がん患者、お金との闘い

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000224994

作品紹介・あらすじ

進化しつづけるがん治療の傍らで、治療費の負担に悩む患者は少なくない。離婚して生活保護を受けるか、治療を断念するか。働き盛りでがんを患い、経済的困難に直面した金子明美さんも、辛い選択に揺れ動いた一人だった。やがて明美さんは、患者会を結成し、病身を押して自治体や国へ訴えていく-。がん患者の肉声から、患者が直面する「お金」の問題に迫り、二人に一人ががんになる時代、誰が医療費を負担すべきかを考える。好評を博したテレビ番組、「命の値段 がん患者、闘いの家計簿」に新規取材を加えて書籍化。

感想・レビュー・書評

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  • 本当に読んで良かった。家族が、自分が、自分のために、家族のために経済的な負担を理由に治療をやめたいと言われたら、言ったら、どう返されるのだろう、どう返せばいいのだろう。
    命の値段。確かにその薬代が払えないのは、その人の命の値段である。

  • 癌は2人に1人罹る時代。
    ある患者の高額な治療費を前に「生きてていいのかな。」と言う言葉に胸が詰まる。
    癌にかかるお金との闘いを、ある患者とその家族を中心に、テレビ取材班により綴られている。

  • 「がんは万が一ではなく、二分の一」とCMでよく目にするものの、心のどこかで「でも自分は大丈夫なはず…」と勝手に罹患しない理由をいくつも並べたてて他人事にしようとしてしまいます。
    身内で高齢者以外でがんにかかった人はいない、健康診断は毎年及第点だし…

    でも、金子さんはじめこの本に出てこられる方も「まさか自分が」。
    がん患者をとりまく現状を変えたい、変えねばと強く願う訴えの言葉には、「なぜ自分が?」という無念さも含めて様々な思いが込められているように感じられ涙が溢れました。
    タイトルには「お金との闘い」とありますが、家族との気持ちの共有や余命宣告との向き合い方など他の面での闘いも強いられるのだと感じました。

    完治するかわからない、再発のおそれもある、治療のゴールが見えづらい…そんな状況で家計を逼迫するほどの治療費を充てていいのか。
    極端に言えば、生きていていいのか。
    そこまで追いつめられるものだとは恥ずかしながら想像できていませんでした。
    「命に値段はつけられない」と言えど、突き詰めれば使える医療費に差が生じてしまうということはそこで値段がつけられているとも言える。
    これまでこんなこと考えることがなかったから、もどかしさと悔しさが押し寄せてきました。

    事務的な話では、通院治療にかかるがん保険でのカバー力の弱さ(入院後の一年間のみカバーとか、そもそも入院のみ保障のものも多い)、高額医療費の精算タイムラグ、障害年金受給についてなど知っておくべきことも多く紹介されていました。
    この本が出てから10年近くたつので制度等の現況についてはあらためて調べる必要がありますが、自分の加入しているがん保険に入院保障しかないことは判明。

  • 書店員オススメ本から。健康なとき、病気のことばかり考えている人はあまりいないだろうし、普段から医療費について思い巡らす機会なんてそうそうあるもんじゃない。でも本書でも触れられているように、殆どの人は癌になる訳で、もっと周知されるべき保障なども多い。これが上梓されたのが10年前だけど、このときと今で、殆ど変わってないんじゃないか。皆がもっと声を上げるべき内容ですね。

  • 自分の医療保険を考える上で、参考になるかなと読んだ本。がん、病気というのは本当に辛もいものだ。30代の私と変わらない年代の人がこんなにつらい目にあうことがあるのだ。筆者は看護士で共働きだったのに、がんになってしまったことで、こんなに経済的にも追い込まれてしまう。健康が一番の財産であるから大切にしよう。
    ・がんで長期療養が必要になったときは、障害者の申請ができるというのは発見であった。
    ・筆者は五年で500万円を使いきって、その後も経済的に困ったと言っている。300万円くらいあれば何とかなると読んだことがあるが、全然足りないな。500-800万円くらいは、ストレスなくだせるような保険か貯蓄が必要ということか
    ・筆者はがんになってから、患者のために主張するという生き方を貫いた強い人。私にもなにかできるのかな。

