ウィリアム・モリスの遺したもの デザイン・社会主義・手しごと・文学

  • 岩波書店
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000222334

感想・レビュー・書評

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  • モリスについて体系的に軽く知りたかったのだけど、めちゃくちゃ引用元がっつり記載した専門書だった(^^;
    表紙の壁紙「クレイ」のかわいい柄に騙されたー。

    この本を読んで初めて、大正時代にマルクスからのモリスやラスキンといった社会主義思想が日本でブームになっていたことを知った。

    民藝運動の柳宗悦がモリスに関係するのはわかるけど、宝石で有名なミキモト、宮沢賢治まで出てくると思ってなかったので、驚くと共にモリスの仕事の幅の広さよ…とさらに影響範囲の広さに驚嘆した。

    どちらかというと、アーツアンドクラフツ運動や職人のモリスより、作家や社会主義者としてのモリスに焦点が置かれていて、1870年代以降の記述と、日本の話が多かった。

    ジュエリーミキモトの内情をこんなところで知ることになろうとは…
    御木本家では、「ラスキン」は禁句になっただろう…。

    宮沢賢治も作品は知っていたけど、彼自身の事はあまり知らなかったので、37歳で亡くなっていたとか、民藝活動っぽい農民芸術運動を行っていたことも初めて知った。
    (モリスの言葉「芸術の回復は労働に於ける悦びの回復でなければならぬ」がメモに残っていた)
    戦争のせいで思想運動が制限されなければもっと活動できて、素晴らしいものができていたのかもしれない。

    モリスの書いた「世界のはての泉」の序章は、自分の結婚生活に関する不満?と思えるような内容なのだけど、彼が現代のファンタジー作家に与えた影響が非常に大きいこと(指輪物語を書いたトールキンやナルニア王国を書いたC・S・ルイスが愛読してたんでっせ!?)
    を知った。
    今や異世界は一大ジャンルになっているけど、当時は空想の物語は逃避的で自己満足な営みとみなされていたから(今でもそうか…)、詩人としての作品の方が評価は高かったそうな。

    モリスは一部の特権階級に独占されていた芸術(絵画、音楽)というカテゴリーを壊すために、中世主義から、生活に即した工芸美術の地位向上を目指し、
    産業革命で台頭してきた科学技術による利潤優先から人や自然を優先する営みに回帰することを目指したのかな。
    でも、
    →人の技術(手仕事)や天然素材の重要性を広めたい
    →手仕事の希少価値が当たり結果一部の富裕層しか手に入れられない(モリスの矛盾)問題が発生
    →経済活動は政治と切り離せない
    →政治活動と経済活動の並走
    →年齢とともに精力的な活動は控えて、趣味の図書出版に乗り出す

    モリスの持っているお坊っちゃん気質(遺産相続後は株の配当だけで食べていけた)が、安かろう悪かろうを許さなかったのか、もともとの性格的なものかわからないけれど、理想が高かったのは間違いないと思う。
    あと、モリスと仲の良かったアーネストが女性嫌い(ミソジニスト)だったのも、彼の結婚生活が上手くいかなかった理由の一つでは…?と思わなくもない。

  • とっても気になる 去年から→『ウィリアム・モリスの遺したもの デザイン・社会主義・手しごと・文学』川端康雄(岩波書店)一見別々な活動に通底する思想と仕事の流儀を追い、さらに柳宗悦・宮沢賢治ら影響を受けた日本の芸術家・思想家たちの軌跡をたどる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/676643

  • モリスのデザインについては好きで知っていたけれど、詩人だったとか政治運動をしていたとは知らなかった。
    日本に与えた影響もそれなりにあったみたいで、それにも驚いた。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00260662

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著者プロフィール

日本女子大学文学部教授。英文学専攻。明治大学大学院文学研究科博士後期課程退学。主な著書に『増補 オーウェルのマザー・グース――歌の力、語りの力』(岩波現代文庫、2021年)、『ジョージ・オーウェル――「人間らしさ」への讃歌』(岩波新書、2020年)、『葉蘭をめぐる冒険――イギリス文化・文学論』(みすず書房、2013年)、『ジョージ・ベストがいた――マンチェスター・ユナイテッドの伝説』(平凡社新書、2010年)、主な訳書に、オーウェル『動物農場――おとぎばなし』(岩波文庫、2009年)、『オーウェル評論集』(編、共訳、平凡社ライブラリー)などがある。

「2022年 『オーウェル『一九八四年』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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