いま、「憲法改正」をどう考えるか――「戦後日本」を「保守」することの意味

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000222006

作品紹介・あらすじ

安倍首相が意欲を示す「憲法改正」。その憲法観・歴史観にはどのような特徴があるのか。明治以来の憲法論議や戦前の立憲政治の経験、戦後憲法史をふり返りながら、日本社会がこれまで憲法をめぐる問題にどのように向き合ってきたのかを考える。その上で、自民党「改正草案」の持つ意味を読み解く。現在の改憲論はこの社会をどのような方向へ連れてゆこうとしているのか。

感想・レビュー・書評

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  • 「決まらない」のか、「決めさせてもらえない」のか、そこには決定的な違いがある。
    結論を急ごうとする裏に何があるのかをあまり考えない世相に警鐘を鳴らしている。

    無思慮に結論を出す(又は出してもらう)リスクを考えてほしい。

  • 樋口陽一『いま、「憲法改正」をどう考えるか 「戦後日本」を「保守」することの意味』岩波書店、読了。安倍首相が力をいれる憲法改正と、なし崩し的にその雰囲気に呑み込まれる世相の何が問題なのか。本書は明治以来の立憲政治と憲法史の伝統から、その問題点を撃つ。要を得た警世の一冊。

    「自国の先達の残した最良の過去を--その挫折の歴史とともに--記憶し、それを現在に生かそうとしないことを、『保守』と言えるだろうか」。立憲主義と天賦人権論の否定にみられるエスノセントリズムは、保守とは逆の幼稚な根無し草といってよい。

    短著ながら、自民党憲法草案の腑分けと問題の指摘は的確であり、「戦後レジームからの脱却」は、戦後日本だけでなく、近代日本の伝統と挑戦の否定でもある。酷評が多いが、現在の立ち位置を確認し、明日を展望する一冊。おすすめです。

    関連記事→ 1)改憲は戦後の知恵壊す 「96条の会」結成 樋口陽一さん - インタビュー:朝日新聞 http://book.asahi.com/booknews/interview/2013061200002.html  2) ニュースの本棚 http://book.asahi.com/reviews/column/2013063000002.html

  • 323.14||Hi

  • 「立憲主義」「個人の尊厳」。大学時代に憲法の講義で聞いたものだったが、先日の樋口先生の講演会を機に本書を読み、あらためてその価値を再認識している。
    本自体はそんなに厚くはないが、内容はきわめて厚く、そして先生の思いも熱い。近代、現代の歴史知識を動員しながら、何度か読み返し、なんとか読了。集団的自衛権にも言及されている部分もあり、昨今の社会の動きを見ながら、また読み返す。そういう意味では、本書を終戦の日に読了したのも、たまたまではないのかもしれない。
    法的知識も必要ではあるが、近現代史に興味ある方であれば十分トライできる書。ぜひ一読をお勧めしたい。

  • 「<3.11>後の未曾有の混迷の中で、私たちの公共社会の骨組=構造(constitution)をそれでも支えてきたものは何だったか。憲法(Constitution)という観点から見るならば、とりわけ三つのことをとり出したいと思う。
     何より根本は、ここ数年「無縁社会」という言い方さえされていたのに、共感しあう無数の個人ひとりひとり(一三条)が自分の自分たち自身の気持ちで連帯し合ったことの貴重さ。そして、「象徴」(一条)としての天皇が皇后とともに被災者を励まし、救援に力を尽くす人びとをねぎらう、その存在の確かさ。さらに、九条の下に置かれた自衛隊員の、誠実で効果的な救援・復旧活動が、自治体公務員・警察官たちとともに住民の信頼にこたえたこと。
     ところが、そのどれについても、「改正草案」のめざす方向は多かれ少なかれ対照的である。第一条では「象徴」に先立って「元首」が登場する。国民と皇室が新しい伝統を共につくりあげようとする歩みにブレーキをかけるのか。第九条の戦力不保持規定は削られ、「機密の保持」に護られた「国防軍」が集団的自衛権の行使として出かける先は地球規模に及ぶ可能性がある。人を殺すことを目的としない平和建設部隊として国内・国外で貢献活動をしてきた九条下の自衛隊の歴史は、大きく転換することとなる。
      何より大きな論点として、一三条の「個人」は、「天賦人権説に基づく規定振りを全面的に見直」す一環として消える。自分の気持ち、自分の考えで動く連帯は、日本社会の中での「個人」の発見ではなかったのか。「原発やめよう」の市民の集まりのこれほどの拡がりは、明治以来の先人たちが悩んできた「個人の不在」、「大勢順応」という日本社会の気質に新しい風を吹きこんでいる。その風を逆むきに吹き返してよいのか。
      ここで挙げた三点は、実はそのどれも、戦後社会の中で、はじめから難なく出来あがってきたものではない。「個人」に対しては、集団主義的気質が「村」「家」の共同体や「会社人間」のかたちをとって息ぐるしくとり巻いていたし、「個人」より「階級」を基本として世の中を考える立場も決して弱くはなかった。「象徴」という言葉に示される皇室のあり方には、過去に執着する勢力とより新しい展望を考える人たち双方からの異議があった中で、戦後社会がつくり出してきた安定の重みがこめられているはずである。
     九条についてはくり返すまでもなく、戦後政治の中で最大の争点であり続け、その時々の微妙な均衡点を形成しつつ、いま現在のすがたがある。
     これら三つの積み重ねの意味を正面から否定し、あるいは相対化する「草案」に対しては、少なくとも「発車を見合す実践的英知」を、というのがわたしの考えである。」

     現在の自民党憲法改正案(2012.4.27決定)は戦前の立憲主義の流れや、戦後日本人が戦争という犠牲を払って勝ち取り、愛しんできた現憲法の戦争放棄、主権在民、基本的人権の尊重の精神を蔑ろにするものである。

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