  • いまや、2人に1人がガンにかかる可能性があると言われている。
    そして、最近は、ほとんどの場合、抗がん剤治療をする。
    それなのに、治療にどれだけお金がかかっているか?を知らない場合が多い。
    この本は、2010年の本のため、書かれている高額医療助成制度は少し古いものになっている。(本の中では、外来の場合、一旦、自己負担金額を全額負担し、3ヶ月後に限度額以外が戻って来ると記載されているが、2015年の現時点では、認定証を事前に手にしていれば、外来でも、限度額までの支払いで良いはず)
    ただ、この本で、私も初めて知った制度は、ガンが障害年金支給対象になるということ。
    これは、知らなかった。

    抗がん剤治療は、日進月歩で進んでおり、以前よりも「ガン=死」ではなくなったと思う。
    しかし、その過程には、想像もしていないお金がかかる。
    このため、家庭の経済状況の格差は、治療の格差、生存率の格差にもつながる。
    だからこそ、公的制度や、がん保険などの対応が必要だと思う。
    ガンは他人事。と思わず、事前にこのことを知っていれば、当事者になった時に、安心して治療ができると思った。
    この本は、少し古い情報もあるが、知るきっかけになる本であると思う。

  • 重要な指摘は、障害年金が癌患者に適応になるということ。抗癌剤に関しては、palliative なのか、根治的なのか、(線引きは難しいけれども)意識して区別すべき、ということ。
    登場する患者さんが30代、40代と若いことも注目すべきこと。

  • いろんな治療法が発明されたり、治療しない方が良いと言われたりと、がんに対するアプローチは、これからも変わっていくでしょう。ただ変わらないことは、がんと共に生きるために必要なお金は、膨大であるということは、変わらないと思う。

  • これは多くの人に知ってほしい本のひとつ。
    2年前の本だから高額療養費制度が通院に使えるようになるなど、変化がある。
    けれどがんになることで経済的な負荷がどれほどかかるのかを知るには十分すぎるくらいだ。
    この本を読むまで、抗がん剤治療で月10万円以上かかるなんて知らなかった。
    高額療養費制度や障害年金を受けられるけれども手続きにあまりにも時間がかかるなんて現状知らなかった。
    がんによって、経済的負担が大きくて、生活保護を受けるために離婚を選ばざるを得なかったり、莫大な治療費を払えずに死を選ぶ人が少なからずいることを知った。
    がんはもう2人に1人はなる時代。
    私たちはもっと危機意識と当事者意識を持つ必要がある。

  • がんはお金がかかると聞いていたけど、毎月薬代で5万も10万もかかるなんて知らなかった。
    より高度な医療を受けようとするとすればするほど負担は増える現実。
    自分があとどのくらい生きるためにお金をかけるのかを決めなければならないなんて、なんて厳しい選択なんだろう。
    高額療養費制度は素晴らしい制度だと思っていた。
    しかしその制度にも問題点があり、支援からこぼれ落ちてしまう人たちがいる現実を知った。

    私自身、身内をガンで亡くした。がんとお金の問題は決して他人事ではなく、考えていかなければならないと身に沁みて思った。
    必死に声を上げてくださったがん患者の方々が安らかに眠られますよう。
    心の中で感謝しながら、この問題について関心を持ち続ける。
    私の中で忘れられない一冊となった。

  • ガンになっても、貯金があったら大丈夫だと思ってた。
    でも、保険でフォローできない、定期的にうける抗がん剤がダメージきついんだなってわかった。


    がんになったら、障害年金月6万円が受給できるようになる。

  • 癌ってこんなにお金がかかるとは思わなかった。
    全国民に読んで欲しいと心から思います。国会議員や、官僚の方が早く動いて欲しいです。頑張ってくれた人のためにも、将来安心できる国にするためにも。

  • 知らなかった現実に、出会う。

  • 終わらない闘い。

  • 癌を宣告されるだけでもショックだと思いますが、それを直すために闘病を決意することは、健康保険も効かないこともあり、ものすごく経済的に辛い思いをされているようです。

    それも入院費用ではなく、通院時にかかる最新の抗がん剤が高価のようです。癌にかかる人が今後益々増えていくことが予想される中で、この本に書かれている内容はけして他人事で済まされる問題ではないと思いました。

    癌と闘いながらも、政府に改善をもとめていく姿が書かれていますが、志半ばで同士が亡くなっていく虚しさは、誰かが伝えていくべきものであると強く思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・高額療養費制度は、制度そのものの周知が徹底されていない、低所得者は負担限度額は3.5万円、上位所得者でも15+(総医療費-50)x1%である(p11)

