演劇 vs. 映画――ドキュメンタリーは「虚構」を映せるか

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000222884

作品紹介・あらすじ

『選挙』『精神』『Peace』と続々話題作を生み出している想田監督が次なる被写体としたのは、平田オリザ率いる劇団・青年団。気鋭の映画作家はこの「プロの演劇集団」とどう格闘したのか?四年に及んだメイキング過程を明かす書き下ろしに加え、豪華メンバーとの対話を掲載。ドキュメンタリー論の新たな地平を開く。

感想・レビュー・書評

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  • 778.7

  • 中を作りこむのもいいけれど、それがどう見えるかが最終的には一番大事。
    間をいかに活かすのか?
    それが問題です。

  • 『演劇1』『演劇2』それ自体が観察という手法を用いたドキュメンタリーであるわけだが、本書はそのドキュメンタリー映画のドキュメンタリーに位置づけられる。

    こういった入れ子構造は本書においても随所に出てくるキーワードである。平田オリザ氏が定義する「ペルソナ」に端的であるが、私達は普段の生きている状態ですでに「演技している」状態にある。その場や相手に応じた役割を演じている複数の自分(ペルソナ)が重なって一人の人間になっている。

    つまり、ドキュメンタリーはありのままの人間の姿を捉えている前提ではあるが、そもそも「素」の人間など損存在しないのではないか、ならばこの「ドキュメンタリー」が映している人間は数ある「虚構」のひとつにすぎないのではないか。

    しかし人間の姿がペルソナの集合体である以上、演技している状態の人間を映し出すことそれ自体がドキュメンタリーとなる。ゆえに「ドキュメンタリーは虚構を映せるか」という著者の深層テーマが導き出される。これは映画撮影を通じて得られた重要な指摘である。

    映画みたいなー。

  • むう。映画を観てから読むべきである…。

  • "『選挙』を見ていたのに、なんで想田さんの撮影を受け入れたんですか。どう描かれるかわからないのに」と平田さんに訊いたんですね。そしたら平田さんは一言「いや、コメディのヒーローになりたくて」って言ったんです。"

  • 想田監督によるテキストだけでなく青年団メンバーや岡田利規さん、映画コメンテーターとの対談も。
    いろんな方向から「演劇1」「演劇2」とはなんだったのか?を深められる。
    想田監督の映画はいつも映画単独+書籍と合わせて、で2度おいしい。

  • 昨秋に映画「演劇1」「演劇2」を鑑賞。その後、図書館でこの本を予約。

    どういう思いで撮ったのか、編集したのか。
    オリザさんや青年団、美術スタッフ、映画批評家、演劇人との対談。
    どこからが素で、どこからが演じているのか。
    普通の日常生活でだって、殆どの人は色々な仮面をかぶっているらしい。
    誰かの夫や妻であり、誰かの子供でもあるし孫であることもある。親で祖父母のこともある。
    マンションや町内会などの役員をしているけど、他の集まりではそうでなかったり。会社などの中でも何らかの役割を演じている。
    その仮面の総体が「自分」だと。
    映画の中でも触れられていたこの部分が一番気になりました。

    読み終わったら、また演劇1・2が見たくなりました。
    これが想田監督の狙いかもしれません(笑)

  • 普段好きで公演を見ている青年団を取り上げた映画があるというので、
    観たところ、ドキュメンタリー映画にとても興味が湧いたので、
    本を読んでみた。

    映画を見た時、上映時間に驚き、四年くらい前の映像なことに驚き、
    完成度に驚き、ということは映像自体の時間はきっと膨大で、
    取捨選択に大変な時間がかかってそう、ということでまた驚き、
    だったのだが、その大変な編集をどのように進めたのかがわかった。

    あの長い上映時間は、実は観て得られるものに比べたら、
    充分短いんじゃないかと思った。
    あの上映時間で、青年団の活動をあんなに面白く、
    濃密なかたちで見ることができたことは貴重だと思う。
    自分の目と耳で、青年団の活動を間近で観察できれば、
    自分なりの解釈で色々なものを受け取れるだろうけど、
    そんな機会に恵まれないし、時間もかかるし、
    しかしこの映画は、想田監督という視点を通して、
    ずっしりと情報を受け渡してもらえるのだ。

    個人的なことだけど、想田監督が青年団に興味を持った経緯に、
    すごく同意した。

    「虚構」のことについては、また改めて考えてみたいと思った。

    それから、岡田利規さんとの対談で、
    二人ともしっかり睡眠時間を取らないとダメなタイプということがわかり、
    なんだか安堵した。

  • 私にとっての演劇は、虚構を通じてリアルへと近づく営みだと言ってもいい

    現実に悲劇的な出来事が起こっても「悲しい」という感情すら出て来なかったりするのに、映画で見ると簡単に泣いたりする。それは人間というものが、一旦物語っていうか「解釈」を通さないと、いろんなことが認識でいきないってことなんじゃないかと思う。物語や言葉になった瞬間に、ようやく実感が沸く

  • 演劇1・2を観てから読了。場面の必然性が浮かび上がってきて非常に興味深かった。

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著者プロフィール

1970年、栃木県生まれ。映画監督。東京大学文学部宗教学科卒。ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒。台本やナレーション、BGM等のない、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。監督作品に『選挙』『精神』『peace』『演劇1』『演劇2』『牡蠣工場』『港町』『The Big House』『精神0』等があり、海外映画祭等での受賞多数。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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