宇宙開発と国際政治

著者 : 鈴木一人
  • 岩波書店 (2011年3月31日発売)
4.67
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  • 本棚登録 :61
  • レビュー :6
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000222174

作品紹介・あらすじ

宇宙開発は、冷戦期を通じて米ソの軍拡競争の一環として進められてきた。冷戦終焉から20年を経て、各国は今、何を目指して宇宙開発に取り組むのか。宇宙を語る際にありがちな、「夢」や「希望」といった美化されたイメージを離れ、また、宇宙の軍事利用を告発するセンセーショナリズムとも一線を画し、宇宙開発と国際政治の現実を分析する。

宇宙開発と国際政治の感想・レビュー・書評

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  • 各国の宇宙開発の歴史と現状を「ハードパワー」「ソフトパワー」「社会インフラ」の3形態に分類しつつ、国際政治学の視点から分析。国家間の技術協力や安全保障、さらには今後の宇宙開発の方向性について議論がなされていた。

    テーマが私的な興味関心に合致していたこともあり、非常に楽しく読ませていただきました。

  • 「宇宙」×「冷戦」という大好きなテーマでどんどん読めました。宇宙開発というとロマンチックなイメージがあるけど,現実はそんなもんじゃないよという本です。宇宙ロマン:工学:国際政治=1:2:7くらいの配合で文体も固め。個人的にはもう少しロマンがあっていい気がしましたがいい本でした。

    (面白かったところ)
    ◆宇宙開発の目的は「ハードパワー」「ソフトパワー」「社会インフラ」「外交上のコモディティ」「公共事業」に区分するとわかりやすい。たとえば有人宇宙飛行は国威発揚が主目的で実利的な見返りはほとんどない(ソフトパワー)から,財政的制限をこうむりやすい分野になる。また,冷戦前期のアメリカがソ連のスプートニク打ち上げやライカ犬の実験,ガガーリンの宇宙飛行にショックを受けた理由も,「ミサイルギャップ」(ハードパワー),「アメリカの科学力の敗北」「ソ連の第三勢力への影響力拡大」(ソフトパワー),「ソ連スパイへの暗号の伝達」(社会インフラ)などと分けて考えるとわかりやすくなる。
    ◆近年の宇宙開発は「ハードパワー」「ソフトパワー」獲得の手段でなく,「外交上のコモディティ」として用いられる「社会インフラ」としての機能が強くなってきている。理由:①「市場の失敗」である宇宙開発は基本的に政府の強力な指導の下で推進されるため,急激な技術の陳腐化が進みやすいから。②宇宙技術は物理的に越境的・公共財化しやすいから。③国際政治の多極化の影響。派手な宇宙開発を進めていた先進国が財政難に苦しんでいるのに対し,発展途上国は成長と共に実利的な宇宙技術を必要としているから。
    ◆米ソが「ハードパワー」「ソフトパワー」の獲得にこだわってきたのに対し,欧州やインドは「社会インフラ」の構築を早い段階から目指してきた。また,中国は2007年に衛星破壊実験(ASAT)など行っているが,そうした動きはアメリカの「ハードパワー」志向の政策に対するデモンストレーションで,基本的には宇宙技術を使って資源保有国との関係を強化するなど「社会インフラ」としての利用が主である。
    ◆日本は技術ありきの開発を進めたことで,宇宙開発が明確な目的のない「公共事業」と化していた。しかし近年は中国の台頭やテポドン・ショックを受け,関係機関を統合してJAXAに再編し,「宇宙基本法」(2008)を制定するなど変化の兆しがある。
    ◆GPSはアメリカ軍所有。大韓航空撃墜事件(1983)をきっかけに,民間のインフラとしての利用が進んだ。しかし基本的には米軍の所有物なので,いつ利用が制限されてもおかしくない。ユーゴ内戦時のGPS制限などを受けて,欧州やロシアでは独自システムの構築を目指している(ガリレオ計画,グロナス)。
    ◆現在有人宇宙飛行を行う手段はロシアが保有するソユーズのみ。再利用可能なロケットとして開発されたアメリカのスペースシャトルは,本来の目的である火星探査への目途が立たないので引退。同じ目的でつくられた宇宙ステーションも運用終了予定(終了時期は延長中)。

  • 技術面からの宇宙開発の書籍はよく見かけるが、本書は政治の視点から宇宙開発を読み解いたものである。各国の宇宙開発の現状とそれに至までにどのような遷移があり、国の情勢とどう関係しているのか幅広くまとめてある良書だと思う。分量はあるが、それを感じさせないほど内容は新鮮で面白い。本文でも触れられているが、日本では宇宙開発は技術研究とその成果が度々クローズアップされて来ているが、こうして世界の中で宇宙開発がどのように行われて来たかというのを俯瞰してみると、日本の宇宙開発の歴史はかなり異質なのだと認識させられた。

