生きたことば、動くこころ――河合隼雄語録

著者 :
制作 : 河合 俊雄 
  • 岩波書店
4.25
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本棚登録 : 108
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000221818

作品紹介・あらすじ

京都大学で読み継がれてきた貴重な記録、臨床の教え。事例検討会で語られた「生きている」ことばの数々。発見にみちたこの記録を、いま公刊する。

感想・レビュー・書評

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  • 臨床心理学者の河合隼雄氏が、事例検討会で語られた心理療法カウンセリングの見解と解説。
    実際の心理療法現場での「分からない」を分かり易く解説してくれている素晴らしい内容。

    私はどちらかと言うと、クライエントという立場で読んでいたのだけど、カウンセラーを目指している人にはとても勉強になる内容ではないかと察する。

    男性で、健康で、独身で、結婚もしておらず、子供も持っていないのに、クライエントの気持ちが分かるのか。
    同じ立場に立てなくても、「聴こう」とする姿勢、「分かろう」とする姿勢、否定せずに全て受け止めてくれる器量。これに勝るものはないのかもしれない。
    河合先生の言葉の端々から、とても人間味と温かさを感じた。
    フロイト的な見解から、アドラー的見解まで柔軟。

    結局、何かしら問題の核になるのは、幼少期の母親との関係、それによるアイデンティティの確立。なのかな。

    なかでも印象に残ったのは、プレイセラピーでの「放ったものを拾うゲーム」。

    「考えてみたら、ものすごい信頼関係を確かめるゲームでしょ」「子供にとって放ったものを拾ってもらうというのは、ものすごい確かめになるわけでしょ」
    ものを放られて、それを拾ってきてはまた投げられ・・・という赤ちゃんが養育者との間で信頼関係を構築するためにするやりとりを、プレイルームでセラピスト相手に繰り返す。これこそが、とても大事な行為であり、子どもが、セラピストのことを信用していい人なのかを見極めるために、何度も放っては取ってこさせている。
    「つまりね、放ったものを拾ってきてもらうというのは「たとえ私が捨てたとしても、あなたは拾ってくれますか?」というものすごい問いかけでね。片方がルール破りしてるわけでね。だって普通だったら拾ってもらったら「ありがとう」って言って、キープするわけでしょ。それを「私がルール破りやっても、それをあなたは許容しますか?」という問いかけだから、ものすごい確かめだと思いますね」

    そこで拒否してその遊びを中断したら、子どもはもう絶対に心を開いてくれない。

    わざと嫌われるような言動を取るのも、同じだと思う。
    成長するともっと複雑に手法を凝らして、「こんな私でも受け容れてもらえるか」を信用できそうな人に試してしまう。

    今まで信用に足る人との出会いに恵まれなかったクライエントが、ほんとうの信頼関係を築こうとしている時に、「ルール破り」を起こす。

    これ意図的じゃないのよね。防御反応的に起こしてしまう。
    自分が後々、傷つかないために、自分を守るために、先に試して確認する。
    試されるほうは、たまったものじゃないけれど。

    自閉症児が対人関係を回復していくプレセスの中の「噛む」は、他人の注意をこちらに向ける一番いい方法で、言葉を発せないために「噛む」。実はいい兆候である。
    難しいけれど、その精神を受け入れて行為だけを排除するのが理想。
    「噛まずにいられないという気持ちをわかって「噛むな」というのと、噛むのは悪いから「噛むな」というのは絶対に違うんですよ」
    という言葉にも愛があるなぁって思う。

  • 恐れ多くて感想を書くのもおこがましいけど
    1回読んだだけじゃ自分の中に何も落とせないくらい深かった。
    何度も読み返そう。

  • 実際のカウンセリングで、○という言葉を言われたら△と返す。のような事例が知りたくて借りてみたが、実際はカウンセリングの中身自体が書かれていないので、河合先生の言葉だけを読んでも「?」となってしまうことが多かった。
    ただ、中には「なるほど」と超初心者の私が思うのだから、ある程度、カウンセリングをこなしている方が読んだら、もっとわかりやすいのだと思う。

    もう少し、場数を踏んでから再度読み直そうかな。

  • 穏やかそうな河合さんですが、実はとても厳しい人だったと。いつもすごいなと思うのは、河合さんの表現方法。分かりやすいうえに深みがあるから、人を納得させる力がある言葉になるんだと思う。

  • 資料ID:W0170358
    請求記号:146.1||Ka 93
    配架場所: 本館1F電動書架A

  • 様々な事例に対しての河合先生のコメント集。ただ事例自体は書かれていないので素人が読んでいるとなんだかよくわからないなぁというのが正直な感想。所々なるほど~と思う部分もある。専門家の人が読んだらもっと意味のあるものになるのかもしれない。

  • 河合隼雄さんが京都大学の学生たちに講義した内容をまとめた本でした。
    事例研究でのコメントですので、この事例は?と事例がわかればもっと、この本の内容のすごさを感じたのかもしれません。

    でも、河合隼雄さんのカウンセリングに対する心構えや考え方が伝わってきました。

  • 本を貸すのは非常に難しい。というのは日本人ってのは、もう化されたら読まなきゃいけないと思って、面白くもないのもあるしね。本を貸す時は慎重に考える。別に読まなくても構わない。
    鏡は分身体験なんかある人にとっては非常に恐ろしいもの。
    心と体は関連していて、自我っていうrのは心と体の両方のコントールできる。で、心も身体も一つの全体として動いている。
    自我の方の動きがあんまり強くなりすぎると、体とハーモニーしなくなる。あいつに負けないようにしようと頑張りすぎて、結局はリラックスできなくなるということが起こってくる。
    結局ね、人生って考えてみたら、なんやらわけがわからないけれど怒られることってあるわけ。いろいろとみんなそれないりにあるわけだけれど、その時に守ってくれる人があるってことで深い傷にならないですむ。
    何も不安のないのは、不安神経症の人の典型。つまりそれを出したらすごくあぶないわけでね。

  • 多方面で活躍した河合隼雄の仕事の基本は、常に心理療法にあった。京都大学の研究室におけるケースカンファレンスでの河合のコメントをまとめた語録。河合の思想に直に接することができる貴重な記録。

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