました。
    渋谷のハチ公像はハチ公がまだ生きているうちに建てられ除幕式にはハチ公自身も出席したとか、そのハチ公像は戦時中の金属不足の折に供出され、今のハチ公像は終戦後再建されたものであるとか。
    現代の日本では、15歳以下の子供の人口より、ペットの犬と猫の数の方が多いことだとか。

    著者は、日本現代史を専門とする米国の研究者(たぶん結構若い)とのことですが、よくまあここまで調べ上げたなあというほど、日本ではすっかり忘れられたようなエピソードを拾いながら、興味深い視点での通史が作り上げられます。

    一方で編集は若干お粗末。
    序章と第一章でまったく同一のセンテンスが繰り返し使われたりしているのはまあよいとして。
    石橋湛山の没年が1973年になってたり、「南極物語」が何故か是枝裕和の映画になってたり。
    「南極物語」の監督は蔵原惟繕(クラハラ・コレユキ)。
    まさか「コレユキ」と「コレエダ」を混同してしまったとか?
    こんなのが自分にも見つけられるくらいなので、他にも事実誤認があったりするかもしれません。

  • 歴史

  • 日本の近現代史の文脈の中で犬がどのような存在であったかがわかる一冊。
    時代によって取り上げられ方が変わる犬からその時代の色がより鮮明にみえてきます。

  • ”犬は自分たちに投影されたものだけを単に映し出すばかりでなく、その振舞い、行動、文化は人間との関係を形成し、犬に関する人間の議論に影響を及ばす。・・・私たち人間が自分たちの仲間として、私たちの文化と歴史と世界に住みついているものたちの吠え語や、鳴き声やわめき声、叫び声の饗宴の価値をもっと深く認識し、より賢く判断するときが来ている、そう思うのは私だけではないだろう。” 共感度大です。いつもこのキモチを忘れずにいたい、と思います。
    2009.9に出版された本。じっくり腰を据えて読みたい一品。

  • 資料番号:011123361

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