大人の条件: 社会力を問う

  • 岩波書店
2.00
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000223690

作品紹介・あらすじ

教育改革論議に何が欠けているのか。子どもの危機は大人不信によって深まっていないか。「他者」に背を向け、心から「他者」を追い出している子どもたちの現状を直視しなければ、社会が再構築される可能性はない。混迷する現代を自らどう生きるのか、いま、「大人」たちは決断を迫られている。「社会を構想する力」「人が育つ環境」を求め、教育社会学者と評論家が熱く語り合う。

感想・レビュー・書評

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  • 以前テレビのショートドラマで「大人免許」がどうこうという話があった。SMAPの中居くんがその免許を持っていなくて映画館に入れない。その上逮捕されて、大人になるための試験を受けさせられる。電車で席をゆずったり、悩んでいる人の相談にのったり、人のために行動できるかどうかを問われていたと思う。冗談のようだけど、本当にありそうなこわーいお話。本書とそのドラマとは何ら関係ありません(たぶん)。2人の著者についてよく知っているわけでもなかったのだけど、新聞広告でタイトルを見てちょっとひかれるものがありました。しばらく忘れていたのだけど、たまたま図書館で見つけて借りてきました。これは大正解。買い直してもう1回読もうかと思うくらい。僕がぼやーと考えていたことを本書のなかで2人がはっきりと言葉にしてくれています。僕自身、いま子どもたちに何を教えていかないといけないのかということは漠然とだけどずっと考えてきました。2002年から「生きる力」を身につけるためにと、「総合的な学習の時間」が導入されます。「生きる力」・・・いい言葉だけど何となく病気に打ち勝つとか生物的な感じが入ってしまう。著者の1人、門脇氏は「社会力」という言葉を使う。2年前、岩波新書から同じテーマで1冊出されているのだけど、それは見逃していました。人間が2人以上いれば社会ができる。僕は君がいるから僕になれる(「かんがえるカエルくん」が言っている。いわむらかずお著、福音館書店)。人間はとうてい1人では生きていけません。社会のなか、いろんな人と関係を築きながら生きていきます。どのような関係を築いていくのか、社会のなかでどう生きていくのか、そこで必要になってくるのが「社会力」です。学校や塾ではたぶん「学力」をつけることに重点を置いてきたと思います。「学力」というのは大人になってからでも自分にその気さえあれば身につけることができます。いくつになっても勉強はできるのです。しかし、子どものころに「社会力」をしっかり身につけていないと、とんでもない大人になってしまいます。自己中心的。政治家にだって、大企業の社長にだって、そんな大人は五万といるのです。そのようすを見て、きっと子どもたちは大人になるのがいやだと思うのでしょう。では、どうすれば「社会力」を身につけることができるのでしょう。1つには「総合的な学習の時間」があります。担当する先生は確かに大変なのです。エネルギーが必要です。この授業にはテーマを何にするのかによらず(英会話とかパソコン教室なんかにするのでなければ)社会と関わっていかないといけません。そんななかで子どもたちは何かを見つけていくのでしょう。さらに、僕が特におもしろいと思った2章では2人の学生時代の寮について語られています。僕自身の経験と重なるところがあってとてもおもしろかった。その中にも「社会力」を身につけるためのヒントがかくされているようです。3章には「社会力」があると思われる人が具体的にあげられています(その中で1人僕が好きなのは福島瑞穂さん)。そういう人たちの言動を見ていくのも勉強になるのでしょう。本書を読んで「社会力」についてじっくり考えてみて下さい。

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著者プロフィール

門脇 厚司(あどわき あつし)
1940年生まれ、山形県出身。1970年、東京教育大学大学院教育学研究科博士課程修了。専門は教育社会学。筑波大学名誉教授。筑波学院大学学長、つくば市教育長等を歴任。
主な著書に『子どもの社会力』『社会力を育てる』(以上、岩波新書)、『学校の社会力』『親と子の社会力』(以上、朝日選書)、『社会力がよくわかる本』『社会力再興』(以上、学事出版) 、『社会力の時代へ─互恵的協働社会の再現に向けて』(冨山房インターナショナル) ほか。

「2020年 『社会力育ての現場を訪ねて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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