    ・2007年からは入院の場合には、支払い時に限度額の差額が返還されるように制度変更されたが、通院の場合は3ヶ月後になる、1ヶ月100万円の医療費がかかった場合、窓口で30万円を3ヶ月間払わないと、差額が返ってこない(p13)

    ・給与所得者の給与は年々減少している、国税庁調査では、2008年民間企業の平均年間給与は、429.6万円で、前年比7.6万円減少、1990年並(p28)

    ・2009年調査によると、がん保険の加入率は59.5%だが、配偶者の加入率は36%程度(p49)

    ・障害年金(病気で倒れて長期療養の場合に支払われるの申請は複雑、社労士に頼めば手間が省けるが手数料がかかる、自分でやるには病院や社会保険事務所に何回も行く必要がある(p58)

    ・高額長期疾病として認定されているのは現在では3つのみ、人工透析を伴なう慢性腎不全、血友病、抗ウィルス剤を投与しているエイズである(p69)

    ・国は2007年になって初めて、がん対策に本格的に取り組みを始めた(p88)

    ・がん対策予算は、都道府県で格差があり、最大200倍の差がある、1位の島根(12億円、100万人当り)に対して、最下位の埼玉は数百万円程度(p94)

    ・日本もかつては健康保険の本人自己負担は初診料の200円のみという時代があった、それが1984年に1割、97年に2割、2003年に3割となった(p101)

  • 大学で業界研究セミナーが開かれていた時の紹介パンフレットに、保険業界の推薦図書として挙げられていたので読んでみた。自分は金融系の業界に興味があり、保険というよりもどちらかというと証券のほうに興味があったのだが、この本は保険業界でのやりがいというものを教えてくれた。いかに保険というものが大事か、そしてそのあるなしで人の人生を大きく左右してしまう、ということを教えてくれた。

    ..というのが自分にとっての感想。ただあまりにも局部的なので、一般の人が読んでこの印象を受けることはないと思う。この本はがんを患った人たちが経済的に厳しい状況におかれてしまうということを取材したものを一冊の本にまとめたものだ(もとはTV番組だそうだ)。日本人の死亡原因No.1なのにもかかわらず対策が進んでいない状況。この分野に関しては全くの素人なので。目からうろこばかりだった。

  • がん治療(特に通院で行う抗がん剤治療)の高額さに愕然とする。がん保険じゃ、足りないじゃないか。高額医療費や貸付制度について説明している本は多いが、がん患者対象で「障害年金が受けられる場合がある」と紹介する本は稀少なのではないだろうか。体験者と取材班の「伝えなければ」という並々ならぬ熱意を感じる。そして、病気の時に支払いに困ったら病院のソーシャルワーカーさんに相談してみよう、と思う。

  • 専門的な言葉が少なく30分程度で読むことができた。がん治療費負担を軽減しようと行政にはたらきかけるが思うようにならない。がん保険に加入していたものの、通院治療費をカバーしておらず、給付を受けられなかった方の話が痛々しい。そもそも主契約に通院が組み込まれているがん保険は限られているそう。がん通院治療の将来にわたるリスクを読みきれないのが理由だ。一方、公的保障として障害年金が受給できる可能性もあるが、一刻も早く受けたい人にとって、親切な制度とは言いがたい。厚生労働省の推計では、生涯でがんにかかる人は、2人に1人にもなるというから、行政ができることには限りがあるのではないだろうか。結局、お金がものをいうということになろうか。

  • ガンに対する認識が変わる本だ。
    余命が少ない人程お金がかかる世の中はどうなんだろう?
    個人で出来る事は、がん保険に加入し、沢山の一時金を用意する事ぐらいなのが悲しく思える。

    2010.06.20 完読

  • 是非とも多くの方に読んでもらいたい本です。今や「国民病」とも言えるガン。実際のがん患者さんの生活を追いながら、その闘病に伴う経済的な負担に主眼を置いて、問題点を指摘しています。不備だらけ。もちろん、簡単なことではないのかもしれないけれど、何よりも国民が知っておくことがとても大事だと思います。すごく心に響くと共に、とても勉強になる本です。がん患者でも「障害年金」が給付されることがあります。これは是非覚えておきたい。

  • 命をかけた人が残してくれた参考書と警告。
    ありがたく、いとおしく、人生の様々な面で使わせて
    頂きます。ご冥福を祈ります

  • 2010.02.07 日本経済新聞に掲載されました。
    2010.03.14 朝日新聞で紹介されました。

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