イスラムを生きる人びと 伝統と「革命」のあいだで

  • 岩波書店 (2012年3月29日発売)
4.33
  • (4)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 40
感想 : 5
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784000221917

みんなの感想まとめ

イスラム社会の現状とその多様性を深く理解するための一冊です。著者は17年間の新聞記者としての経験をもとに、イスラム教や中東に対する偏見を解消し、実際の生活や価値観に迫ります。読者は、イスラムが社会生活...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ふむ

  • イスラム社会の、今

    17年間新聞記者として中東へ関わってきた著者が、イスラム理解のために著した著作である。
    イスラム教や中東に関してほぼ知らないにも関わらず、勝手に危険なイメージを持っていた。
    だが本書を読んでみて、かなりイスラムへ対するイメージが変わった(著者の思い入れにも影響を受けたのかもしれないが)。

    まず、良くも悪くもこれほど社会生活へ浸透していることに驚いた。
    それは社会発展の程度にもよるのだろうが、セーフティネットワークやイスラム法の市民権等、道徳心を失わず社会の中で活躍していることはすごい。
    また、女性の地位についても欧米や日本のような男尊女卑、とは少し異なるように思う。
    少なくとも女性は卑しいのではなく、守るべき対象として聖典へ記され、かつ細腕繁盛記のように女性が活躍する姿も記されている。このような本来の姿が、欧米の影響で男性優位社会へ歪められているのかもしれない。

    イスラムのもつ開明的な柔軟性はこれからより評価されていくように思う。

  • 「イスラム教について」の本は日本語でもたくさん読める。しかしイスラム教徒についての本はあまりない。
    ということで、その場所で長く暮らした著者がイスラム世界におけるイスラム教のありかたを描いたルポルタージュ。

    信仰をもっている人は、信仰という後ろ盾があるから安心してがんばれる。
    他人のために粉骨砕身することだってできるし、自分を正義の使者とみなして異教徒を狩ることだってできる。
    キリスト教だろうがイスラム教だろうがほかの宗教だろうがそれは同じで(多神教はもっとゆるいかもしれないけれど)、他人を攻撃する方向に傾く過激派もいれば、平和と互助に生きようとする人たちもいる。
    その根拠が信仰だから、思想で動くよりも強固だったり信仰のない人にとっては不気味に見えたりする。
    けれど理由がわかってみれば、その人たちにとっては当たり前のことなのだと理解できる。
    その「理由」を教えてくれるのがこの本だ。

    寛容も不寛容もイスラムに帰属させてしまうのはちょっと無茶なんじゃないかと思うし、「日本人はこうだと思っているだろうけれど実は~」という言い方が多いのも気になる。その「日本人は」が「日本や欧米といった先進諸国では」とほぼ同じ意味で使われる。
    日本は仏教圏なんだから、アブラハムの宗教の愛憎とは違うところにいるはずなのに。
    一見似たような偏見でも、キリスト教圏の異教徒フォビアと、日本の無知によるヘイトは違う。
    悪習は「地域の風習」、倫理は「イスラムの風習」という切り分けかたも気になる。そのわりに「地域の常識」と「イスラムの常識」を区別できていないところ(結婚観など)も気になる。

    それでも、全体的にはとても良い。
    イデオロギーで見るのではなく、人を見てイスラム世界を学ぼうとしている。


    ・宗教的な議論をしようとした宗教学者に対して過激派が「あんなことを言うなんてあいつはムスリムじゃない。ムスリムと非ムスリムの婚姻は禁じられているからあの夫婦の婚姻は無効だ」と訴訟を起こす。
    他人がお前の婚姻は無効だと訴えを起こすなんて欧米や日本では考えられないけれど云々と著者は言うが、やってるじゃん。
    「キリスト教という宗教に基づいて」同性カップルの婚姻を無効にしたり、「社会的合意にもとづいて」代理母出産や300日問題のDNAでは親子な親子の親子関係を否定したりしている。

    ・過激派の指導者へのインタビューで自爆テロについて聞く。
    なぜ?思想的背景は?という質問に、「あなたがそれを聞くのか。日本人がしたことじゃないか」と返されて筆者が言葉に詰まる。
    古処誠二『敵影』”年寄りが若者の至誠に乗じたのがそもそもの過ちなのだと二世は断言した。 「特攻など、どこの国の軍隊が正式化できる戦法だろう。これは死を受け入れる心と、その心に甘える卑しさがなければ成立し得ない戦法だよ」p114 ”
    これがちらついた。

    ・そのテロで死んでいく若者たちには遠藤まめ太さんが書いていたセクマイの自殺を連想した。
    根っこになるものがないから少しの風で吹き飛んでしまう。
    強い絶望や狂信という死に向かう強い力がなくても、生につなげる希望がないからあっさり死んでしまう。死んでしまう若者を、卑しい大人が使う。
    こういう子供たちをどうにか止めたいと願う高校の先生の言葉がつらかった。

    ・イスラムの学者が言っていた「グローバル化によってアイデンティティが失われるのではないかという不安が排外主義を招く」という話に納得した。
    世界的な右傾化・排他的なナショナリズムはグローバリゼーションのバックラッシュなのか。

  • イスラム世界の一端が見えるのが良い。

  • イスラム教に興味を持って。読みやすいと思ったらジャーナリストの方でしたか。後半興味を失って完読できなかった

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

かわかみ やすのり ジャーナリスト、元朝日新聞中東アフリカ総局長。
著書に『イラク零年 朝日新聞特派員の報告』(川上泰徳 著、朝日新聞社、2005年)、『現地発エジプト革命 中東民主化のゆくえ  岩波ブックレット』(川上泰徳 著、岩波書店、2011年)、『イスラムを生きる人びと 伝統と「革命」のあいだで』(川上泰徳 著、岩波書店、2012年)、『中東の現場を歩く 激動20年の取材のディテール』(川上泰徳 著、合同出版、 2015年)、「紛争地を抱える中東の事実を見る「目」の役割 川上泰徳所収『ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか  取材現場からの自己検証  集英社新書』(共著:危険地報道を考えるジャーナリストの会 編、集英社、2015年)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない グローバル・ジハードという幻想  集英社新書』(川上泰徳 著、集英社、2016年)、「「アラブの春」は中東危機を解決したのか? 川上泰徳」所収『21世紀、大転換期の国際社会 いま何が起こっているのか?』(共著:羽場久美子 編、法律文化社、2019年)、『シャティーラの記憶  パレスチナ難民キャンプの70年』(川上泰徳 著、岩波書店、2019年)、『自己検証・危険地報道  集英社新書』(共著:安田純平、危険地報道を考えるジャーナリストの会 著、集英社、2019年)、「中東でなぜ難民が出続けるのか?」所収『移民・難民・マイノリティ 欧州ポピュリズムの根源』(共著:羽場久美子 編、彩流社、2021年)、『ハマスの実像  集英社新書』(集英社、2024年)などがある。

「2022年 『戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川上泰徳の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×