- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000222457
作品紹介・あらすじ
冷戦後の史料公開や研究の深化により、ホロコーストの「傍観者」=現地社会の加害の面が明らかになった。世紀末ウィーンに一八万人いたユダヤ人の苛烈な追放を可能にしたものは何か。多民族帝国から近代国民国家への激震の中、被害と加害のはざまを揺れ動いたオーストリアのホロコーストを、戦後の歴史政策も含めて描き直す
感想・レビュー・書評
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オーストリアのウィーンにはユダヤ人社会があり、反ユダヤ主義も根付いていた。そして、それは大恐慌からのナチの台頭、合邦により、拍車がかかることになる。
戦後、オーストリアはユダヤ人迫害に対する補償を拒否し、公式に認めることになるのは90年代以降である。これは被害者であり加害者でもある複雑な経緯が起こしたものでもあり、それらを紐解くのが本書となる。
本書ではアイヒマンのウィーン時代が詳細に描かれている。アイヒマンといえば、どうしても「ユダヤ人問題の最終解決」以降が語られがちなので、なかなか貴重な文章ではないかと思う。ウィーン時代のアイヒマンは移住計画において残酷な成果を上げる。
そして、アイヒマンとセットで引かれやすいのがアーレントだが、本書でも当然のように名前が出てくる。本書においては、ユダヤ人の道徳的崩壊という点において注目されている。ユダヤ人迫害に関して、ユダヤ人のなかにも協力者がいたということは、つとに知られてはいるが、こちらもあまり触れられないテーマではある。
総じて、被害と加害が織りなす複雑な歴史を概観しており、単純な二項対立には回収されまいとする文章である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ふむ
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オーストリアの歴史やその周辺の20世紀初頭の情勢が読みやすく書かれていると思います。レーヴェンヘルツとムルメルシュタイン。