  • 渋谷の大学図書館にしかおいてない。8章の「グローバル・コモンズとしての宇宙」だけを読んだ。

    宇宙空間にはいくつかの国際社会に付託された問題がある。まず静止軌道、赤道上空の静止軌道は有限のリソースであり、また衛星と地上を結ぶ電波周波数帯もまた有限である。
    次に地球観測の問題、宇宙からの偵察が引き起こす議論は「リモートセンシングに関する原則」によってある程度自由化された。
    そして軌道の管理がある。デブリによる軌道の汚染をどう規制するかという問題である。
    最後に宇宙の兵器化あるいは宇宙空間の軍事利用を止められるのか?という問題が浮上する。

    宇宙の兵器化の現状は以下のとおりである。
    ・まずASATは現在の国際法上、違法ではない。宇宙条約第4条に月その他の天体上に軍事施設等を設置することが禁止されている。また軌道上に大量破壊兵器を配置することも禁止されている。(軌道上の通常兵器は禁止されていない)

    時間切れ、残りは図書館のコピー機でコピー

  • タイトルの通り宇宙開発に関する歴史が国際政治に着目して書かれている。
    この手の本にしては2013年現在比較的新しく、なおかつ宇宙開発初期からの歴史を追っているため、大変勉強になった。
    図書館で借りたが一冊買っておきたいくらいだ(値段が高いのでちょっと手が出せないのだが。)。
    詳細はそのジャンルに特化した本を読むとして(参考文献も本書に明記されている)、概論を勉強するのに最適な一冊だと思う。

  • 「はやぶさ」の快挙等、近年日本の宇宙開発に世間の注目が集まっています。
    本書はこの宇宙開発を各宇宙先進国毎に政治的側面、社会的ニーズなどの視点から分析し、最後に今後の国際的な宇宙開発の展望を述べた内容となっています。

    著者は序章において本書における分析のキーワードとして

    ・ハードパワー
    軍事面での宇宙利用

    ・ソフトパワー
    国家の国際的評価の向上や国内に対する政権の正当化目的での宇宙開発

    ・社会インフラ
    社会的ニーズを満たす手段としての宇宙開発
    (例:インドにおける放送衛星開発)

    ・公共事業
    失業対策としての宇宙開発
    (例:アポロ計画後に発生したNASAの余剰人員カットの回避を目的とした宇宙開発)

    の4つを挙げており、以降、第一部(1章から6章)でこれらを用いてアメリカ、ロシア、ヨーロッパ、中国、インド、日本の宇宙開発史を分析し、それぞれの国家(国家群)が持つ国内事情や外交関係が、その国家(国家群)の宇宙開発の行方に影響を与えていった過程を解説しています。

    そして第2部(7章から終章『9章』)で

    ・デブリ(宇宙ゴミ)対策
    ・宇宙先進国が非先進国に外交的、商業的に提供する人工衛星、もしくはそれを活用したサービス
    ・非先進国同士による共同宇宙開発

    等に触れつつ、これまで地上の政治にはどことなく縁遠い存在であった宇宙開発が、
    今では国際政治や国内政治の双方に(そして当然ながら私たち個人の生活にも)影響を与える存在となりつつある現状を解説しています。

    著者はこの変化を踏まえ、ガガーリンの偉業から50年以上たった今、今後の宇宙開発は実用性、信頼性、低価格を重視する実利的なもの(例えると家電製品の開発の様なものでしょうか?)へと変えるべき時期に達していると結論付け、本書を締めています。


    本書で解説されているアメリカの宇宙開発史は、正直に言えばこれまで様々な所で触れられてきた内容の焼き直しと言った感じです。

    またロシアの宇宙開発については、今ではそれを専門的に解説している「ロシアの宇宙開発史」(冨田信之/著)と言う書籍があり、同国の宇宙開発史について興味をお持ちであればそちらを読んだ方が良いでしょう。

    #上記は紙面の問題もあり仕方がないのでしょう。

    しかし、その他の内容、ヨーロッパや中国、インドの宇宙開発史についてはそれらを解説する日本語資料は中々お目にかかれないのではないかと思いますので、それらが比較的コンパクト(しかし要所はきちんと押さえている)に解説している本書は、その点だけでも価値があるかと思います。

    またこの点に関しては非宇宙先進国の取り組みや国際的なデブリ対策の現状等についての解説も同様です。

    読者の宇宙開発の現状認識を深めてくれる内容となっていますので、宇宙開発に対する認識が「宇宙開発=人類の未来」と言ったある種、夢やロマン的なものが多くを占めている場合、それを修正するのに役立つ一冊です。

    正直に言えば、時折、もう少し内容を深めてくれればと少し残念に感じた個所もありましたが、全般的には間違いなく興味深い内容です。

    おすすめです。

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