近代天皇制と古都

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著者 : 高木博志
  • 岩波書店 (2006年7月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000225502

作品紹介

日本を国民国家として創出するためには、共通の「記憶」をもった「国民」の創造が不可欠である。本書が焦点を当てる京都と奈良は、近代天皇制が自らの原郷・聖所(古都)として日本人の集合的記憶に刻みつけようとした特権的な空間であった。この二つの都市が「古都」として表象されていく過程を、江戸期から克明にたどる。

近代天皇制と古都の感想・レビュー・書評

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  • (「BOOK」データベースより)
    日本を国民国家として創出するためには、共通の「記憶」をもった「国民」の創造が不可欠である。本書が焦点を当てる京都と奈良は、近代天皇制が自らの原郷・聖所(古都)として日本人の集合的記憶に刻みつけようとした特権的な空間であった。この二つの都市が「古都」として表象されていく過程を、江戸期から克明にたどる。

  • とくに面白いと思ったのが、第4章の美術史のくだり。僕も当然これまで学校で習ってきたとおり、「国風文化は遣唐使が廃止されて、中国から文化の流入がストップした結果、自前の文化が発展した」と思っていた。けれど実は、1880年代からはじまる「旧慣」保存・文化的「伝統」の復権が、比類なき歴史をもつ日本を諸外国へアピールするための政策であって、日本の独自性をアピールするための創り出されたイメージだった。天平文化や、安土桃山文化にも同様の視角から、その作為性に迫る。しかしこんなこと言って、美術史側から反論が来ないのだろうか、というほどだ。

    安土桃山文化で取り上げられる絵画が「雄壮」「豪放」なんて評価、高校のときに一生懸命暗記していたのだが、「そんな評価誰が決めたんだよ」「主観じゃねーか」とうっすら思っていたのもまた事実。そんな疑問が、10数年の時を超えて解決されたような気がする。

    近世から近代における「内裏空間」と地域社会の関係の転換や、天皇イメージの転換も、興味深かった。

    疑問があるとすれば、近代に入って陵墓や天皇がまとった文化的イメージの「開放性」と「秘匿性」の指摘の部分だ。これが2つあった、ということはわかるのだけれど、それぞれの性質どうしがどのような関係だったのか?ということがちょっとわからなかった。2つある、ということはわかるが、それの2つがどのように絡み合いながら、近代の人びとの陵墓なり天皇イメージを形作り、そして国民国家としての一体性を強めていったのだろうか。

    近代に創造された神話的古代の作為性を明らかにして、なぜそういう行為が必要だったかという問いには、国際的契機を主に挙げて答えていると思う。でも、なぜそれが達成できたのかという点については、果して十全な答えが用意されているだろうか?天皇イメージや桜イメージのドラスティックといっていい転換が成功しえた理由は、国民国家の作為性を暴くだけでは、答え切れないような気もする。

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