- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000224789
作品紹介・あらすじ
一九九〇年代後半から加速度的に顕在化した雇い方・働かせ方に関する企業労務の展開からもたらされた、雇用形態の多様化、ワーキングプアの急増、働きすぎの人たちと働けない人たちの共存、労働条件が悪くても声をあげられないこと…つまり、"労働問題"こそが、日本をまぎれもなく格差社会とさせているのだ。格差社会論はこれまでも数多いが、労使関係の視点から「労働そのもの」をみつめた議論はいまだなかった。本書は、それをみつめつづけてきた著者だからこそ可能となった新しい格差社会論であると同時に、労働研究の到達点から語られる"日本の労働"入門でもある。
感想・レビュー・書評
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本書の発行は2007年と、少し古い。筆者は、発行当時、甲南大学の名誉教授だった方。本書の執筆の意図を筆者は、下記のように記している。
【引用】
およそ1990年代半ば以降、現在の日本はまぎれもなく「格差社会」の方向に傾いています。その要因はなによりも、雇い方、働かせ方に関する企業労務の特徴的な展開と、それによって強いられる競争にやむなく一人ひとりで適応しようとする労働者のビヘイビアにほかなりません。しかしそれゆえにこそ格差は、働く人びとの連帯的な営みと市場主義を規制する政策によって是正可能なのです。
【引用】
上記の「1990年代半ば以降の企業労務の特徴的な展開」とは、例えば、非正規雇用の急増とか、成果主義的な個人処遇。これは、企業労務とは少し離れるが、大手企業と中小企業の処遇格差の維持・拡大などをあげており、これが、日本を「格差社会」の方向に導いたとしている。数値等を用いて、それを説得的に説明している。
ただ、「格差がある」とか「格差が大きくなっている」という「状況」は数値を用いて説得的に説明しているが、それが、本当に「1990年代半ば以降の企業労務の特徴的な展開」を主因とするものなのかの説明は、説得的とまではいえないし、なぜ、そのような特徴的な展開を企業労務がとってきたのかの説明も不十分である。
ということなので、本書は、問題提起の本だ。問題提起の本としては、十分に説得的なものだと感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ゼミ用。
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熊沢誠は労働組合側に立って論評する数少ない学者である。しかし、労働組合の力が低下していて、熊沢としても一般論的な論調になっていた。
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労働の現場から現在の「格差社会」を分析。世界的な競争の中で労働とはどうあるべきか。それを事実に基づいてきちんと考えていくことは必要。しかし、あるべき論だけでは問題は解決しない。あるべき方向性は分かった。あとは、そのあるべき社会をどうやって実現していくかだ。
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いま働く人びとが抱えざるをえない「しんどさ」とはどのようなものなのか。労使関係の視点から「労働そのもの」を見つめた新しい格差社会論であると同時に、労働研究の到達点から語られる「日本の労働」入門。
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今の「格差社会」を正確に学ぶには非常に優れた本だと思いました。
どのように格差社会が生まれ、何が問題になっているかが分かります。
結論として、法整備や会社システムではなく、日本の「労働組合」に期待してます。
また、アメリカやヨーロッパの社会保障についても書いてあるので広く勉強できます。※アメリカは年金システムのような社会保障は一切ないらしいっすね。
ビックリしました。
是非一読を。