ヴォルテールの世紀 精神の自由への軌跡

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000222105

作品紹介・あらすじ

「考える自由は人間の生命です」-絶対王政が崩壊に向かい、革命への予感が兆す一八世紀フランスにあって、ヴォルテールと名乗った男は、そう記した。生涯にわたって文化的に、そして政治的に巨大な存在であり続けたヴォルテールは、古代から同時代に至る文学・思想・芸術の圧倒的な教養を背景に、宗教権力や盲信と闘い、農奴解放のために奔走し、ついにはフランスの僻地フェルネーに共同体を建設する。彼を「ヴォルテール」たらしめたもの、それは「人間の生命」である精神の自由にほかならなかった。本書は、パリを追放され、ベルリンの宮廷に招聘されたヴォルテールがプロシアを離れて以降の後半生を、一万数千通に及ぶ書簡を渉猟しながら克明に描き出す。そこに刻まれた激しくも伸びやかな軌跡は、この世紀のヨーロッパが生み出しえた最良の精神を今日に甦らせる。

感想・レビュー・書評

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  • ヴォルテールがフェルネー(近辺)に居を移してからの時期に焦点を当てた本。有名な著作としては『寛容論』などがこの時期にあたるが、本書ではヴォルテールの著作の分析はむしろ後景に退き、書簡のやりとりを通じた彼の多彩な交流、フェルネー時代における実業家的側面、はたまた大コルネイユの甥の娘を養女に迎えての父親としての側面といった、人間ヴォルテールを象徴するようなエピソードが主な叙述の対象となっている。ヴォルテールの抽象的思想よりも、書簡に見られる洒落た言い回し、適切な引用など、啓蒙主義的なヴォルテール像とフランス古典主義の典雅さを引き継いだヴォルテール像の両方が楽しめる。全体の軸となっているのがデファン夫人との書簡のやりとりであるが、彼女はフランス古典主義の正嫡としてのヴォルテールを評価していたのであって、ヴォルテールが啓蒙主義者の領袖に数えられることにはそれほど好感を持っていなかった。それにもかかわらず生涯を通じて彼女との交流が続いたことは、まさしく「偉大なる世紀」と啓蒙の世紀に股をかけるヴォルテール像を象徴している。

  •  序にかえて。ヴォルテールが終生にわたって文通したデファン侯爵夫人の手は、簡潔にして水のように澄みわたる、十八世紀に極められたフランス語散文の頂点を綴った。旧世界が終わり始める奔放の世にあって、気まぐれなプロシア国王にあらぬ不興を買い、ポツダムを後にした五十九歳のヴォルテールは、祖国フランスを目前にしてプロシア国王の仕打ちに苦慮した。

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著者プロフィール

1937年、東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学名誉教授。専門は、フランス文学・思想。主な著書に、『プルースト・印象と隠喩』、『プルースト・夢の方法』、『ヴォルテールの世紀』など。主な訳書に、『プルースト評論選』、ロラン・バルト『批評と真実』など。

「2015年 『モンテーニュ よく生き、よく死ぬために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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